NOT TOO LATE #7: VIDEOS
文:Jumpei Sakairi
VIDEOS
Title designed by Shingo Yamada
スケートビデオコレクターの宇佐美氏による、自身のコレクションの集大成といえる作品。20年以上にわたって集め続けた1000本を優に超えるコレクションの中から157本を選び抜いた。そして、その全てのビデオの写真と共に宇佐美氏による解説が添えられている。テキストには英訳がついており、世界中のビデオコレクターにとっても垂涎の一冊となっている。
フォトグラファーである呉屋氏の立ち上げた出版レーベル「.OWT. Independent Publishing」から2022年に発売された。作品中の写真は呉屋氏が担当している。
本作品は知識も相当に細かく記されていたり、時系列順になっていたりとスケートビデオの教科書ともいえるような一冊である。世界でもスケートビデオについてこれほどの情報量が載っている本はないだろう。リアルタイムで追ってきたスケーターはもちろんのこと、これから深掘りしていきたいビギナーにとっても貴重な作品だ。また、ビデオにはカルチャーや時代背景などあらゆる要素が詰まっており、それを宇佐美氏が解説しているためスケーターだけでなく様々な人が楽しめる内容になっている。
しかし、何よりも一人の人生、生き方そのものが詰まっているというところに作品の魅力を感じる。
これでもかというほど大きく掲載されている各ページのビデオや、それにまつわる宇佐美氏の私物の写真からもそうした熱量が伝わってくる。
宇佐美氏は給料をすべてビデオに注ぎ込み、時には借金までして海外から購入したこともあったという。何がそこまで彼を突き動かすのかということが、作品を読み進めていく中で非常に気になった。その答えはあとがきにシンプルにこう記されていた。
「好きだからとしか言いようがない。」
この答えには心底しびれた。
世の中の多くの人は日常生活を送っていくうえで、これは役に立つのか?必要なのか?ということが様々な事の判断基準になりがちだと思う。社会全体としても何もかもを効率化しようという動きばかりだ(悪いことだけではないけれど)。
興味が無い人からすればこのvideosにしても、「なにこれ?」くらいにしか思わないのかもしれない。以前出版社に持ち込んで門前払いされたこともあるらしい。
しかし一般的に無意味かもしれない何かが、誰かにとっては人生をかけて愛していくものなのだ。効率よく、楽に生活することだけが人生の目的ではないはず。人にとって意味があろうがなかろうが、自分にとってはこれが大事だと胸を張って言い切る勇気をこの本はくれる。
そしてその思いを貫けば、私にとってそうであったように誰かの人生に色を与えることもあるのだ。
スケートビデオマニアにとって貴重な一冊であることはもちろん、私にとっては人生のバイブルともいえるような一冊だ。
なかなか手に入らないかもしれないが、チャンスがあればぜひ手に取ってみてほしい。
https://www.flotsambooks.com/SHOP/VIDEOS.html
執筆者
Jumpei Sakairi
早稲田大学法学部卒
フリーライター
写真、ファッションについて。
編集の仕事がしたいです。
Contact: nomosjp@gmail.com
サポートされたい。本当に。切実に。世の中には二種類の人間しかいません。サポートする人間とサポートされる人間とサポートしない人間とサポートされない人間。