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特別号 新しい当たり前がある私の職場

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フローレンスは、親子を取り巻く社会課題の解決を目指しているNPOで、現在、約数百名が所属しています。多様なメンバーの「働く」を支えているのが、法務・総務業務を主に担っている通称「オペレーションズ」です。
メンバーは、普段は現場で働く保育スタッフや、特別支援学校を卒業して入社したスタッフなど、色とりどり。

 バックオフィスの仕事現場やその思いを、個性的なメンバーがリレー形式で紡ぐ言葉から感じ取っていただければうれしいです。

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私は新卒事務局スタッフとしてこの4月にフローレンスに入社しました。

フローレンスの入社式当日に初めて知ったことがありました。

それは、同期にオペレーションズ(障害者雇用)の方がいたことです。

入社式で用意された席には2席空きがあり、私は中途採用の方と一緒に式を行うために席を用意しているのだろう、と勝手に思っていました。
しかし、後から部屋に入ってきて席についた2人は、どう見ても私より年齢が若く、どこかあどけなさが残る女の子2人でした。

そこで初めて、フローレンスでは障害者雇用という枠組みでの採用を行っていることを知ったのです。

ちなみに、2021年4月に新卒として入社したのは、保育園に勤務する保育スタッフが4人、事務局スタッフが私含めて3人、そしてオペレーションズが2人の計9人となります。

オペレーションズ以外のスタッフは全員大卒で入社し、オペレーションズの彼女たちは3月に高校を卒業したばかりでした。

「これからどう関わっていくのだろう、どんな働き方をするのだろう」   

私の今までの人生には障害者と一緒に何かをする機会がほとんどありませんでした。そのため、一緒に働くということへの想像が出来ないまま次の日から事務局スタッフとオペレーションズの5人で一緒に研修を受ける日々が始まりました。

大卒で入社した私たちと高卒の彼女たち。私の中である疑問が湧き上がりました。                               

「彼女たちにとって研修内容が難しすぎるのでは?」と。

入社してすぐの研修内容は、社会人の基礎的なことからフローレンスの各事業説明、情報セキュリティの考え方やPCの扱い方など多岐にわたり、特に最初の1ヶ月は実にさまざまなことを学びました。私でも全てを理解するということは難しかったため、高校を卒業したばかりの彼女たちにとっては理解出来ない内容も多かったのではないかと思ったのです。

また、5人で研修を受ける中で、時には分担して作業を行うということがありました。研修が始まってすぐの時は、2人の性格や強み、弱み、それぞれが持っている力を知らなかったので、同期という対等な立場ではあるものの、2人にとって研修や分担した作業が負担になっているのではないだろうか、2人に失礼な言葉を投げかけてはいないだろうかという不安がありました。

彼女たちにとって濃密な研修の日々は、精神的にも体力的にも負担ではないか、大丈夫なのか、と常に心配している自分がいましたが、2人はまっすぐで素直で与えられた事柄に対して真摯に向き合える本当に強い子たちでした。

彼女たちはそれぞれ

「高校を卒業して社会に出るということを決め、              

       自分の意志でフローレンスを選び今こうして働いている。」

高校卒業時点の私ではとうてい考えられないような決断を行っていたのです。

研修を通して私の中に少しずつ変化がありました。
それは、彼女たち1人ひとりの性格や持ち味を見るようになっていったということです。

例えば、
Aちゃんは自分の口から物事を伝えることは苦手だけれども、与えられた事柄や課題に対して集中して向き合い、自分なりの答えを出すことができる。

Bちゃんは視野が広くて周りへの配慮がすごく出来るし、いろいろな葛藤を抱えながらも自分の思いを伝えようと必死に頑張っている。

出会った当初は障害者という狭い概念として捉えられていなかった2人のことが、少しずつ少しずつ見えるようになりどんどん枠組みがとれていきました。


こうして2人の良さを知れたのはフローレンスの働き方が関係していると私は思っています。

実際に働いてみて感じるのは「障害者だから。」と思うことが本当に少ないんです。

出来ないことに目を向けるのではなく、出来ることに目を向け、それぞれの強みを伸ばす。また、障害者だからといって決めつけて全員同じ枠にはめるのではなく、持っている力や強み、弱みを判断した上でそれぞれが違った業務を行う。

1人ひとりに成長する機会が与えられ、可能性に目が向けられているのは、フローレンスのオペレーションズに対する受け入れ体制が整っているからこそ実現しているのだと強く感じています。

「障害の有無に関係なく『一緒に』働く環境」

                                  何不自由ない人々の中で育ってきた私の人生には、障害者と一緒に何かをするという機会はほとんどありませんでした。

私自身、幼い頃から団体競技をしていたということもあり、「皆が同じことをやって当たり前」、「出来ないというのはその子自身の頑張りが足りないから」という考えが強くありました。
小さな違いに腹を立て、時には自分の考えを相手に押しつける、さらには相手から嫌われる事を極度に嫌う、自分の事しか考えられない非常に視野の狭い考えの持ち主でした。

しかし、フローレンスには以前私の中にあった「正しさの決めつけ」というナイフのように尖った当たり前はどこにもありませんでした。

スタッフ1人ひとりが好きな服を着て、好きな席に座って仕事を行い、仕事時間も生活スタイルによって変えられる。在宅勤務の人もいればオフィスに出社する人もいる。
さらには、フローレンスのオフィスにいると、どこでオペレーションズが働いているのか一瞬では見分けられないくらい障害というものがオフィスの中に溶け込んでいる。

これまでの私の人生にはない当たり前がここにはあったのです。
「皆が同じことをやって当たり前」ではなく、「1人ひとりが違っていい」
「出来ないというのはその子自身の頑張りが足りないから」ではなく、「出来ないならば手を取り合ってみんなで進めていく、出来ることから伸ばせばいい」

今までの考えとは180度も異なる新しい当たり前は、私の肩の荷をおろしてくれました。特に、1人ひとりが違っていいという考えは、ありのままの私を受け入れてくれているような気がして本物の温かさに触れた瞬間でした。この温かさに触れたからこそ、以前のように相手の出来ない部分に目を向けるのではなく、相手の良さや強みに目を向けるようになれたのです。


ここまで1人ひとりに目を向け、良さを引き出そうと情熱をかける組織は他にないのではないかと思えるほど、私はフローレンスの働き方に誇りを持っています。

こうしてフローレンスに入社して新しい当たり前に出会えました。

新しい当たり前に出会えた今、思うことがあります。

それは、当たり前をつくるために労苦を惜しまず向き合ってくれた人がいて、そして今もその当たり前をつくり続けている人がいる。だからこそ新しい当たり前が実現しているのです。この考えは忘れてはならないことです。

また、もし私が彼女たちに出会っていなければ、自分の当たり前を疑う機会などなく、反対に彼女らの当たり前を知る機会はなかったと。

彼女たちとの出会いを通して知ることができたこと、学べたことは今後働く上で非常に大切なことだと思っています。

それは、障害の有無に関わらず、1人ひとりがもつ考えや価値観はさまざまであり、当然、多様であるが故に、すれ違いはあるということ。それに気づくことが出来たからです。
すれ違った時、その原因を突き詰めなかった以前の私は小さな違いに腹を立て、相手に原因を突きつけていました。

「私の考えは正しいのだから、間違っているはずはないと。」

しかし、このような考えを持っているといつまでたっても信頼関係を築くこともできず、いつの間にか1人で突っ走ることが多かったのです。

1人でも頑張れるというのは人によっては良いことであると捉えるかもしれませんが、フローレンスはチームで成り立ち、常にチームとして動いています。よって、1人で走り続けるというのは組織を崩壊しかねない危険なものなのです。

だからこそ「当たり前を疑う」ということは非常に大切なことだと思います。

この当たり前を疑うにあたって重要な考え方があります。それは「4つの認知」です。

出典 熊平美香『リフレクション(REFLECTION) 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』ディスカヴァー・トゥエンティワン 2021


人が意見を述べる時には、その人自身の過去の経験価値観そしてそこに紐づく感情が関係しています。ただ意見以外の経験、価値観、感情は実際には見えないことの方が多く、ものの見方の本質は隠れていることが多いというものです。
つまり、表面的には見えていない経験、価値観、感情にものの見方の本質が隠れていることが多いにも関わらず、実際に見えているのは意見のみであるためにそこだけで判断してしまうため、すれ違いが起こるのです。

「氷山の一角」という言葉があるように、大切なことは目に見えていない事の方が多いのです。

氷山の一角

                              

よって大切なことは、「なぜ自分はそう思うのか」「なぜ相手はそう思うのか」を「意見、経験、価値観、感情」の4つの視点から考えることです。
そうすると不思議と自分と相手が違うということに納得でき、お互いが大切にしていることに気づけるのです。

この「4つの認知」という考え方はフローレンスの研修で学びましたが、人と関わる上での重要な視点を与えてくれていると思っています。


さらに、フローレンスにはWAYー私たちの行動指針ーというものがあります。

WAY:バーチャル背景(全)

この行動指針はある(存在する)だけではなく、オフィス内の至るところに掲げてあり、実際に私たちが日々大切にしていることです。

この行動指針があるからこそ感謝する心を思い出したり、自分の考えに背中を押してくれる。さらには悩んだときや迷った時に原点回帰することが出来る。とても大切なことです。


フローレンスに入社して、私は人に限らず素敵な出会いがありました。素敵な考えに、素敵な行動指針。ここに掲げた以外にも素敵な出会いはいっぱいあります。

これらの素敵な出会いを胸に、これから先出会うすべての人と関わっていきたいと思います。


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