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面接前に「何者」読んでみた。

みなさん、こんばんわ。
就活生は、ESに面接にGDに、諸々お疲れ様です。
先の見えない日々が続いておりますが、やるしかないですね。

先日BOOKOFFに訪れた際、朝井リョウさんの「何者」が目に付きました。直木賞、豪華キャストでの映画化もされていた、"就活"についての物語。
ただでさえメンタルが乱れがちなこの時期に、「何者」なんて読むのはバカだろな~とか思いつつ、気がつくとその本はカゴの中にありました。おーまいがー。

ある日、面接が対面で行われるため、朝早くから電車にのって片道2時間もの長い道のりをせっせと会場に向かいます。
電車では本を読むと決めているのですが、その日リュックに入っていた本が「何者」で超不吉~とか思いながら迷いなく読み始めるのがこのボクです!


「何者」(朝井リョウ)

大学生5人が、ふとしたきっかけから"仲間"として集まり共に就職活動に励むようになる。人間分析大好き"拓人"、コミュ強バンドマン"光太郎"、拓人が密かに思いを寄せる"瑞月"、意識高い系女子"理香"、サブカル男子"隆良"。内定者が出た時、彼らは何を思い、どう振る舞うのかー。


映画で見た時も結構苦しかったが、小説の破壊力もかなり高いです。
映画にない心の動きの行間を埋めるかのような、丁寧な作品。

主に"拓人"視線で書かれるので彼に感情移入してしまうことが多いです。
こんな風にnoteに記している時点で分析大好き人間だから、自分は”拓人”タイプだ!と安直に分類することも出来るが、そうなってくるとなんだか恥ずかしくて、情けなくて、ぼくはnoteを書くことが出来なくなるのであえてそう考えません!

多分、普段の生活で誰に対しても「分かる~!」と「は?」の部分を感じると思うんです。完全にどちらかに振り切れてしまうと、それはただの"信仰者"と"ヤンキー"になってしまいます。

「何者」にも同じ事が言えます。5人を五角形のそれぞれの頂点に当てはめて、それに対して自分の共感度(自分に近い)ランキングに応じたパラメータが表示されるような、そんな読み方が出来ると面白いですね。自分の嫌なところと照らし合わせるとやりやすいです。5段階評価でぼくも自分をパラメータ化してみました(共感できる順に5,4,3,2,1と付けています)。

①瑞月
ギスギスしそうな雰囲気になっても、「すごいね」とか「そういう考え方もあるんだ」とか、ふんわりやんわり受け止めてくれるおっとり優しい感じの女性。ぼくにはない一面です。見習いたい!
この子は"拓人"の恋愛フィルターのためか、嫌なところがあまり見えてきませんでした。

そんな彼女が作中で想いを一度にぶちまけたセリフを一部抜粋。

「十点でも二十点でもいいから、自分の中から出しなよ。自分の中から出さないと点数さえつかないんだから。これから目指すことをきれいな言葉でアピールするんじゃなくて、これまでやってきたことをみんなに見てもらいなよ。じぶんとは違う場所を見てる誰かの目線の先に、自分の中のものを置かなきゃ。何度も言うよ。そうでもしないともう、見てもらえないんだよ、私たちは。百点になるまで何かを煮詰めてそれを表現したって、あなたのことをあなたと同じように見ている人はもういないんだって」

返す言葉もありません...。
どうしても見栄やプライドにまみれた言葉を使いたくなります、だって企業に嫌われたくないから。素の自分を出して落とされたら否定された気分になるから。
嘘でもなんでも受かるならばええだろ、という発想の元で就活している方々、それで成功している方々には理解しがたいと思うのですが。
強みより弱みに人間性の本質が表れると、ぼくはそう思います。
だから飲み会で聞く友だちのグダグダした話がぼくは好きです。
弱みを見せられるのが強み、になるかもしれません。

②光太郎

光太郎はいつもああやって真ん中にいるけれど、端っこに座る俺の隣にいたとしても、違和感がない。カメレオンみたいなやつだ。

俗に言ってしまえば"陽キャ"で、でも"陰キャ"からも好かれる良いヤツ。
憎めないやつです。ぼくもバランス感覚抜群の人間を目指していきたいです。陽キャにも陰キャにもなりたくない部分に、共感できました。
ただ、瑞月みたいに想いを直接ぶちまけることには不慣れな印象でした。
"拓人"くんのルームメイトで、あまり悪い印象は見受けられませんでした。

③隆良
サブカル男子。自分は才能がないと分かった上でそれを認めたくないあまりに、プロデューサーとかキュレーターとか、芸術全体を薄く浅く取り仕切る立ち位置に潜りたがる。一般人から見るとアーティストと混同されがちで、要はなりたかった自分になれるわけで。だけども同業者(例えば拓人とか光太郎は演劇とかバンドとか、芸術で自分が表現者として活動していた)から見ると、"芸術家"ぶっている一般人なのだ。だから鼻につく。

あー、自分で書いていて、自分が痛みますね(笑)。

天才になりたかった、全ての人へー。(左ききのエレン)
これでぼくは色々と悟りました。勘違いイタいヤツになりたくなる前に、みんな読んで、読んで!

④拓人

想像。想像力が足りない人ほど、他人に想像力を求める。他の人間とは違う自分を、誰かに想像してほしくてたまらないのだ。

人のことを見る目がある自分がすごいと、究極のナルシスト。
自分では観察力が鋭いと思っていたが、先輩には「想像力があるやつだと思っていたよ」と痛いブーメランがささりましたね。
まさに「何者」で「何様」という、米津さんの主題歌「NANIMONO」が流れてきそうなシーンでした。

⑤理香
留学/インターン/ボランティア/貧しい国の子どもを救う/○○会長/外資・商社系志望/OB訪問たくさんしています!名刺集めが趣味(最近作りました!)

○○ ブラック企業/ダサい/かっこ悪い/意識高い系/見栄/プライド高い/上辺だけの女/ES絶対に見られたくない/webテストが出来ないのに面接練習ばかりしている女/GDで人の意見遮ってでも喋ろうとする女/肩書きないと生きていけない系女子

いくら喋っても人間性が見えてこない系統の女、いるよね~。
親友ではないけど、友達ならば普通に面白いタイプ。人当たりも良いんだけど、友達に彼女として紹介したいかって言われたらしたくないタイプ。
でも最後の場面で一気に共感度が上がりました

「自分が笑われていることだってわかっているのに、名刺作ったりしてるのは何でだと思う?」
「それ以外に、私に残された道なんてないからだよ」
「ダサくてカッコ悪い自分を理想の自分に近づけることしか、もう私にできることはないんだよ」
「ダサくてカッコ悪い今の自分の姿で、これでもかってくらいに悪あがきするしかないんだよ、もう」

ぼくはtwitterのアカウントに"/"はないし、ボランティアなんて自己満足だと思っているし、キラキラした部分しか見せない人は苦手だけど、そこすらも理解した上でその立ち振る舞いを続けているのならば、何も言えないなと思いました。
色々やったけど、自分は探すものでも変えるものでもないと、気付いた理香は立派です。泥臭くて、一番人間らしいです。
ぼくもどうしても変えられない、例えば面接でニコニコすればいいとは分かってはいるけれどいつまでも仏頂面だし、協調性ないって言われるし、でもそれは軸であり、長所とも取れるので、(正直で、自立心ある)、うまく付き合っていこうな、と思いました。
人に心の内を最も大きく開示しているのは実は彼女かもしれないな。


結局、一番嫌いなタイプが一番奥底で共鳴している、つまりは苦手なタイプは実は自己嫌悪からくると、自分を見つめ直すチャンスかもしれません。
憧れであり嫉妬の対象になるのかもしれません。
ぼくの場合はそれが理香でした。彼女に向き合いながら、好き嫌いを繰り返しながら、理想に近づきたいですね。

嫌なところも全部受け止めて、その日受けた面接では、打算も嘘もない、曇りのない想いを伝えることができました。



いつからか俺たちは、短い言葉で自分を表現しなければならなくなった。

いつか終わりが訪れます。

全て終わったら、長ったらしく、結論ファーストでない、起承転結もない、まとまらない話でもして朝まで呑めばいいでしょう。

良き新生活を。



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