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GHz music store / Hzの存在

デザイナー/造形家であるメチクロ氏が運営するMHzが2009年に立ち上げた音楽通販サイトGHz music storeとフラッグショップHzについて。

自分とメチクロ氏との出会いは2005年2月まで遡る。MURDER CHANNELのイベントに出演してくれたL?K?O氏にお誘いを受け、彼のスタジオに遊びに行ったときにメチクロ氏と始めてお会いした。その際は挨拶程度であったが、L?K?O氏を通じてメチクロ氏とMHzと徐々に関わるようになり、MHzの音楽部門GHz music storeを立ち上げる際にお声を掛けていただき、初代店長として2012年頃まで一緒に働かせて貰った。

2003年頃から2010年までL?K?O氏とメチクロ氏は高円寺でスタジオをシェアされていた。彼等は共同でMIX CDをリリースしたり、イベントをオーガナイズしたりして他とは違ったアプローチで音楽に挑んでいた。残されたアーカイブを見返すと非常に面白い他流試合を繰り返しており、東京のオルタナティブな地下芸術シーンに彼等は多大な影響を及ぼしているのが分かる。L?K?O氏とメチクロ氏のコラボレーションの集大成といえるのが、2008年にリリースされたOigoru(L?K?O x U-zhaan)のアルバム『BORSHA KAAL BREAKS』。今作はGHz music storeの立ち上げにも関係した作品であり、2000年代の日本の音楽史に残すべき最重要作であると断言できる。

また、彼等のスタジオには各界の強者達が日夜訪れるとんでもないミーティングスポットになっていて、BLACK SMOKERやROMZの面々からドイツの伝説的クラウト・ロックバンドGuru GuruのMani Neumeier氏、KIRIHITOの竹久圏氏、デザイナー/ライターの植地毅氏、ExT Recordingsの永田一直氏、漫画家の林田球氏といった本物の鬼才達を紹介して貰えた。

スタジオにはL?K?O氏の機材、メチクロ氏の造形物、そしてお互いが所有するレコード、書籍、DVDなどのコレクションが溢れており、それらにはすさまじい価値があったはずだが、結構乱雑に置かれていたのが印象的であった。それは物を雑に扱っている訳では決してなく、彼等は誰よりも物の価値を分かっていたし、作り手側への深い尊敬と愛に満ちていて、本物のコレクターや理解者というのはこういった人達なんだなと思った。単純に整理整頓が上手くないだけで本質を理解した上でそうなっていたのである。
彼等が教えてくれた音楽や映画、話してくれた面白い話は自分の人生の大事な部分を形成している。何物でもなかった20代前半の自分にとって彼等のスタジオで経験させて貰ったことは、とんでもなく貴重なものであったのだと今になって思う。

そんな流れで頻繁にスタジオに顔を出している内にメチクロ氏と話すようになり、お互いの音楽や創作における想いを共有していく流れで自然とGHz music storeが始まることになったと記憶している。

2009年12月にオープンしたGHz music storeは自分とメチクロ氏が推したい周りの友人達の音源を販売していき、翌年から海外レーベルの卸も始めて扱うタイトル数を増やしていった。

GHz music store以前、個人的に欲しい音源を購入する為に大阪のアンダーグラウンド・レーベルや海外のブレイクコア・レーベルのディストロをしていた経験があったので、そのときに培ったノウハウと繋がりを活かして、様々なレーベルの商品を入荷させていた。

主に扱っていたレーベルはAd Noiseam、Deathsucker Records、Peace Off、Wrong Music、Ant-Zen/Hymen、Planet-Mu、Subtrakt、Ohm Resistance、Earache Recordsなど。自主製作の音源も扱っていて、世界的に売れる前のIgorrrからWhourkrの『Naät』『Concrete』を直接仕入れたり、The PanaceaにはPosition Chromeのバックカタログを大量に送って貰い、Peace Offの協力によりTechdiff『The Black Dog Released』のCD版をGHz music storeでのみ販売した。他にも、DJ TUTTLEとサイケアウツGのレーベルNODEの作品、Melt-BananaのTシャツやBang FacceのTシャツ、SeclusiasisのUSBや3Dサングラス、Ivan Shopovの書籍やスペインの雑誌『Belio Magazine』などを独占的に販売するチャンスを得ていた。

GHz music storeのオリジナル商品としてサイケアウツGの架空ライブ・アルバム『Live at GHz』やMURDER CHANNELとのWネームでDead Fader、FUTON DISCO+CARREのライブ・アルバムもリリースしている。

当時(2009-2012年)はダークステップ、ブレイクコア、ダークでヘヴィーなダブステップ、エクスペリメンタル系メタル~ドゥーム、ポスト・インダストリアル、出始めたばかりだったジュークを強くプッシュしていた。その中でも、Broken Note『Terminal Static』、The Blood Of Heroes『The Blood Of Heroes』、DJ Hidden『The Later After』『The Words Below』、Silent Killer & Breaker『Amongst Villains』、Scorn『Refuse;Start Fires』、Hecq『Steeltongued』『Avenger』、Technical Itch『You Need Therapy』、The Outside Agency『Scenocide 202』『The Dogs Are Listening』、V.A.『Grind Madness at the BBC』、Surachai『Plague Diagram』、Vex'd『Cloud Seed』、Amphetamine Virus『Chicks Dig Violence』、Machine Code『Environments』『Velocity』、The Sect『Fractured State』、Current Value『Stay On This Planet』、Igorrr『Nostril』『Hallelujah』、Foxdye『M4g1c47 G71mmer1ng R41nb0w』などがよく売れていた。この辺りの音源を日本で一番多く扱っていたのがGHz music storeだったと思う。

2011年にフラッグショップとして店舗Hzを高円寺にオープンさせ、林田球氏や弐瓶勉氏のオフィシャル・グッズと並んで上記の厳つい音楽作品が並ぶという最高の場所をMHzは提供してくれた。当時は文脈や背景までを嗅ぎ取って楽しめる人は多くはなく、Hzの美しい歪さを理解してくれる人は極々一部だけであったが、その価値を信じてサポートしてくれた人達がいてくれたお陰で面白いことができた。

自分は2013年にGHz music store/Hzの運営から離れ、海外レーベルの卸のみ担当することになる。2013年にHzは場所を移転させ、2015年にはSF incとしてさらに拡大。SF incではMURDER CHANNEL TALK SHOWをやらせて貰ったり、『DOROHEDORO original soundtrack』の製作を行わせて貰ったりと相変わらずお世話になりっぱなしであった。ちなみち、SF incではBlack Smokerのイベントで鈴木勲×KILLER-BONGもライブをされるなど、ここもまたすさまじい場所になっていた。

現在こういったクリエイティビティが充満するスポットは少なくなりつつあるが、こういった場所から新しい何かが生まれる。GHz music store/Hz/SF incに関わってくれた全ての人に改めて感謝したい。

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