「世界史において今日ほど字の読める人が多い時代はない」

読書感想
『危機と人類』ジャレド・ダイアモンド著、

「国家的危機」の帰結を左右する12の要因を検討しながら、7つの歴史を事例的に挙げつつ論じる本。著者は本書で、「国家的危機」が襲ってきたとき、以下に挙げる12の要因がその帰結を左右すると定義して歴史を考察する。

<国家的危機の帰結にかかわる要因>
1、自国が危機にあるという世論の合意
2、行動を起こすことへの国家としての責任の受容
3、囲いをつくり、解決が必要な国家的問題を明確にすること
4、他の国々からの物質的支援と経済的支援
5、他の国々を問題解決の手本とすること
6、ナショナル・アイデンティティ
7、公正な自国評価
8、国家的危機を経験した歴史
9、国家的失敗への対処
10、状況に応じた国としての柔軟性
11、国家の基本的価値観
12、地政学的制約がないこと


これは項目を一読するだけではわかりにくいが、以下のように個人レベルに当てはめると、わかりやすい。

<個人的危機の帰結にかかわる要因>
1、危機に陥っていると認めること
2、行動を起こすのは自分であるという責任の受容
3、囲いをつくり、解決が必要な個人的問題を明確にすること
4、他の人々やグループからの物心両面での支援
5、他の人々を問題解決の手本とすること
6、自我の強さ
7、公正な自己評価
8、過去の危機体験
9、忍耐力
10、性格の柔軟性
11、個人の基本的価値観
12、個人的制約がないこと

そして、この要因を公正に見定めつつ選択的変化を受容した国家を事例的に検証する。

「危機のなかには、配偶者に見捨てられたり死別したりする場合や、国家が他国の脅威や内圧によって生じる危機もある。病気になった個人や、内乱が収まらない国家などだ。外圧でも内圧でも、それにうまく対応するためには、選択的変化が必要である。それは、国家も個人も同じだ。」

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今はコロナによる未曾有の「世界的危機」であろう。
だからこそ今までの常識を根底から覆すような現象も発生しているし、その変化に対する恐怖や不安などが錯綜してやみくもな行動に出たり、他者への攻撃や責任転嫁に走ったりなど、乱雑な世相が映し出されている。

この危機にあって、ジャレド・ダイアモンド博士の考察から導き出される答えは、一体何か。
それは「対立」や「分断」ではない。「協力」と「団結」である。
責任を受容し、他から学び、かつは協力して変化を「選択」してきた個人は、危機を乗り越えた。国家も同様であった。そしてその後は飛躍的な成長を遂げている。


立ち戻って、今は「世界的危機」だ。
本書における著者の考察は「個人」になぞらえた「国家」規模の視点であったが、私はこれが「世界」や「地球」や「人類」という規模にあっても同様であると信ずる。今こそ「団結」、今こそ「協力」が必要だと思うのだ。

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「世界史において今日ほど字の読める人が多い時代はない」と著者は指摘した。
家にいる時間が長い今日この頃。この本を読み、賢人と対話してみるのはいかがだろうか。人生に得るところは非常に大きいと確信する。

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