赤ちゃんの新型コロナ感染症の合併症「MIS-N」
新型コロナ感染症の第7波が全国で猛威を震っています。その中心は子供の感染がきっかけとなり、また手足口病、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルスなど様々な感染症の流行もあり全国の小児科入院病床や外来が逼迫しています。
その中で赤ちゃんの感染症例も散見されますが、軽症が多いというのが通説です。しかし海外からMIS-CならぬMIS-N(新生児多系統炎症性症候群)という病態が報告されています。先日の周産期新生児学会のシンポジウムでも話題でした。新生児医療雑誌Neonatologyからsystematic reviewが報告されました。
結果
47人の新生児を含む16件の研究が対象
患者の背景
・診断:日齢7未満34名、日齢7以上13名
・分娩経路:経膣22名、帝王切開21名、他不明
・在胎週数:早産27名、満期産18名
症状の特徴(Table5)
・心血管障害(36名、77%):心不全(14名)、不整脈(11名)、冠動脈拡張/動脈瘤(6名)、心嚢液貯留(4名)、新生児遷延性肺高血圧、心臓内血栓(2名)
・呼吸器症状(27名、55%)
・発熱(17名、36%)・・・発熱が少ないのが特徴!
検査所見
・トロポニンが全例で上昇!
・D-dimer上昇 (38/45, 84%)、CRP上昇 (65%)、フェリチン上昇(48%)のみ
・SARS-CoV-2 :
母親:スワブで陽性(37%)、血清で陽性(87%)
新生児:PCRで陽性(27%)、血清で陽性(85%)
治療と転帰
・免疫グロブリン投与(77%)、ステロイド投与(83%)
・入院期間:6日から11週間
・89%が生存、11%(5名)が死亡
・死亡の内訳:
多臓器不全 2名、左心不全によるショック 2名、壊死性腸炎 1名
今回はMIS-Nという新しい病気を紹介しました。対象者に早産例が多い事は大切な背景で症例報告ばかりで出版バイアスは除外できてませんが、MIS-Cと比べ死亡報告が多いなど侮れません。「赤ちゃんはコロナになっても軽症」という事実は覆る事はありませんが、こういう重症例も知っておく必要がありますね。
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