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経営ダッシュボードで可視化するSDGs~ゴール8「働きがいも経済成長も」と経営の両立~

株式会社Flexas Z稲葉涼太です。
中小企業の皆様のSDGsに関するお困りごとを解決するSDGsコンサルタントです。
今回は、経営ダッシュボードを用いたSDGsと経営を両立させるための可視化について考えていきます。


経営とSDGsは両立できていますか?

SDGsの取り組みを始めた後、成果が出ているか可視化できていますでしょうか?
SDGsの取り組みを始めて経営にどういう影響が出ているか可視化できていますでしょうか?

SDGsと経営は対立するトレードオフの関係ではなく、SDGsが経営に貢献できていることが大事です。

もしSDGsの取り組みを始めたことで売り上げが落ちてしまっては、企業の持続可能性が損なわれます。

SDGsの取り組みの成果が出て、経営にもよい影響が出ていることが望ましい姿と思います。

そこで今回は、経営とSDGsの両立ができているか、可視化の仕方をテーマにします。
可視化することで経営とSDGsの状況がわかります。状況がわかることで課題が認識でき、対策検討ができます。

経営ダッシュボードとは

今回の記事ではSDGsと経営ダッシュボードを題材にします。

『ダッシュボード』とは様々な情報・データから、重要な情報を統合し、抽出して表示する画面のことです。

ダッシュボードのイメージ

そして『経営ダッシュボード』とは経営層がリアルタイムで必要な経営戦略を立て、実行するための判断を提供するものです。

本記事では、経営ダッシュボードにSDGsの視点を入れて可視化の考え方をご紹介します。

モデルケース

今回のモデルケースは中堅の製造業です。
この会社ではSDGsのゴール8(働きがいも経済成長も)をテーマに1年前から残業時間の削減を目標に働き方改革の取り組みを行ってきました。

モデル企業では残業が減ることで
・ワークライフバランスの充実
・モチベーションの増加
・健康の向上
・学ぶ時間の増加
…などに繋がることを狙いとしました。

出展:国連広報センター

SDGsのゴール8は多くの企業がテーマにしていると思います。
SDGsアイコンでは「働きがいも経済成長も」と紹介されていますが、正式なゴールの表記は『すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワークを推進する』です。

経済成長もSDGsゴール8のテーマです。
過重労働をせず人間らしい健康的文化的な生活を送るのも大事ですが、仕事の成果も出すこととの両立が大事です。
そこで労働時間が減り、かつ売上も減っていないかを確認します。

【可視化①】全体の売り上げ状況の可視化

まず、経営ダッシュボードで全体の売上から見ていきます。
1年前の月次売り上げ(左側:緑)と当年同月の売り上げ(右側:青)で比較しています。

働き方改革を進めても会社全体の売上は落ちていないことがわかります。

全体の売上

次に、第三営業本部を支社別に見ていきます。
このように、詳細に深掘りすることを「ドリルダウン」と呼びます。

第三営業本部・売上額ドリルダウン

ドリルダウンをしますと、名古屋支社の売り上げが落ちていることが分かります。
名古屋支社に関して、更に分析が必要ですが後述します。

【可視化②】一人当たり売上額の可視化

会社として売り上げは上がったことは確認できました。
しかしそれだけですと、従業員数が増えたから売上が増えたのかどうかまでは見えません。
働き方改革と売り上げの関係を深掘りするために、次に従業員一人当たりの売上額を見てみます。

一人当たり売上額

一人当たりでみても売り上げが上がっていることが確認できます。
しかし、第三営業本部だけわずかに一人当たり売上額が減っているのが気になります。


第三営業本部・一人あたり売上額ドリルダウン

ドリルダウンをしますと、東京支社と名古屋支社の一人当たり売り上げが落ちていることが分かります。
特に名古屋支社が大きく落ちています。
ここでも名古屋支社に関して、更に分析が必要なことが見えますが後述します。

【可視化③】生産性の可視化

一人当たりの売上があがっても、労働集約型で売り上げが上がっているかわかりません。
そこで、生産性を確認します。
生産性とは、労働者の1時間あたりの労働により生み出される付加価値の割合です。
つまり、生産性が高い状態とは1時間当たり労働の成果が大きい状態です。


労働生産性

時間単位の売り上げを見ることで、全社的に生産性があがっていることが見えます。
働き方改革が機能し生産性が上がることで、SDGsのゴール8「働き方も経済成長も」が実現できます。

【可視化④】生産性の深掘り

生産性があがっても、あがった生産性を活かして更に残業して売上向上を目指していたら、労働時間が実際に下がっているかまではまだわかりません。そこで更に深掘りをします。


表の見方は
・左に行くほど労働時間が減っている(SDGsの観点でよい)
・上に行くほど売り上げが伸びている(経営の観点で良い)
SDGsと経営が両立した状態は左上の象限です。

成功事例の深掘り


そこで、左上の象限の成功事例を深掘りしていきます。

労働生産性・成功事例(福岡支店)

成功事例である福岡支店を見ますと、確かに各メンバーの労働時間が減り売り上げは伸びています。

この事例を個別ヒアリングしますと以下のことがわかりました。

・福岡支店では営業先のデータマネジメントを行い、部門として確度の高い営業先をターゲッティングすることで短時間で効果的な受注獲得につなげている
・メンバーに会議ファシリテーションの教育を行い、無駄のない効果的な会議進行を行っている
・不要な会議を減らす、用のない人は会議に呼ばないなど全体的に会議時間を減らしている

…など、単に労働時間を減らすだけでなく、生産性を上げるための施策を講じています。

うまくいかない事例の深掘り

それに対して、労働時間は減っているが売り上げも減っている名古屋支店の事例も見ていきます。

労働生産性・要改善事例(名古屋支店)

名古屋支店も無駄な会議の削減などを行い労働時間の削減のための施策は行いました。
しかし、営業の仕方は変わっていないため、営業の受注率は変わっていません。
そのため、営業時間を減らした分だけ受注額も減りました。
そこで、この会社では福岡支店の事例をモデルケースとして、労働時間の削減に加え営業の受注確度を高めるためのデータマネジメントを全社展開する施策を開始しました。

留意した方が良い事項

ここまで生産性についてみてきました。
最後に、生産性を追求することにより歪やリスクについて触れます。

生産性を追求し過ぎると以下のようなリスクがあります。

  • 労働時間の過少申告(サービス残業)の増加が増えるリスク。

  • 生産性を追求するあまり、安定した既存顧客に時間を使い、新規顧客の開拓などすぐ売り上げに繋がらないことに時間を使わなくなる。

  • 時間の効率化を追求するあまり、内部コミュニケーションや事務作業など、やるべきことを疎かにするリスクがある。

数字は目標にしたときからその数字にフォーカスします。
フォーカスし過ぎると他の大事なことを疎かにするリスクがあります。

そのため、モニタリングをするときはこのケースの場合、生産性だけを見るのではなく監査など別の観点からも注視する必要があります。

まとめ

今回はモデル企業を題材に売り上げと生産性、労働時間を可視化することで、働き方改革(SDGs8)と経営が両立しているのかダッシュボードで検証しました。

うまくいっている部署と課題がある部署がわかることで、課題の深掘りと打ち手が検討できます。

実際の課題の分析と検討の仕方は各社ごとで異なります。
私たちは各社の課題に対してフレキシブルに対応していきます。

今回は働き方をテーマにしましたが、今後とも経営ダッシュボードとSDGsについての記事を公開していく予定です。

このnoteをご覧になって、SDGsをやってみて直面したお困りごとを相談したい方、SDGsと経営を可視化するダッシュボードをどう作るかご相談したい方などいらっしゃいましたらぜひお問い合わせフォームから弊社までご連絡ください。

・株式会社Flexas Z Webサイト:https://flexas-z.com/

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