響け!ユーフォニアム3(+α)の感想  後編:fleuretの吹部経験の話

感想後編です。実質自分語りです。組織に関することを中心にまとめてるつもりですが、まとまってないと思います。許してね。

 以降、自分語りの要素を含みます。まだ「響け!ユーフォニアム」やfleuretのイメージを壊したくない方はブラウザバック推奨です。


中学:全国を目指せ

 当時の中学吹奏楽部は支部大会代表を他校と共に狙うレベルの実力で、私の頃から2連続で支部大会に突破しました。感想はというと、やることやっていたらいつの間にか突破していたと思う一方、支部大会の他校の演奏も凄くて上を見たという感じでした。成果を出したという実感は薄いものの、何かに全力を捧げるという経験ができたことはとても良かったと感じています。

 練習の厳しさはそこまで苦難なものではありませんでした。平日も休日も毎日練習三昧でしたが、怒声を浴びる程の理不尽さはなく、むしろ練習や仲間との交流が楽しくて楽しくて仕方がないといった感じでした。楽しむための努力など努力とは微塵も感じません。なのでどんどん練習できます。本気で取り組むことに関しては苦労などというものは存在しないのです。


 実際の練習内容はというと、まずは息を自在に操るためのブレストレーニング、基礎体力をつけるための腹筋・背筋、基礎合奏、個人・パートで基礎練習、曲練習、そして曲の合奏です。

 腹筋背筋が演奏にプラスに働くのかは賛否あります。また入部当初は返事の練習もあり、「はい」「こんにちは」「ありがとうございました」などの返事・挨拶を大きな声で素早くできるようにします。昨今の世論的には批難の対象になるかもしれませんが、私は問題ないと思っています。パワハラというほど厳しいものでもありませんし、特に中学では心身を鍛えるいい機会です。部活及び人生のやる気にも、基礎体力をつけることにも繋がる良い施策だと思います。

 基礎練習基礎合奏は楽器を演奏する上での基礎を習得する練習であり、これが練習全体の2/3を占めます。曲練習から基礎練習に立ち返ったりするので、結局100%基礎練習だったりします。個人練習で自分の音を磨き、パート練習で楽器単位で音を合わせ、全体合奏で楽団の音を完成させます。

 その他プロのレッスンやホール練習、体育館でのリハーサル、強豪校訪問、ソロコンテスト遠征など様々な練習を行いました。演奏もコンクールの他に定期演奏会、文化祭、地域イベントなど色んな場所に顔を出しました。そのひとつひとつが素敵な思い出として心に残っています。


 ここで目標設定の話をしましょう。1年の秋、コンクールが終わって3年生が引退し、新体制での部活が始まります。当時は部員数が減っていたこともあり、「コンクールに出るか否か、出るとすればA部門(メイン)B部門(小編成用)どちらに出るのか」を部員全員の話し合いで決めることになりました。

 部員1人1人がお気持ち表明をして、多数決をとり、決まって先生に報告すれば「ちゃんと話し合ったのかい?もっと良く考えよう」と返され、気づけば9月から始めたこの会議は1月まで続きました。この頃にはアンサンブルコンテストももうすぐ支部大会、定期演奏会も準備しようかというところ。
 いや、ちゃんと目標決まってこれで行こうとはなったんですよ。でもいざ練習を進めてみると「この体たらく…本気であの目標決めたのか?」ってことになって再会議、っていうパターンにはまっちゃったんですよね。中学生は大人への道第1歩ってところなので、難しいところですね。

 実際どういう意見が出たのかというと、コンクール出場は皆賛成、A部門の出場が多数派、一部はB部門もありと答えてました。途中「やりがい、達成感がある」との意見が多く出ましたが「達成感なんて他の事でもあるよ」と先生に一蹴されてましたね。
 最終的にはA部門にて支部大会に出場するのですが、実際B部門もありっちゃありです。B部門はあくまで小編成用であり、弱小校用ではありません。B部門でめっちゃいい演奏というのも存在するのです。


 支部大会出場が決定した本番後のロビー。周囲には代表に慣れなくて、金賞が取れなくて泣いている人達でいっぱいでした。「今まではうちらもあの子たちのように泣いていたんだよ。その子達の想いを受け継いで私達が支部大会に行くんだよ」そう先生が言葉を残しました。本来勝ち負けのない音楽、そこに勝者と敗者が生まれる、これがコンクール・コンテストというものです。



高校:なんですか、これ

 私は訳あって私立高校に進学したのですが、そこの吹奏楽部は正直言って吹奏楽部ではありませんでした。コンクールでは支部大会にも何度か出場し、マーチングでは全国にも出場したことがある部活でしたが、その実態は言うなれば音を利用した運動部でした。


 具体的にどう酷かったか。まず個人練習がありません。個人で音を研究してこそ上達するのに、それができないのです。基礎合奏(ただのルーティン)、パート練習、合奏と、常に周りと同じことをすることを強要されます。これでは心の休まる暇もありません。

 いざ合奏に赴いてみると、言われるのは音程とリズムのみ。音楽的な指導は全くありません。ひたすら吹いて、他人の音程合わせ聞いて、また吹いて、この作業の繰り返しです。ここまでつまらない合奏があるのかと愕然としました。

 当初は私はマーチングには参加しない約束でした。しかし「もしかしたら参加させるかも」と約束を消され、なぜかマーチング練習に参加、2万円もする衣装まで買うことになりました。


 連絡は基本ラインです。なぜわざわざ不便な連絡手段を取るのでしょう。当時私はスマホを持っていません。先輩からは「私の友人(3年受験生)づてに連絡してもらおう」とか言われる始末。無茶ですね。

 そんなわけでいきなりホール練習だの、来てみたら休みだっただの、来てみたら本番終えていただの、散々でした。極めつけは「明日から3日間合宿、その次の日のコンクール本番は朝4時集合です」、これをいきなり言われるのです。準備なんて全くしてません。詳細は省きますが、控えめに言って地獄でした。


 交流なんてもってのほかです。他の部員と交流したことは基本なく、あっても偏見マシマシの気持ち悪い会話ばかりです。ほんの1,2回程度の(部活に染まりきっていない)同級生との会話が唯一の救いでした。


 実際の演奏はどうか。忖度なしに言うと、音量と勢いでごまかしている印象でした。音程とリズムは練習しているので一応形にはなっていますが、音楽ではないです。容赦なしに"オト"を観客の鼓膜にぶつけて破壊を試みてきます。定期演奏会なら照明が目にダイレクトアタックしてきます。聞いてて何が楽しいのかさっぱりわかりません。

 「響け!ユーフォニアム」でも「コンクールのための演奏」という話がありました。楽しさ度外視の、技術だけに注力した演奏というものがこういう演奏な気がします。残念ながら全国大会でもこういう傾向の演奏はあり、「技術ばかり仕上げてて、面白くないんだよなぁ」って思ってしまいます。


 あくまでもこの学校の吹奏楽部が特殊なだけで、吹奏楽部自体が問題なのではありません。他の学校の吹奏楽部の演奏会などにも行きましたが、とても楽しそうで、とても悲しくなりました。

 そんなこんなで、私はこの部活を4ヵ月で辞め、地元のジュニアオーケストラに入団しました。



オーケストラ:楽しくはあるが…

 ジュニアオーケストラは小学生から高校生までを対象とした、音楽教育を目的とする楽団です。地元の音大の先生が講師として指導に来て週1で練習を行い、3月の定期演奏会を目指します。

 練習風景としては基本和気あいあいとしています。管楽器は各校の吹奏楽部が多いので、先生と駄弁り半分、練習半分で、かつ本格的な指導を受けることができます。

 私はクラシックも好きだったので、この場は日々の癒しの空間となりました。プロの指導もあるので、演奏も充実しています。しかし楽しかったかというと、首を傾げざるを得ないです。確かに楽しくはある。でもそれは音楽的な話で、コミュニティとしては週1程度の付き合い。中学の部活のような楽しさは無縁の世界でした。

 そんな楽しいけど無味乾燥という矛盾状態のなか淡々と1年半が過ぎ、私は受験に専念するために引退することになります。



大学:曲者達のボクシング

 大学の吹奏楽部ともなれば、吹奏楽を愛してやまない曲者達が仲間を求めて集います。もちろん大学から楽器始める初心者も来て、数日で部活に馴染みます。大学ともなれば部活の方針や練習も自由。思いっきり羽を伸ばして吹奏楽を楽しむことができる、素晴らしい空間です。

 しかし自由自治にはいざこざも付き物です。実際どんな問題があったのか、見ていきましょう。


日常

 平日は18~21時で練習、終わればそのまま帰るか、部員と遊ぶかします。土曜は9~16時、日曜は休日です。本番前は練習が増えます。個人・パート・全体合奏、どの練習も当然ありますし、さらには細かくパートやセクションを変えて練習したりもしました。指導も全部部員が意見を出し合って行い、指揮も部員が行います。全部自分達で行うので、納得のいく充実した練習が可能でした。

 練習が終われば自由行動です。帰ってレポートを済ませるなり、寝るなり、バイトに行くなり、飲みに行くなり、一般的な大学生活を送ります(いや、遊ぶのが一般的な大学生活っていうのはどうかとは思いますが)。

 演奏会や合宿の手配なども、当然自分達、主に3年幹部の仕事です。OBOGの遺産である役職分類を用いて役割分担を行い、部活が正常に機能するように各々仕事を行います。

 当時の部の実力は支部大会行くかどうかというところ。私は1度だけ支部大会に出場しました。年末には定期演奏会があるため、コンクール後はその準備に追われます。その他依頼演奏や他大学交流などを行うこともありました。

 高校時代の悲惨さをカバーする程の楽しい日常だったと言えるでしょう。


アンコンオーディション

 大学では北宇治のようにアンコン部内オーディションが行われました。部内でメンバーを自由に決め、顧問の先生やOBなどに審査してもらう形です。

 当時私はメンバーからハブれ、オーディションの裏方として活動しました。最初は「アンサンブルには興味ないんだよね~」という先輩から席を譲ってもらい、金管アンサンブルに参加する予定でした。しかし周囲の説得もあって先輩が「アンサンブルやっぱやりたい」と言い出し、私も快く席を譲りました。

 譲ったはいいんですが、人数の関係上他に参加できるグループはありません。北宇治のコントラバスみたいな記念参加という方法も当時は思いつきませんでした。それでも当時は何とも思ってなかったんです。

 しかし練習していると、遠くから曲が聞こえてくるんです。クラリネットの曲、パーカッションの曲、金管の曲、サックスの曲。各地でアンサンブルの曲が聞こえてきます。私は一人、個人練習をもくもくと進めます。

 なんだろう、この疎外感。

 ほんの数人だけが特別練習するならまだしも、自分だけが取り残されるようなこの感覚は不思議なものです。頭では理解していても心が追いつかないようです。(ユーフォ1期の葉月もこんな気持ちだったのかな)

 このような想いをさせないための、北宇治の久美子の計らい。控えめに言って最高です。


エンドレスミーティング

 当時の私の代の幹部会議は、会議が無駄に長引くことで有名でした。

 まずは役職決め。これは1年の11月ぐらいから1ヵ月かけて決定します。
 初めに指揮、次に部長・副部長、それから重要度高い順に立候補していって、調整入れて終わりです。

 この作業に4,5ヵ月かかりました。


 何をやっていたのかというと、

~指揮決め~
一通りお試し合奏を行った後
「あの人はこうだね~」
「この人はこうだね~」
「多数決取って意見交換しよう。なるべく全会一致で決めたいね~」
多数決後、意見交換。そして再多数決
「なんも変わらんね☆」

A few days later…

「なんとか決まったから部長決めよう。立候補は4人か」
「それぞれ立候補理由述べて、他の人で意見交換ね」
「部長副部長指揮あたりは部内恋愛組で固めたくないよね」
 (当時は部内恋愛が2,3組成立していた)
私は~~~。俺は~~~。
(長い。そしてよくわからん)
「さて皆言い終わったね」
「あの人はむずそう」
「あの人良くない?」
「部長ってリーダーシップ取る人って思ってる人多いけど、部の顔としての役割も大きいよね」
「そもそも部長って普段何してんだ?」
―何もしてないよ?代表として顔出すことが多いかな。後は兼任している他の役職の仕事とか by 当時の部長―
「確かに部内のリーダーとしての役目はあまりないのかも?」
「じゃあその観点で見ると…」

A few days later…

「じゃあ多数決取って意見交換を」

A few days later…

あーだこーだ

A few days later…

「時間ないからもう多数決で決めちゃうよ」

One day later…

「風呂入ってて考えたんだけどさ、あの決め方強引過ぎだよね」
「わかる、納得いかん」
「じゃあもっかい考えるか」

A few days later…(上記「あーだーこーだ」に戻る)
A few weeks later…

「部長、決まったね」ぜーぜー
「次は副部長か」ぜーぜー

A few days later…(上記「あーだーこーだ」に戻る)
A few weeks later…

「これでいいよね」ぜーぜー
「残るは他の役職…」バタン

A few hours later

「すんなり決まったわ」
「もう2月かよ」

(重要な役職はほぼ部内恋愛組が占有しました)


お気持ち表明言い合って、多数決取ってはひっくり返し。論点も見えないまま数ヵ月を使い切ったのでした。チャンチャン\(^o^)/



とはならないんですな。1年過ぎて本格的に幹部活動が始まろうという時、「先輩に部活に残ってもらうかどうか」を決めることになりました。当時は人数が少なかったので引退する先輩にお願いして4年次も残ってもらったりしていたのですが、今年はそこまで人数が少なくありません。

「どうする?」
「別に必要ないならお願いしなくてよくね?」
「でも先輩に申し訳なくない?」
「先輩との関係が断たれるのもなぁ」
「足りない楽器だけお願いする?」

あーだこーだ

「選択肢は『呼ぶ』『足りない楽器だけ呼ぶ』『呼ばない』かぁ」
「あ、俺バイトだから抜けるわ」
「もう学校閉まる時間か。場所変えよう」

場所変えてあーだこーだ

「あれはこうじゃん」
「いやこうじゃん?」
「こういうことも考えられるよね」
(なんもわからん。結局何が言いたいんだ?)

「ただいまーバイト終わったよー。どんな感じ?」
「全然!何も!決まってません!」
「もう疲れた!」
「これはもう多数決かな?」
「いいけど、お前ら後で絶対文句言うなよ!?」

多数決
「呼ばないでいいのね?本当ね?先輩に返事送るよ?」


1日で決まったのは成長ですね(笑)
でも数か月後にまた覆るんですよね。


「今まで勉強忙しくて休部してたけど、復帰しまーす^_^」
「って、そういうことになったの?先輩との関係切って本当に大丈夫?」
「先輩方の間でも話題になってるんだっけ」
「なんでこんな決定にしたんだよ」
「お前らが『疲れたー』言うからじゃん」

あーだこーだ
「先輩方、呼びましょう」


 ようやく決まったようです。会議とは意思決定を皆でする場です。「夕飯何にしよっかなー」って一人で考える時、食材何余ってたっけ、今日何が安いかな、今日何の気分かな、今日はあの人が帰ってくるんだっけ、などといった状況を考えてベストな料理を決めるはずです。これを会議の時でも同じで、何決めるんだっけ、あれはどうかな、これはどうかな等と状況を整理し、ベストな案をつくって決める。これが会議の本質なのですが、ここではただひたすら悩むだけの場となりました。


 自由自治に伴って発生したいざこざですが、ここで話したことはおそらくマシな方です。世の中にはこれ以上に無駄なことばかりしている団体が多く存在するんじゃないかと思います。それを誰かのせいにしていては、改善の兆しは見えないでしょう。物事の原因は物事であり、人ではないのです。


企画の役割って?

 役職の中に企画という役割があります。演奏会での演出などを決める役割です。私も企画でした。
 でも、演奏会で何するかって、皆案を出したがりますよね?
 そんな曖昧な仕事内容から発生したいざこざを紹介しましょう。以下「」は企画、――は他部員のコメントです。


・新入生歓迎演奏
「この曲振付しよ」
 (曲中に楽器を振りまわす演出。例:ユーフォ1期の宝島の演奏)
「いいね、こんな感じ」
「良さそう。でもその振付はきつそうかな」
(別に振付って要らなくね?演奏に支障出るし、見た目そこまで面白くないし。まあ楽しいならそれでいいか)

あーだこーだ

「こうなりました!」
―ふざけるな!練習期間短いのにこんなに動けるわけないだろ!―
(そうかな?これぐらい普通じゃね?私が頭バグってんのか?)

以下つくっては棄却されの繰り返し

 新歓の演出を発案する企画、それを拒む部員。ここでは企画の役割は演出提案でした。


・定期演奏会
話は変わって年末の定期演奏会の企画。今回は幹部全員での話し合いです。
「曲目どう決めましょう」
―まずテーマ決めよ?―
「テーマ要る?(私)」
―演奏会の統一感欲しい―
「わかる。決めよー」

あーだこーだ

「1部はクラシック、合間はアンサンブルで、2部はポップス」
―んで、2部のテーマは時間旅行。観客を案内する方向で―
「決定!曲目もこれでOKね」
―OK!―
(???)

 円満に決まったようです。しかしfleuret君、納得がいかない様子。
 時間旅行という2部のテーマ。観客を旅行案内するという触れ込みですが、その曲目は昭和~平成の内容です。観客は地域の中高吹奏楽部や部員の家族、地域のおじいちゃんおばあちゃん等が来るでしょう。
 おかしいですね。観客の多くは昭和~平成を経験してきた人達です。そんな人に昭和~平成の世界を案内するのでしょうか?鎌倉に住んでいる人に鎌倉を案内してどうするのでしょう。
 何やらおかしな方向に決まっちゃった定期演奏会。ここでの企画の役割はまとめ役でした。


 同じ演奏会の企画なのに、演出提案とまとめ役という異なる役割をそれぞれで担っています。定期演奏会の曲目決めるまでならまだしも、その先のテーマという演出内容まで他部員の案で決めています。

 果たして演出提案という企画の役割は合っているのでしょうか。提案しても「こんなんできん!」「やりたくない!」と返されるだけです。私的には「皆の案を取りまとめて実現可能なものにする役」という風にした方がうまく機能したと思っています。


ブルジョワジー

 4月の段階でもう支部大会の話が話題に上がりました。この時の遠征の日程をどうするか、どこに泊まるか、などですね。ちなみに去年は県大会ダメ金なので支部大会に行っていません☆

 なぜかここで一昨年同様の1日宿泊ではなく、2日宿泊の案が出て採用されました。大会前々日に前乗りしようというのです。1日じゃ体の調子が整わない云々と言っていましたが、私には全くわかりませんでしたし、その私の意見も水に流れました。

 宿泊を1日増やすということは、遠征費も2倍になるということ。それを後輩に課すのかと思うと同時に、貧乏だった私には賄えないとも思いました。曖昧な理由で金銭負担を増やすのは意味不明です。雑談気分で会議をしていると、このような意味不明の事態に陥ってしまうのです。
 諸事情あって私は一足先に退部しましたが、彼らが支部大会に行くことは残念ながらありませんでした。定期演奏会は聞いてないのでわかりません。


演奏目標

 コンクールなどの演奏を行うにあたって、方向性を決めることになります。中学時代のようながっつりとした話し合いは行いませんでしたが、課題曲決めにおいてこの方向性の違いがはっきりと出ました。

 課題曲とはコンクールで演奏する2曲のうちの1曲で、一定の難しさを有するものです。毎年4,5曲運営から提示され、その中の一曲を選ぶことになります。課題曲自体は全国各地で作曲されたあらゆる候補曲が集められ、そこから厳選して選ぶ形が取られています(作曲者にとってのコンクールですね)。
 大抵2曲がコンサートマーチ、1曲が少し暗めの曲(民謡をモチーフにしたりする)、1曲が明るめの曲(吹奏楽ポップスになることもある)です。このうち2曲は小編成でもできるような工夫がされています。さらにもう1曲現代音楽が追加される時代もありました。

 ここから曲を1つ選ぶのですが、当然票が割れます。
 曲を仕上げやすいのはマーチであり、最も本番で評価されやすいとされています。しかし例年似たり寄ったりの曲ばかりだったり、フレーズや構成に違和感があったりするものもあり、それを嫌う人もいます。
 他の2曲はやってて楽しいのですが、技術的に難しい引っ掛け要素があり、上手く演奏できない可能性があります。ただマーチより楽しいことが多分多いです。


 実際どの課題曲が良いかというと、マーチが多数派、その他が少数派になります。理由は「マーチのが仕上げやすい」「コンクール向き」などというものです。尤もな理由ではありますが、そういってマーチを選んだ年は県大会でダメ金、民謡曲を選んだ去年は支部大会出場を決めました。

 これは個人の意見ですが、仕上げやすいかどうかという点はどの課題曲も似たり寄ったりな気がします。ならば情熱を注ぎやすい曲を選んだ方が結果が伴いそうです。


 この課題曲決めでは、コンクールにおいて「楽しさより結果を選ぶのか」「結果より楽しさを選ぶのか」という2つの方向性が見えたイベントだったと感じています。ユーフォの橋もっちゃんの「音を楽しむと書いて音楽」、久美子の「吹奏楽のためだけの音楽ですか?」という話にも繋がる話です。

 また当時同学年でオーケストラ部出身の子がいたのですが、その子のスタンスは「定期演奏会がメイン、コンクールはあくまでサブイベント」というものでした。「コンクールがメイン、結果が全て」と捉えられがちな吹奏楽界隈ですが、もっと広い視点で見えてくるものがあるかもしれません。

 ちなみに全国大会の演奏には「技術は良いが面白みに欠ける演奏」も「技術はいまいちだが面白みがある演奏」もどちらもあります。コンクール全国大会を目指すということは他校を蹴落とすということ。結果を気にせず好き勝手にやって、ありのままの結果を受け入れるのも良い気がします。


顧客優位か、自分優位か

 経済の世界では「顧客優位」という考え方が当たり前のように広まっています。「自社の事より顧客の事を優先しよう」という考えです。顧客の生活の歯車となる事業を運営するのであれば、それもいいでしょう。しかし吹奏楽にもそれはあてはまるのでしょうか。

 この部活でも、2年の夏に会議でこのことが話し合われました。「観客を楽しませるのが先か、自分が楽しむのが先か」多数決の結果、私以外は顧客優位と主張しました。結局、順序の問題だし後でまた話し合えばいいよと水に流れてそれっきりだったのですが、もっと話し合うべきでしたね。


 なんで私が自分優位がいいと主張したのか。ちゃんとした理由があります。「音楽などの芸術において、顧客のニーズなど当てにならない」からです。部活など営利目的でない場合は特にそうです。

 よく観客のためにとポップスの吹奏楽アレンジが演奏されるんですが、原曲で良くないですかね?ポップスの吹奏楽アレンジは中高生向けに簡単にしたものも多く、聴いてて微妙だったりします。中高生ならまだ若々しさがあって聴きごたえがあるのですが、大学生が吹いても面白さに欠けます。原曲のファンなら「原曲のがいいよね」ってなりますし、吹奏楽ファンなら「吹奏楽オリジナル聞かせてよ」ってなります。特に流行りの曲は「またこれか」とうんざりすることも。楽しいっちゃ楽しいので完全になしとは言いませんが、「ポップス入れりゃいいんよね?これが聞きたいんよね?」は大抵的を外しているのではないでしょうか。
(もっと吹奏楽オリジナルが増えればいいんですけど、作曲の採算性が取れないのか全然増えないんですよね)


 ニーズを図るものとして、定期演奏会後のアンケートがあります。「演奏してほしい曲はあるか」という問いですね。あれ誰が答えるんでしょう。答えるとしてその場で来年聴きたい曲書けるでしょうか。そもそも本当にその曲を来年の部活メンバーの演奏で聴きたいんでしょうか。私なら演奏会の余韻を残しながら帰りたいためにアンケートには何も書きません。書いても「良かった!」だけです。

 この吹奏楽部だから聴きたいという程、自分達の演奏に特徴があるでしょうか。youtubeに動画をあげている他大学に負けてませんか。特に特徴もないのに来るリクエスト曲と言えば、「私がこの曲好きだから」「このバンド(ポップス)が好きだから」そういう理由ばかりではないでしょうか。

 そしてリクエストに応えたからといって、観客の想定を超える演奏はできるでしょうか。せいぜい想定の75%ぐらいに収まるのではないでしょうか。欲しいのは観客を120%満足させられる演奏。それは自らやりたいことをやらなければできません。期待に応えようとして演奏しても「これが聴きたいんでしょ?」「う~ん、なんか違うなぁ」となってしまいます。


 音楽は楽しんでなんぼです。自分が心から楽しんでないのに観客が楽しめる訳がありません。自分がやりたいことやった結果、それに同調する人たちが集まってくるのです。
 プロではありますが、ヨーロッパにムノツィル・ブラスという金管アンサンブル集団がいます。彼らは極上の演奏と独特のパフォーマンスで日々観客を魅了しています。その成立背景は「音大の仲間で行きつけの店で好きなように演奏していたら、観客が勝手に集まってきた」というものらしいです。まさに自分優位で成功した例ではないでしょうか。

 顧客優位は一見理想のように見えて、媚びを売るという側面があります。また一見顧客優位に見えても「"自分が"人を楽しませたい、人の役に立ちたいんだ」という自分優位であることもあります。「あなたの仰せのままに何でもします」ではなく、「私こんなことしてあげたいんだけど、どう?」みたいな感じです。企業活動の顧客優位も、上手くいくのは後者の自分優位ではないでしょうか。自分優位の行動こそ、人間らしく自他ともに快いものです。




最後に

 特に言うことはないんですけど。

 まぁ、吹奏楽は楽しいよ、ってことで。



以上、響け!ユーフォニアムの感想後編でした。
またね。(。・ω・)ノシ