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蛙太郎
2024年5月19日 16:30
厚着明けは首周りが心許なくて、忘れ物の予感と似ていたから、振り返れば春だった。建設現場のフェンスから漏れ出すノスタルジア。愛しい轍は霞んでいく。スカーレットの鈍行列車。秘色の膝の裏。おやすみのベルガマスク。質量を失くしても背負い続けて、土踏まずを凹ませた。あれから何も出来ないままで、湿っぽくなった風が吹く。トーキョータワーのアンテナが、脳漿に放つ微弱な電流。目まぐるしいこの街で、立って