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リバースアダプターでマクロチャレンジ

小さなモノを大きく撮る。

それが「マクロレンズ」の醍醐味です。マクロレンズを使うことで、肉眼では見えにくい幻想的な世界を垣間見ることができます。

けれどもマクロレンズは高いのです。ハマってしまうと金銭感覚がなくなってしまうほどの恐ろしい沼が待っています。とにかくマクロレンズは高いのです。そこで   

『ちょっとの工夫でこの美味うまさ』

一昨年の春に惜しくもこの世を去られた料理人、神田川俊郎かんだがわとしろうさんの言葉です。カメラ・写真の世界でも、そう考えて実践された方々がいらっしゃいます。通常のレンズを使ってマクロ撮影ができないものか、と。

結果、私たちには次の方法が用意されました。

1.接写リングによる撮影
2.クローズアップレンズによる撮影
3.リバースアダプターによる撮影

この3つについて、それぞれを簡単にですが解説してみます。

1.接写リングによる撮影

一般に、最短撮影距離で撮る被写体がいちばん大きく写ります。
このとき、ピントリングの操作によって前面レンズと撮像面(センサー面 or フィルム面)はいちばん離れた状態になっています。すなわち、被写体をもっと大きく撮るには、前面レンズと撮像面との距離をさらに大きくすればよいことになります。
そこで考え出されたのがカメラとレンズの間にはさみこむ空洞の筒です。これを「接写リング」あるいは「エクステンションチューブ」と言います。

M42 マウント用の接写リング

はさみこむ筒が長いほど被写体が大きく写ります。

長いといっても限度がありますから、あまり長すぎると被写体にぶつかります。

2.クローズアップレンズによる撮影

新聞とか保険の約款やっかんとか。
小さな文字を読むには虫メガネがあると便利ですよね。

……え? そんなモノがなくても十分読める?

いやはやうらやまし……いえいえ私だって、老眼ですけど近眼ですから、眼鏡させ外せばどんな小さな文字だって読めますよ。 へへーんだ。

って、そういう話ではなくてですね。小さなモノを見るには、それを拡大しちゃえばいいじゃないかっていうお話です。つまり、通常のレンズの前にさらに虫メガネ的なレンズをつけるんです。それが「クローズアップレンズ」です。

ケンコー・トキナーのクローズアップレンズ

とても薄いので「クローズアップフィルター」なんて言われたりもしています。

ただし、レンズの枚数が増えますので光学性能(画質)は少し落ちます。

3.リバースアダプターによる撮影

カメラは、目の前の広範囲ワイドな光景を、レンズを通してギューーッと縮小しながら、わずか数 cm の幅しかない撮像面に像を結んでいます。実際のサイズが数m だろうと数十m だろうと、数 cm の空間に押しこむことができます。大きなモノを小さく写しているわけです。
では、そのレンズを逆向きにくっつけるとどうなると思います?

  ピンポン、正解です。

小さなモノを大きく写すことができるのです。それを実現するためのアダプターが「リバースアダプター」です。

PENTAX 純正のリバースアダプター K・49mm

レンズは広角になるほどより広範囲ワイドに写せますから、ここで使うレンズも、広角になるほどより大きく写せます。

ただし、レンズ先端にあるフィルター用のネジ溝をつかってアダプターと固定しますので、あまり重いレンズは怖いです。

本記事では、3つめに紹介したリバースアダプターを使って、いったいどのくらい大きく写せるのかチャレンジしていきます。1,350 文字ほど使ってよーやくタイトルを回収することができました。ここまでくるのに原稿用紙3枚分以上です。いつも冗長ですみません、ここからが本題です。私の文章、長いですよね?
少しでも短くなるよう努力はしているんですが……え? こんなコトを不用意に書いているからよけいに長くなる? その通りです、ごめんなさい。


用意したレンズはこちらになります。

1.PENTAX Super Takumar 55mm F1.8
2.RICOH XR RIKENON 50mm F2
3.Carl Zeiss Jena Flektogon 35mm F2.4
4.RICOH XR RIKENON 28mm F2.8

さきほど答を書いちゃいましたので、最後の XR RIKENON 28mm がいちばん大きく写せるのはわかっています。が、標準的な焦点距離のレンズではどのくらい大きくなるのかも含めて実験しますので、生温かい目で見守っていただけると幸いです。

使用するカメラは Canon の EOS R6。フルサイズのミラーレス一眼カメラです。
私が使っているリバースアダプターは PENTAX 純正の K・49mm(ボディ側が K マウントでフィルター径 49mm のレンズに対応)ですので、PK → EOS R 用のマウントアダプターをかませて EOS R6 と接続します。試しに手持ちの Canon EF50mm F1.8 STM を逆向きにくっつけてみましょう。

こんな感じです。ちょっと不格好です。

K マウントから各社のマウントに変換するアダプターを使えば、マウント形状の違うカメラでもこのリバースアダプターが使えます。ケンコー・トキナーからは Canon EF マウント用と Nikon F マウント用のリバースアダプターが販売されています。

レンズを逆向きに使うと電気的な接点はなくなってしまいますので、リバースアダプターでくっつけるレンズはフルマニュアルなレンズがおススメです。絞りリングを持たないレンズでは F 値の変更ができませんし、Canon の RF レンズなんかだと、電気の供給をやめた時点で絞り羽根が閉じます。暗くて使えません。

電子接点を生かせるリバースアダプターもあるのですが……やたらと高いです。マクロレンズが買えます。本末転倒です。

1.PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

みんな大好き、PENTAX のオールドレンズです。

PENTAX Super Takumar 55mm F1.8

焦点距離 55mm、フィルター径 49mm。私が持っているのは「前期型」と呼ばれるタイプです。カメラに接続して……パシャッ。

写っている幅は約 51mm。最大撮影倍率を計算すると、36 ÷ 51= 0.71 倍ですね。1.0 倍のマクロレンズにはおよびません。残念。

2.RICOH XR RIKENON 50mm F2

一部で「和製ズミクロン」とか「貧者のズミクロン」とか言われているレンズです。大きなお世話です。笑

RICOH XR RIKENON 50mm F2

フィルター径が 52mm なので、52 → 49 のステップダウンリングをはさんでアダプターとつなぎます。

写っている幅が約 29mm ということで最大撮影倍率は 1.24 倍、マクロレンズを超えました。拍手。
PENTAX Super Takumar 55mm F1.8 と 5mm しか焦点距離が違わないのにこの差です。もしかすると、ステップダウンリングの厚み(約2mm)も影響しているのかもしれません。

3.Carl Zeiss Jena Flektogon 35mm F2.4

最短撮影距離が 0.2m という、普通に使ってもかなり寄れるレンズです。

Carl Zeiss Jena Flektogon 35mm F2.4

フィルター径は 49mm ですので、そのまま接続できます。

写っている幅は約 16mm。2.25 倍のマクロレンズになりました。

4.RICOH XR RIKENON 28mm F2.8

XR RIKENON 50mm と同じく「富岡光学」製ではないかとウワサされているレンズです。

RICOH XR RIKENON 28mm F2.8

こちらもフィルター径が 52mm なので、ステップダウンリングをはさみます。

写っているのは約 11mm なので……すごいですね、実に 3.27 倍のマクロレンズです。


  さて、今回のチャレンジ、いかがだったでしょうか。

オールドレンズを使用した理由は、その安さにもあります。
いちばん倍率の高かった RICOH XR RIKENON 28mm F2.8 は、たしかオークションサイトで 5,000 円くらいでした。高いマクロレンズを買わなくても、マクロレンズの代用としてじゅうぶん使えます。
リバースアダプターとボディ側のアダプター、それにステップダウンリングを加えても 15,000 円程度です。

やらないと損をします。笑

Canon EOS R6 + RICOH XR RIKENON 28mm F2.8(リバース)
1/125 F16 ISO-640

最後に、そのへんに転がっていた乾燥剤シリカゲルを撮ってみました。


……いえいえ、けっしてバラバラで転がっていたわけではありません。

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