芸術家と職人の違い
ここでいつもくだらない事を書き連ねてはいるが、
私の本職は刺青師、いわゆる彫師である。
「書く」ことは趣味だが「描く」ことが仕事であるのだ。
ちなみに今思ったのが、「書く」と「描く」やっていることは微妙に違うんだけどなんで同じ発音にしたのだろうか。日本語が難しいなんて言われるのはそういう所だと思うぞ。
それはさておき、そんな仕事をしているがゆえ色んな方々から
「アーティストだ!」と言われることが多いです。
まぁ彫師を英語で言えば「タトゥーアーティスト」なんだけどね。
実際アーティストと言われて嬉しい面もありますが、反面違和感を抱くこともあります。なぜならば私は自分自身をアーティストの前に「職人」であると自負しているからです。
なので「アーティスト・芸術家」と「職人」の違いを私なりに解釈しようと思います。
どちらから説明しようかな、職人かな。
辞書によると
しょくにん【職人】
主に手先の技術で物を作る職業の人。例、大工・左官・建具師(たてぐし)。
そうあります。
主に手先で物を作る。 まさに刺青彫師。
ただ「物を作る」という結果に至るには「依頼される」という起因がある。
そこがすごく重要。 「依頼された物を作る」それが職人の定義なんだと思います。
そう、家を建てる時に設計士がいて大工さんがいて。それと同じなんです。
依頼者がこんな家がいい、リビングはこの広さで、窓はここに、階段には手すりを、子供部屋はいつか隔壁をつけれるように、キッチンから洗面所の動線はこうで、外壁の色と材質はこれで、
無限にあるであろうその注文をそっくりそのまま作り出すこと。
たまに「旅館の部屋によくある窓際に椅子置いてあるあの謎スペース作ってよ!」とか「2階から滑り降りる棒をつけてよ!」なんてお題もあったりするだろう。
いやぜってー使わんだろそれ!なんて思うかも知れないが依頼者がそう望むなら提供する。それが職人。
ではアーティスト、芸術家とは。
芸術家(げいじゅつか)
そうあります。職人とにて非なる部分が「創造」という言葉。
「創る」という言葉。「作る」とはまた別の意味合いである。
何もないところから何かを創る、絵画であったり、音楽であったり、ダンスなどの表現を創り出す。
一部のプロフェッショナルを除きほとんどの芸術作品は依頼されて制作するものではない。自らの意思でその芸術を創り出す、依頼者は自分自身であり、納品先も自分自身か観客へ向けてのものである。
そしてそれが完成されるまで誰も出来上がった姿は想像できないのだ。
職人は「作る」
アーティストは「創造する」
違いはそこにあると思う。
さて、なぜ私が私を職人と思うのか。
タトゥーとは図案や模様などを肌に定着させたものである。
その図案、例えば龍や鳳凰、花や彫像であったり、レタリング、トライバルと多岐にわたる。
その図案を制作するのも私の仕事、肌に彫るのも私の仕事。
「絵を描いてるじゃん彫ってるじゃん、芸術家じゃん」
そう思われるかと思いますが、図案を制作するにはまずはオーダーが必要なのです。
この部位にこんなデザインを、こんなサイズでこんな色で。と精細な依頼内容をもとに図案を制作します。
そこに私自身のアーティスト的なエッセンスは含まれてません。
(まぁ多少はカッコよくなるような理論的エフェクトや手法はつかいますが)
設計士や大工さんのようにあくまでもお客様が要望したものを忠実に作り出す。
そこが私の根幹をなす職人的部分なのです。
ここまで書きましたが、まぁアーティストでもあり職人でもあるんですけどね、彫師はその両方を兼ね備えないとタトゥーは生みだせません。
ただアーティスト特化すると辛いのです。
精神的に蝕まれるあの感覚。無から有を生み出すあの苦しみ。
より良いものを創らねばならぬ重圧感。
だから職人でいたいのです。言われた物を言われた物以上に作り上げる。
そちらの感覚を持っていたほうが気が楽なのです。
真面目な事を書いてしまった。
ウンコとかチンコとかおっぱいとか書きたい。