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KAN,MAが売っているもの。

「長居してごめんね。」

カフェをやっていると、帰り際、お客さんにそう言われることがとても多い。僕らは「全然いいですよ!」と言うけれど、カフェで長居することはどうやら謝りたくなることらしい。

ぼくらが運営しているカンマダイニングというカフェでは、気にせず長居してください!と言っている。そりゃあ、お店としては回転数を上げてお客さんをどんどん回していくことが売り上げアップに繋がるわけなのだけど、うちの場合は長居を推奨。
その理由をお話ししようかと思います。

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カフェは「食事をする場所」ではなくて「過ごす場所」


皆さんはカフェに何をしに行きますか?
もちろんごはんを食べに行く人もいれば、友達とおしゃべりする人、1人でぼーっとする人、本を読む人、仕事をする人、勉強する人、etc....
カフェには様々な過ごし方をする人がいます。フレンチレストランで勉強をしていたら「なにしてるの?」ってなりますが、カフェではそうはなりません。
なぜかというと、フレンチレストランはフランス料理を食べる場所で、ラーメン屋はラーメンを食べる場所で、カフェは”過ごす場所”だからです。

もちろん僕らはごはんやコーヒーをお出ししているけれど、それはお客さんが過ごす時間を少しでもいい時間にするためのだと思っていて、あくまでぼくらがメインで提供しているのは”時間”です。
ひとりでぼーっとする時間があって、本を読む時間があって、そこに1杯のコーヒーがあったらさらにいい時間になるじゃないですか。
友達と楽しく過ごす時間に、美味しいごはんがあったら会話も弾むじゃないですか。そんな考え方。
つまり、フレンチレストランがフランス料理を極め、価値を高めていくように、カフェはより良い”時間”を極めていくことで、価値を高めていく必要があると思っています。


時間の価値を高めるために


では、時間の価値を高めるとはどういったことなのか。2つの視点があります。それは「量的価値」「質的価値」。

「量的価値」とは、時間に置き換えると”長さ”だと思ってもらえるとわかりやすいと思います。30分過ごした価値と1時間過ごした価値は1時間の方が大きいですよね。冒頭で言った「長居してください。」は量的価値を高めることに繋がります。
そしてKAN,MAでは意図的に、少しでも長くお店で過ごしてもらえるような仕掛けを作っています。
例えば、KAN,MAのコーヒーは比較的量が多く、そして濃いです。それは少しずつ味わって飲んでほしいから。量が多い分、冷めても美味しいコーヒーを淹れられるように意識しています。
また、冷たいドリンクに付くストローはとても細いものを使っています。これもゴクゴク飲むより、チビチビと飲んでほしいから。

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他にも、店内には時計が置いていなかったり、靴を脱いで家みたいにくつろげるようにしていたり、とにかくつい長居してしまうようなお店づくりをしています。

"時間を作る"ということ


対して「質的価値」とは、飲食店であれば当たり前のようにやっている、お客さんの満足度を上げることです。美味しいごはんを作ったり、気持ちよく過ごしてもらえるような丁寧な接客を心掛けたり。
これらはわかりやすいと思うのですが、KAN,MAではこれに加えて"時間を作る"ということもしています。

KAN,MAでは、来店した際、お客さんに座る席を選んでもらいます。
メニューに写真は載せていません。
炭酸ドリンクは、シロップが入ったグラスに、お客さん自身が炭酸水を注ぎます。

これらは、「どこに座ろうか?」の時間、
料理が目の前に出された時の「わあ!」の時間、
シュワシュワと音を立てて炭酸水を注ぐ時間。

すべてこういった時間を作るためです。

美味しい料理を作ることや、インパクトのある見た目にすること、気持ちのよい接客を心がけることは、時間の質的価値を高める大きな要素です。
もちろんそれも大事なのだけど、でもそれだけでなく、こんな小さな時間の積み重ねも、”いい時間”を提供するために大事なのではないかと思っています。

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さて、そんなこんなでKAN,MAが考える”時間”について綴ってきました。
この時間の価値を高める作業をし続けた結果、KAN,MAは他にはない居心地や癒しを提供できるようになったと思っています。

あ、長居していいよーと散々言ってきましたが、混雑時などは席の移動をお願いしたり、席を譲ってもらえないか声をかけることがあります。そんな時はご協力いただけるととても嬉しいです。
声がかからなければゆっくりと過ごしていただいて構いませんので、
どうぞごゆるりと。

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