伴田良輔監督『passacaglia 道』
人が当たり前のように見ている世界から、人の眼を外してしまったらどうなるか。草木や鳥や帽子や幾何学図形たちは人の眼に見られることをやめてはじめて、別のところにある生を、本来の生を生きはじめるだろう。それはときに、各々の生であると同時にすべてのものの生でもあり、そしてすべてのものの死でもある。生と死が、存在と不在が睦み合い、重なりたわむれながら、ついには同じものとなってしまう。
見る者もまた、映画の冒頭からすでに、それと気がつかず変容してしまっている。闇のなかで決壊しつつある壁の