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働く私たち 1

人物
森田ゆみ (26)営業事務
松田綾 (22)ゆみの後輩、新人
佐々木亮介 (34)ゆみの先輩、係長
瀬川敦 (26)ゆみと同期、営業
総務課員

○会社ビルの前
ガス機器のショールームが 一階にあり、 ガスコンロやガスストーブが並んでいる。

○会社内、ショールーム
ショールームのその奥の会議室内では課内ミーティングが行われており森田ゆみ (26)の横に松田綾 (22)が座っている。佐々木亮介 (34)や瀬川敦 (28)やその他同僚がおり各々のドリンクを持ち込んで打ち合わせをしている。
佐々木 「来月行われる秋のイベントで使う販
促品についてですが...」
綾 「販促品?」
ゆみ 「販促品はノベルティーって言うとわかりやすいかな。販売促進のためのグッズとかを指すよ」
佐々木 「サンプルが出来上がってきました。今年はチャッカマンかマッチかどちらかになります、どちらかいいと思いますか?えーっと...、松田さんどうかな?」
綾 「えっ...、その...、あの...」
机の上には社名の入ったチャッカマンとマッチの箱が机の上に並んでいる。
佐々木 「急だったかな。次のミーティングでどちらがいいか意見を聞きます。サンプルはこのミーティング後、みたい人は見てください。欲しい人は多少なら持って行ってもいいですよ。あと明日の避難訓練ですが、うちの部署は炊き出し訓練の係になっています。詳しくは総務から来ていたメールの指示に従ってください。以上」
会議に出席していた課員が退室し始める。 瀬川や数人がサンプルを手に取って見ている。佐々木の携帯が鳴る。
佐々木 「松田さん、あとでこのサンプル持ってきてくれる?」
綾 「わかりました」
退室する佐々木。
ゆみ 「次回までに松田さんなりの意見が言えたらそれでいいから、ね」
綾 「はい...、新人の私が他の方より先に意
見なんて言っていいのかなって思っちゃって」
ゆみ 「一番先って発言しにくいよね、でも意
見聞かれる時って思う以上にないから、次は言えるといいよね。明日の炊き出し訓練は松田さんは何の係?」
綾 「味噌汁です」
ゆみ 「私はおにぎり。会社に備蓄してある非
常食の入れ替えで毎年スープやお米を炊き出し訓練として社員に提供してるの。訓練で明日の通常業務はあまりできないからそのつもりでね」
綾 「はい」
瀬川 「販促でマッチっていつの時代だよな」
サンプルを見ている同僚に話している瀬川を見るゆみと綾。
ゆみ 「うちはガス機器を扱ってるでしょ。だ
からマッチやチャッカマンが販促品の候補として作られたんだと思うよ」
綾に説明するゆみ。
瀬川 「チャッカマンはともかくマッチはない だろう、チャッカマンで決まりだな。ミーティング出てない先輩の分でマッチとチャッカマン一応もらってくなー」
作業服のポケットに入れ退室する瀬川。 綾とゆみ、机に広がったマッチなどを箱に片付けるためサンプルの近くに自分の飲み物や荷物を置き片付け始める。
綾「確かに私マッチ使ったことありません」
ゆみ 「今までに一度も?」
綾 「はい」
ゆみ 「ひゃー。でも私も久しぶりに見たわ。
日常生活にはあまり必要ないかもしれないけど、アウトドアとか避難グッズには必需品だから。貰えると嬉しいよね」
綾は遠くのサンプルに手を伸ばし、自
分の水筒を倒す。
綾「あ ! 」
水筒の中の飲み物でサンプルがぬれる。
ゆみ 「大丈夫?」
綾 「すいません、マッチが水浸しに...」
すくいあげたマッチから水が垂れている。
ゆみ 「そうだね、佐々木さんに持ってくの、
私も行くよ」
申し訳なさそうにうなづく綾。

2に続く

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