ビジョンとともに働くということ 山口周×中川淳
ビジョン、パーパース、ミッション、さまざまな言葉で表現されているが、これらは、企業のありたい姿、あるいは個人のありたい姿、成し遂げたいことを指す際に使われる。
現企業の事業部長の仕事として、
「ビジョンを定める」というものがあった。
半年間の期間を経て、外部の専門家とのやりとりを重ね、
事業のビジョンを定められた。
定着度合いや、その意義が、事業にどう反映されるのか、
結果はまだ先であるが、
大企業でもベンチャー企業でも、今や伝統の長い中小企業でも、
「うちも、ビジョン設定する必要があるの?」
など考えている上層や担当者も少なくない。
そこで元外資系コンサルタントで現独立研究家の山口周さんと、中川政七商店社長の中川淳さんの対談を書いた本書を読んだ。
2人の考える「ビジョン」や、実際に中川政七商店社にどうビジョンを浸透させたのかなどの詳細なストーリー、良いビジョンとそうでないビジョンなど、考察が深まる内容がいくつも書いてあるが、
その中で特に3つに絞って、考えたことをまとめる。
1問題の希少化
2「生きがい」を求めている
3「ありたい姿」をどう設定するか
1「問題の希少化」について
戦後、問題が過剰に溢れていた。
子供でも「今の日本の課題は何か?」と問われたら即答できたであろう。しかしながら、白物家電なる神器が整い、コンピュータや自動車なども安価になり「今の問題は何?」という問題に答えにくくなっている。
もちろん、外に目を向けてみると、問題はいくらでも存在する。
しかし、自分ごとで考える、マズローの5段階欲求における土台となる欲求を損なう問題は希少化している。
そのため、よく言われる「問題発見力」が必要だと言われる社会になっている。
実際に働いていても、本質的な課題の特定や、問題の特定は、そう簡単ではない。
短期的な財務目標に対して、どのようにアプローチするか?
という点については、いわゆるロジカルシンキングやクリティカルシンキングでアプローチすることで一定の課題が見つかり、打ち手も考えられる。
しかし、ここで述べられている「問題」は、
短期財務目標に対する、現時点の状態の差分を指すのではなく、
中長期的な企業の「ありたい姿」を指している。
このありたい姿を設定する力が、
人依存的なプロセスだからこそ、AI時代において重要視されている。
元々私は高校教員の仕事をしていたが、
学習指導要領という学校教育のいわばありたい姿を示している、
冒頭の項目にも、これからの時代を見据えて、どのスタンスや能力を伸ばしていくと良いか?という点については言及されていた。
実際は、現場ではそれを単なる「問題解決力」の育成と捉えている部分が多く、今本当の意味で求められている「ありたい姿の設定」という意味で捉えている教員は少ない。
勿論、生徒の適性や能力により、全員にその能力開発を求めるわけではないが、「適正に応じて、この世界の文脈から、今この能力が求められている」ということを念頭においた教育活動がなされている現場はあまりにも少ない。
このような「問題が希少化」している現代において、何を課題として設定するのか?というセンスが問われていることが面白い。
2「生きがいを求めている」について
問題が希少化している中で、世界がこのように「生きがい」を求めている傾向にあることにふれている。
生きがいは、仕事の中であってもプライベートの趣味の時間であっても、見出すことができることであるが、大義的な目標が見出せていないというのが実情なのであると思う。
あそびの領域における国内の市場は実際に伸びている。
•レジャー市場: 矢野経済研究所によると、2022年度の日本のレジャー市場は約59兆円で、前年比で約4.8%の増加が見込まれていた。
•国内観光市場: 観光庁によると、2022年の国内観光消費額は約22兆円で、前年比で約20%の増加が見込まれていた。
•デジタルエンターテイメント市場: 一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)による2023年の報告では、日本のデジタルゲーム市場は約2.5兆円で、前年比約7%の成長が見込まれていた。
Withコロナにより増加した背景もあると思うが、
エンタメ市場、レジャー市場ともに、少子高齢化時代において、
国内の需要が伸びている事実がある。
地元のフットサルイベントも毎回、若者を中心に満員の状態であるし、集客に苦戦している様子はない。
これまでの「どう苦しい状態から脱却するか≒役に立つものを作るか」から、
「どう人々の生きがいを提供する場をつくるか」
というテーマにシフトしていく必要がある。
これは、製品やサービスの開発だけでなく、人材の中長期定着、など、HRの領域においても重要な視点である。ウェルビーイングの学習がHR界隈の中で進められていることからも
「生きがい」をどうつくるかというテーマはかなり注目かなり注目されていることが分かる。
3「ありたい姿」をどう設定するかについて
ざっくりであるが、このような会話がなされていた。
ありたい姿を設定するためには、
漠然と考えるのではなく、幼少期の関心に立ち戻って、
関心の理由を考える、という方法があるようだ。
このように幼少期の自分から、自己を内省する方法を「インナーチャイルドワーク」というようだ。
本書からの引用ではないが、
「自己理解」や「自己成長」を促す手法として、専門的手法の一つであるという。
自分のありたい姿は何なのか?
これは、人生100年時代に、ほとんどの人がぶつかる壁になると思う。
国内の企業寿命が短くなり、健康寿命が伸びるのであれば、
自分はどういうところで、何を優先して、どういう生き方をしたいのか?ということを嫌でも考える場面がくる。
その際の一つの手法として、幼少期の自分の体験から、自己理解し、ありたい姿を考えるということは、有効なアクションであると思い、ここに示した。
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