働くに幸せを。労働の歴史から考える。
「働く幸せ」をテーマに最近考えている。
自分の友人が「働くに幸せはない。労働は苦役。」と言い切っている。それはそれで面白いのだが、調べるとそれは、少し前にマルクスがそうなることを明確に示唆していた。
しかしながら調べてみると、
資本主義が主流となる少し前は
「労働が楽しい」と考えていた人もいたようだ。
おそらく今も、労働を楽しいと感じている人と、労働はしんどいと感じている人、またはその両方を行き来している人がいると思う。
これまで労働についていくつもの思想家や研究者が意見をあげてきていて面白いので、それをまとめた。何度見ても面白いなと思う。
労働の歴史 アリストテレスから現代まで
労働の喜びというテーマは、歴史を通じて多様な視点で語られてきました。ここでは、その背景をいくつかの時代や思想に沿って整理します。
1. 古代の労働観
古代ギリシャやローマの社会では、労働は基本的に「必要悪」とみなされていました。特に手を使った肉体労働は奴隷や下層民のものとされ、自由な市民は学問や政治に従事することが理想とされていました。例えば、**アリストテレス**は『ニコマコス倫理学』の中で、労働は市民が徳を追求するのを妨げると述べています。
しかし、同時に一部の哲学者や思想家は、労働そのものに価値を見出す視点も持っていました。例えば、**ヘシオドス**は『仕事と日』の中で、労働を美徳として称賛し、人々が生産的であることが社会の安定に寄与すると述べています。
2. 宗教的視点
労働の喜びに対するポジティブな視点が特に強調されるのは、キリスト教の影響が強い時代です。**プロテスタントの労働観**は、特に労働の喜びを大きく捉えています。宗教改革を通じて生まれた**マックス・ウェーバー**の『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』では、プロテスタントが労働を神聖な使命(召命)と捉え、世俗的な成功が神の恩寵を示すものとされました。これは労働に対する肯定的な見方を強化し、資本主義の発展に大きく影響を与えたと言われています。
カトリックでも労働は高く評価され、例えば、**聖ベネディクトの修道士規則**では、「祈り、そして働け(ora et labora)」という精神が労働を信仰生活の一環として捉えています。
3. 近代の労働観
産業革命を経て労働の意味は大きく変わります。労働者階級が台頭し、工場労働が拡大する中で、労働の質や条件に関する議論が活発になりました。**カール・マルクス**は『資本論』で、労働の疎外について批判し、資本主義の下で労働者が自分の労働の成果から切り離される状況を問題視しました。彼の視点からは、労働が喜びであるためには、それが自己実現や創造的活動である必要があるとされます。
一方で、19世紀末から20世紀初頭にかけての労働運動や社会主義の台頭によって、労働条件の改善や社会的な労働の価値が見直され、労働者の生活の向上が求められました。労働はただの手段ではなく、個人の誇りや充実感をもたらすものとして捉えられるようになります。
4. 現代の労働観
現代においても労働の喜びは議論の的です。**心理学**の分野では、労働における喜びや満足感は「フロー体験」に関連するとされています。**ミハイ・チクセントミハイ**が提唱した「フロー理論」は、個人が没頭し、挑戦的でスキルを必要とする活動に対して高い集中力を発揮することで、労働に喜びを見出すことができると説明しています。
また、現代のキャリア理論やモチベーション理論でも、**ダニエル・ピンク**の『モチベーション3.0』では、自律性、習熟度、目的が労働の喜びに必要不可欠な要素として挙げられています。現代社会では、自己実現や社会への貢献が労働における満足感の大きな要素とされており、物質的な報酬だけでなく、精神的な充足感が重視されます。
これをみると、
1.哲学者「労働はやめよーぜ!」
2.聖職者「労働は善いものだ。」
3.職人「まじでおもしろいかも。」
4.経済学者「資本主義の労働は苦役」
5.最近「ある条件がそろえば楽しいぜ!」
という変遷が見える。
ちなみに、マルクスの思想が面白かったので、より詳しくみるとこんな感じ。
生産性を追い求めすぎて、
個人の働く喜びは度外視され、
何をやっているかわからないけれど指示されたことをやっていれば賃金をもらえる、
という状態になった。
今もそのように「働くと喜び」を全く阻害して考えている人はいるだろう。
でも今はミハイ・チクセントミハイやダニエル・ピンク氏らが労働と喜びについての定量的な研究をしているから、文献を辿ってさらに調べたいと思う。
前回書いた記事とも関連してGDPが上がらないからこそ、より多くを稼ぐではなく、より豊かに生きるにはという題がリアルに重要になっていると考えている。
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