9月に読んだ本(と観劇記録)

はやみねかおる『怪盗クイーン モナコの決戦 -アナミナティの祝祭・後編-』
クイーンはやっぱり、私たちのヒーローだからなぁ……、大好きなんだなぁ……って思った。
あとがきによると、まだまだシリーズ続くみたいで嬉しい。小学生の頃から読み続けていると思うと感慨深い。クイーンとジョーカーの関係性が毎回良い。ヤウズの変化も好き。
今回は温泉卓球のくだりでピンポンのオマージュが出てきて(ウェンガがスマイルとペコの卓球の音を聞くやつ)、2年前に実写のピンポンをみんなで見たのを思い出した。窪塚洋介のペコがめちゃくちゃにいい。

水木しげる『ほんまにオレはアホやろか』
はじめに、の「自分が興味を持ったことというのは、くだらんものでも価値があるものだ。」が良い。嬉しい。
タイトル聞いたことあるから読んでみるか、程度に読んだけど面白かった。ざっくりとした水木しげるの人生を追ってく形。水木しげるが紙芝居や貸本漫画を描いていたの全然知らなかった。

川上弘美『ゆっくりとさよならをとなえる』
空前の川上弘美ブーム(わたしの中で)。図書館に行くたびに川上弘美の本が置いてあるあたりをうろうろして、適当に借りている。今回はエッセイ。
なんとなく、小説の時より文体に意識がいく。美人がしな作ってるみたいなしっとりした文章でぽーっとしながら読める。「知りそめた」って使っているところがあるけど、初めるの表現とか「まだあげそめし前髪の」でしかみたことなかったよ、現代で使う人いるんだ!と思った。たおやかなんだけど、全体的にどこかがさつさみたいなものもあって好き。

桜庭一樹『傷痕』
マイケルジャクソンが日本人だったら、みたいなファンタジー。話の中でマイケルに当たる人は、スーパースターとしか呼ばれず名前は明かされないが、兄弟構成やネバーランドについてなど、スーパースターの造形はほぼほぼ史実に沿って描かれている(参考文献がマイケルだらけだった)。
そこまでの現実を基にしながら、確実にフィクションであるという、現実とフィクションのキメラみたいな物語を描けるのが桜庭一樹らしい。
6部構成なのだけど、1部目の語りが一番、わたしの知ってる桜庭一樹だった(女性視点の方がいいな、とはちょっと思う)。

キズアト、と呼ぶ声の、幸福そうな響き。
はい、パパ、と答えるときの、喜びでちくちくするほどの、熱。

こういうところが、ねっとりとしていて、桜庭一樹だなと思う。熱の前に読点を入れるようなところ。
本編自体を読みながら、マイケルジャクソンの現実なのに現実にあらざるような猛烈な存在を小説に描きたい、という気持ちめちゃくちゃわかるな……と思った。
わたしも、マイケルがライブでゆっくりと視線を移すだけで、金切り声をあげて失神する人をみて、なんでこの時代に生きていなかったのかなぁ…って思ったし、こんな人はもうこの世に現れないんだろうな…って思ったなぁ、と振り返った。
ああいうありえないようなものがこの世に存在する瞬間に、存在していてみたい。

赤坂憲雄『岡本太郎という思想』
途中まで読んでたんだけど、だんだん上の空になって文字の上を目が滑ってしまう感じになって、読むのをやめてしまった。一応パラパラっと最後まで目は通した。
この間太陽の塔を見て、岡本太郎のことを知りたくなったからなんとなく借りてみたけど、岡本太郎が自分で書いたものを読む方が良さそう。次は岡本太郎の著作を読もうと思う。

クォン・ヨソン『春の宵』
短編集。まだ韓国文学が2冊目なので、これが韓国文学の持つ雰囲気なのか、どうかわからないけれどハン・ガンの『菜食主義者』を読んだ時と同じような感覚がある。くったりと疲れ切った雰囲気。人間関係に対する穏やかな諦め、みたいな雰囲気が漂っている。あと家族にまつわるしがらみについての言及も多い。
あと、映画とかでもおもうけど、韓国ってやっぱり寒いんだなとおもう。なんとなくその場所に身を置く空気感のようなものが読むことによって形成されていくので面白い。食べ物とお酒の飲み合わせについてもよく描かれていて、焼酎をけっこう飲むんだな、と思った。
「逆光」が一番好き。物事を思い出しながら進む、時間軸がふにゃふにゃの話が多くて、ぼーっとする感じだった。人称や語る主体の入れ替わりも激しいので夢みたい。

「ニュクス」2015年2月号
秋卒業の友達に会いに大学に行った時に、ソオダ水(古本屋)で買った。大学の友達と話しながら、うわ、思考する能力落ちてる気がする……! と思ったので買って読むことにした。第一特集はドイツ観念論と理性の復権、第二特集は恋愛論だったけど、第一特集のドイツ観念論とは、的な序文と第二特集をいくつかかいつまんだくらいで、買ったやつだしまたそのうち読もうって、結局放置した。

岡本太郎『今日の芸術』
『岡本太郎という思想』の読んだ内容が、案外補助になった。
アヴァンギャルド芸術って、写真技術の登場とか絵画技法が完成されちゃったとか、絵画の行き詰まりから思想面での強化を経て生まれたイメージだったけど、宮廷お抱えの限られた芸術から一般人の芸術へ、って流れの上に乗せて語るんだなぁと思った。毎朝「明日の神話」の前通っているけど、パブリックアートへの取り組みが熱心だったっていうのはそういうことか〜、と納得する。みるだけじゃなくて、全ての人が描くべき、とも言っていて、岡本太郎がアウトサイダーアートとかに言及していたら面白そうだから読みたいと思った。
それとは別に、もっとモンパルナスに居た頃のこと知りたいなと思ったので『画文集アヴァンギャルド』とか『黒い太陽』読もうかなと思う。

堀江敏幸 角田光代『私的読書録』
dancyuの連載、食にまつわる書評エッセイが詰まっている。前に、食エッセイについて書いたnoteにも書いた。つまみ読みしがちなので通して読むことにした。
角田光代が『海辺のカフカ』は読むたびに感想が変わる、と書いていて私も2度目読むかな〜〜という気分になった。1度目は小学6年だか、中学1年だかの時で、ただただ意味がわからないしエロいという感想でしかなかったので、絶対に違う感想になるだろうなという確信があって、気になる。でもちょっと落ち込みそう。

川上弘美『ハヅキさんのこと』
「かすみ草」が良かった。表題の「ハヅキさんのこと」読みながら、川上弘美、教員だったんだもんなぁと思った。『ざらざら』の方が好きだったけど、年齢の問題な気がした。もう少し歳をとったら、もっと好きになりそう。

観劇記録
あひるなんちゃら「シュカシュカ」
9月14日お昼の回。
友達が出ているので観に行った。前説のゆるい雰囲気からしてめちゃめちゃに良くて、始終笑える感じで、また、あひるなんちゃらさんのやつみにいこ〜〜となった。楽しい。

「えんげきのたいばん」
感想はここに。
これもめちゃ笑った。

Pityman「ばしょ」
9月23日昼の回。新宿眼科画廊って、名前がずっと気になっていたけど始めて新宿眼科画廊で観た。いいところだった。
ばしょ、のタイトル通りのテーマで、良い会話劇だった。サングラスをかけると外国人になる仕組み、面白かった。

シラカン「蜜をそ削ぐ」
9月28日(土)14:00〜の回
これを観に行く前の日ごく近しい人のうち複数人が選挙に行ったことがないって言っていて、結構じわじわ辛い気持ちになっていた(その人たちが好きな人たちなだけに)ところにこの作品はめちゃめちゃキマった。へとへとのぼろぼろになった。すごく面白かったし、タイミングがバチバチに合っていたので色々考えたことをnoteに書いた
その中にも書いたけど、無責任な大丈夫を連呼するキャラクターがいて、『天気の子』の大丈夫が批判されてるのってこれを想定してるよな〜と思いながら、この作品の大丈夫と『天気の子』の希望に満ちた大丈夫(と、私は捉えてる)は何が違うんだろうな〜とぼんやり考えた。

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