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谷川俊太郎展

谷川俊太郎展に行ってきました。とてもよかったです。
詩の良さって、言葉を尽くして語れば語るほど、無駄な言葉を重ねている気がするのでなかなか人に伝えられないですが、この展示には詩の良いところが凝縮されてました。ここに連れてくるのが、詩の素晴らしさを伝える最適な方法ってくらいよかったです。
あと、谷川さんのちょっとした天邪鬼な性格とか考え方がよくわかる、茶目っ気のある展示でした。
以下、ネタバレと感想をつらつらと書いていきます。

展示の構成としては、音を強調した部屋と、詩がにょきにょきと生えた部屋と、「ではまた」という挨拶が書かれた部屋の3つ。年表もありました。

入ってすぐに四方にモニターがずらりと並んだ真っ暗な部屋。「かっぱ」と「いるか」と「ここ」が順番にモニターの色と文字と、読む声と効果音とで表現される。色々な方向からリズム感良く色と文字と音が流れ込んできて、詩に溺れるような感覚に陥る。
授業中に教科書に載っている詩をじっくり読んでいる感覚に似ているなと思った。気になるところを繰り返し頭の中で口ずさんだり、1つ1つの言葉をじっくりなぞって咀嚼したりしているうちに、授業で何をしているかわからないくらいどっぷりと詩の中に浸かった時のような感覚だった。
その部屋を抜けると詩が展示してある。谷川俊太郎の詩って、声に出して読む心地よさがあるよなぁ…と再認識した。

次の部屋がこの部屋。

それぞれのにょきにょきにはテーマがあり、この写真から見えるように詩から抜粋された1行と、テーマに合わせたモノと、谷川氏の一言と、1つの詩がそのテーマに合わせて展示してある。
それぞれが少しずつすれ違うように調和していて、この裏側にある谷川氏の気の抜けたような一言が、入り口側から見たかっこいい見た目のギャップと相まって面白い。

手書きだし、マスキングテープのようなもので無造作に貼られているのがよかった。
谷川氏の写った写真が展示されている横に「写真は撮られるより撮る方がいい。」なんて貼ってあって、そういう矛盾が楽しかった。
ほんとうに、見るものが多くて、1つ1つ読み応えがあって、面白い。ちなみに、テーマに沿って展示してある詩は大きな本に印刷され、展示されている。文字が活版みたいで良い。

これは、家族というテーマのところに置いてあった「アンパン」という詩で、谷川氏の父について語られている。この展示の中で1番好きかも、とおもった(カルテットみたい)。

そして最後の部屋にはお別れの言葉に変えてか、詩が1つ壁に書いてある。

この詩の冒頭は

言葉の町並みを抜けると
詩の雑木林だった
木立の彼方に沈黙の海が見える

青空の高さには及ばないとしても
この閉じられた白い空間も
限りない宇宙へと背伸びする

という内容で、これはまさに、1部屋目が言葉の町並み、2部屋目は雑木林であり、鑑賞者の辿ってきた道が詩として描かれている。白い空間もまさにこれを読みながらいる空間だ。読み進めて行くとその空間はみるみる広がり、未来に繋がっていく。

言葉や詩に囲まれ、詩の中に没入して行くことのできる展示で、今までにない詩の経験だった。
帰りに詩集を買って帰りました。すごくよかったです。

#谷川俊太郎展 #谷川俊太郎 #エッセイ #感想 #東京オペラシティ

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