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すたれたテクノロジーはロマンスになる

技術革新にのりおくれ、廃れてしまった技術の行く末について。

すたれたテクノロジーにも、いくつか生存戦略があります。

馬も、刀剣も、手紙も、焚き火も、手織りの布も、テクノロジーとしては時代遅れの技術です。それでも、これらの技術は存続し、現在でも(小規模ながら)産業としての規模を維持しています。

第一線をしりぞいたを終えたテクノロジー(あるいはサービス、モノ、ブランド)には、以下の5つの生存戦略があるように思われます。

すたれた技術の生存戦略
1. 高齢者向けの製品となる
2. 懐古主義製品となる
3. エンターテイメントとなる
4. 儀礼化する
5. 所属の可視化ツールとなる


高齢者向け・衰退産業の製品となる

ユーザーとともに年をとり穏やかに消える。高齢者向け製品へのシフトは、もっとも消極的かつ妥当なアプローチです。

高齢者用にあえてガラケーやファックスを残したり。遅滞戦略の典型的な例でしょう。ファッションや雑誌といった分野でも、同様の傾向がみられます。

時代の変遷についていけないユーザーは、常に一定数生まれます。時間を稼ぎながらソフトランディングを行い、次のテクノロジー開発を試みることになります。一方で、高齢者向け戦略には、将来の伸び代があまりありません。世代交代につれて、マーケットは縮小を続けるからです。

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懐古主義製品になる

懐古主義化は、古いことを価値するアプローチです。レトロカーやレトロゲームの人気は、この懐古主義に該当します。

現在の資本主義、技術進歩のなかで、失われてしまったものにこそ価値がある」これが、懐古主義製品の基本メッセージです。このポジショニングにより、欠点であった性能や生産性が、勝負のポイントではなくなります。

懐古主義アプローチをとる製品は、見かけや挙動にあからさまなレトロチックさ、アイコン性が求めらられがちです。

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エンターテイメントとなる

エンターテイメント化は、身体性や非日常性を価値に変換するアプローチです。焚き火や野宿は、テクノロジーとしては価値を失いましたが、エンターテイメントとしては人気を集めています。

エンターテイメント化では、面倒であることを「やりがい」や「特別性」にすりかえるアプローチが求められます。

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儀礼化する

儀礼化は、生産性の悪さを価値に変換するアプローチです。達筆な手書きの私信に、なぜ価値があるのでしょうか?

それは、生産性の低い手段の採用が、メッセージとして機能するからです。非生産的アプローチは、「これほど手間暇をかけているのは、あなたに敬意や愛情を持っているからです」という非言語メッセージを発します。

直接に出向いてお詫びをする、手作りでプレゼントをする、手順や作法を踏まえてお茶を提供する。わざわざ生産性やコスト対効果が低い手段を用いて、相手に対応する…という行為は、暗黙裡に「相手を(コストを度外視できるほど)重く見ている」という意思表示となります。

儀礼化する方向に進化をしたテクノロジー / 産業は、あえて高コスト構造を追求し差別化を測ります。経済合理性のない作法を多く作るほど、このテクノロジーは「特別なとき、特別な人にだけ提供するもの」というポジショニングを得ます。

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所属の可視化ツールとなる

地位財とは、他人との比較により満足感を得られるプロダクト。一般的に、社会の階層や所属グループを可視化するモノです。しばしば儀礼化やレトロ化とも重なります。

ネクタイや革靴などは、このカテゴリーに属するでしょう。具体的な機能のないネクタイが今でも用いられるのは、それがサラリーマンという社会階層に所属していることを、可視化するツールだからです。

このようなアプローチは、主にファッションで採用されます。どのような格好をするかは、どのような社会階層に属するか、どのようなイデオロギーに属するかの可視化でもあります。このため、実務的な機能を超えて、古いモノが残りやすい傾向があります。

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まとめ

テクノロジーやモノは、旬の時期をすぎてもすぐに消え去るわけではありません。

古いこと、機能が劣後することを、どうやって魅力的なロマンスにするか。

メインストリームからははずれてしまうかもしれませんが…一歩軸をずらせば、さまざまな生き残りのチャンスがあります。

すたれた技術の生存戦略
1. 高齢者向けの製品となる
2. 懐古主義製品となる
3. エンターテイメントとなる
4. 儀礼化する
5. 所属の可視化ツールとなる

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