見出し画像

争って勝つことはスマートじゃない

中国の兵法書、孫子はとても面白い本です。

もともと兵法書は、戦争に勝つための教科書です。ところが孫子では、「戦争はやらないほうがよいよ」という言葉が、何度も繰り返し語られます。

そもそも書の冒頭から、「戦争すると死んだり国がなくなっちゃうかもしれないし、お金もすごいかかるから、気軽にやっちゃだめだよ」ではじまりまるほど。だいぶ異端の兵法書なんです。

さらに言えば、孫子では勝利すら否定します。「100戦100勝することは、最善の手段じゃないよ」とか平気で書いてある。普通に考えれば、勝ちって重要ですよね?なぜでしょうか。


戦わない勝利こそスマート

孫子にいわせれば「100戦100勝」など、100回も争いをしてる時点で、だいぶダメなのです。そもそも下手だから、100回も争いをしている。

仲良くやるのに失敗し、棲み分けるのに失敗し、中立を維持するのに失敗し、従わせるのに失敗し、ビビらせるのに失敗し、やる気を無くさせるのにも失敗し、命乞いにも失敗し…そうやって、あらゆることに失敗して、最後にいきつくのが戦争というわけです。

だから戦争をして勝っても、それは夏休みの宿題を8月31日ギリギリに終わらせたようなもの。まったく自慢できることではないのですね。


まずは協調戦略

スタートアップやビジネスでも、これは同じことです。企業間で何年も何百億もかけて殴り合う状態は、望ましいものではありません。

企業間競争でよくあるミスは、本来なら棲み分けられたはずの場所で、お互いにミート(コピー)しあって、両者で無限にコストを積み上げてしまうことです。どうでもいい機能を全社横並びでサポートし、コストだけが跳ね上がる一方で、今更だれも引けなくなる…というのは、日本製のプロダクトではよく起きることです。クーポンやポイント還元も、全員がはじめてしまえば、それは単なるコストになり下がります。

マーケットの拡大で共同戦線を貼る
まだ市場が育っていない状態では、お互いに潰しあう意味はありません。お互いの施策をコピーしあったり、潰しあうよりも、市場そのものの拡大を共同に行うのが正解です。そうすれば、両者の開発やマーケティングコストが最小化しつつ、後発プレイヤーへの優位性を確保できます。

お互いの強みを棲み分ける
同様に市場が飽和していない場合、顧客の需要や価格帯などで住み分けができます。こちらも、市場が飽和するまでは、棲み分けたまま両者争わずにグロースするほうが、コストをかけずに成長できます。市場飽和の後も、争うよりは買収合併するほうが、よほど建設的です。


対話のチャンネルをつねに維持しよう

このように争わずに成長をするためには、外交チャンネルをしっかり持ち、メッセージを出し続けることが、とても重要です。

ドラフト型のカードゲームでは、上級者はリプリゼントといって、「自分はこっち進むから棲み分けよう」というメッセージを出すこと、受け取れることが重要になってきます。

競合同士であっても、トップレベルで、コミュニケーションのチャンネルを持つことは非常に重要となります。コミュニケーションのチャンネルがないと、ちょっとした意思疎通の行き違いから、容易に全面戦争に発展してしまいます。各国が敵国であっても大使館を設置するのも、これが理由です。

世界史もそうですが、内戦ばかりしている国はたいして成長しません。国際平和が保たれた環境で、競争はあれど戦争はない…といった状態が、もっとも人類を成長させています。


そんなわけで、noteも現状は特にどっかと、バチバチと争う必要はないかなと思います。むしろ大事なことは、共同戦線を張れる仲間を増やしていくことです。各自、いろんな会社と仲良しになってください。

インターネット上でのクリエイティヴを拡大する仲間。テキストによる情報発信を盛り上げる仲間。キャンペーンやイベントで連携できる仲間。そういった仲間をドンドンと増やしていきましょう。

「よいインターネットを拡大する」ということを、みんなでやる。そうすれば、各プレイヤーそれほど争わずとも、みんなハッピーになれるはずです。争いにコストを使うのもったいない。

まとめ
・争いは外交が全部失敗した状態。勝ってもスマートではない。
・可能な限り、協調戦略や同盟関係を構築するほうがよい。
・周辺プレイヤーとは、意思疎通のチャンネルを維持する


この記事が参加している募集

オープン社内報

いただいたサポートは、コロナでオフィスいけてないので、コロナあけにnoteチームにピザおごったり、サービス設計の参考書籍代にします。