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「箱」と外向き思考(その2) 「箱」とは何か?

よりよい人間関係を築くとともに、組織やチームの成果を高めることができる考え方である「『箱』と外向き思考」について書いています。
「『箱』と外向き思考」は、アメリカの Arbinger Institute という機関が生み出した考え方で、今では世界中の国で、自己啓発や組織開発に用いられています。日本では、福岡に本社を構えているアービンジャー・インスティチュート・ジャパン株式会社が日本の総代理店としてセミナーやコンサルティングを提供しています。弊社は、アービンジャー・インスティチュート・ジャパン株式会社の代理店として、その普及に努めています。


今回は、「箱」とは何か、ということについて、少し詳しく書いていきます。

「箱」というのは、私たちが誰しも陥ってしまう、困った心の状態を表す言葉です。

対人関係でうまくいかないとき、その原因は相手ではなく自分にあります。
でも、私たちはそのことになかなか気づくことができません。悪いのは相手であり、自分は全く悪くないと信じ込んでいるのです。信じ込んでいるから、なかなかその状態から脱することができない、そのような状態にあることを「箱に入っている」と表します。

具体的な例で説明しましょう。
私には妻と二人の娘がいます。長女は既に就職して一人暮らしをしているので、今は妻と次女と三人で暮らしています。
ある日、私は取引先との会食を終えて夜の10時くらいに帰宅しました。
リビングで妻と次女がテレビを見ながらくつろいでいます。
ふと見ると、台所のシンクには夕食の食器や鍋などがまだ洗われていない状態で放置されています。
これを見て私は、
「ああ、妻は昼間のパートの仕事から戻って、夕食を作ったんだな。次女と一緒に食事を終えて、やっと一息ついているんだな。この食器、自分が洗ってあげたら、妻はそのまま好きなテレビを見続けられるし、少しは楽に過ごせるだろうな。」
と思いました。

が、思っただけで、私は食器を洗わなかったのです。
さて、この後、どうなったと思いますか?

私は、心の中で妻を責め始めたのです。
「夕食後にすぐに食器を洗わないなんて、だらしないな」
「テレビを見ながらゲラゲラ笑って、品がない」
「食器を放置してあるのは、俺に洗わせたいと思っているに違いない」
「ずる賢い奴だ」
「まったく、困った妻だ」

一方で、自分自身のことを実際以上に高く評価し始めたのです。
「疲れているのに食器を洗おうとするなんて、なんとよい夫なのだろう」
「今日も一日精いっぱい働いた。もうクタクタだ。」
「自分ほど世のため人のために尽くしている人はいない」
「いつも、積極的に家事をやっている」
「今日ぐらいは見て見ぬ振りをしてもいいだろう」

そして、私は風呂を沸かし、自分の荷物を片付け、翌日の仕事に持っていくものを整え、風呂に入り、風呂上りのストレッチを行い、届いていた郵便物に目を通し、などなど、普段通りに過ごしていました。
しかし、この間ずっと、私の心はイライラしているのです。
心の中で妻を責め、自分を擁護しているのです。
この状態のことを、アービンジャーでは「箱に入っている」と呼んでいるのです。

よく考えてみてください。
私が最初に「食器を洗おうかな」と思ったとき、私は妻のことを責めていたでしょうか?
責めていませんでした。むしろ、妻のことを労る気持ちを持っていました。

ところが、「食器を洗わない」という選択をした後、自分の選択を正当化するために妻のことを責め始めているのです。
恐ろしいことに、それが無意識に行われているのです。

私たちは常々、「誰かのために何かをしたい」と思うことがあります。
しかし、それをしないことがあります。
これを、「自己裏切り」と言います。

「自己裏切り」をすると、そのことを正当化したくなります。自分の良心を裏切った自分を正当化するために、相手のことを必要以上に悪く思い、自分のことを実際以上に高く評価するように見始めるのです。
これを、「自己欺瞞」と言います。
欺瞞、すなわち騙されているということです。自分で自分のことを騙しているのです。

この「自己欺瞞」こそが、「箱」です。
そして、「自己裏切りをして自己欺瞞の状態に陥る」ことを、「箱に入る」と表現しているのです。

いかがでしたでしょうか?

さて、人は「箱」に入ると、相手のことを人ではなく物として見るうようになってしまいます。
相手を物として見るとは、いったいどういうことでしょうか?
それについては、次回、詳しく説明したいと思います。お楽しみに!

株式会社F&Lアソシエイツ
代表取締役 大竹哲郎
https://www.fl-a.co.jp/


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