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嘆き全集

12
短編小説集
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#超短編小説

嘆き 短編集1

嘆き 短編集1

所業

私は自らの堕落や私欲による悪業によって報いを受けていることを自覚している。しかし、他の人間が善良故に豊かな生活を送っているとも到底思えない。

仏滅

屠殺される雌牛のような胴間声をあげる妊婦の肉体を張り裂き、大きな肉塊がその頭を突き出す。私は助産師と共に、分娩台の上で血塗れで痙攣するその肉叢にいかめしい喝采を浴びせる。針金のような硬い髪を持つ医師が宣告する。

「おめでとうございます。立

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頭脳労働

私は肥大した脳の前頭葉あたりを狙う。先端が斜め切りされた鋭利なストローをゆっくりと差し込み、口から吐き出された介護食のような、固形とも液状ともいえないそれをチュウチュウと赤子のように啜る。

数年も経つと脳汁は枯渇してしまう。身体から切り離されているからだ。小脳は梅干しのように縮み上がり、大体の部分はその皮質だけを残し、空気の抜けた風船のように萎んでいる。私はわびしい切迫感に駆られて脳の中を弄り、

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