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嘆き全集

12
短編小説集
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2023年2月の記事一覧

加害

錆びれた手間包丁を強く握りしめている。

目の前に積まれた亡骸を前に、傍ら寂しくすすり泣くばかりだ。

言葉にならない寂寞な思いを叫び、大切な存在を慈悲もなく奪った天を責める。

しかしまだ私は、自分の犯した徒疎かな罪を知らない。

哀愁の楽園

哀愁の楽園

私は荒々しい色を絢爛と浴びせる白練の砂浜の上に立っている。心地よい海風が頬を撫で、私に僅かな微笑みを授けてくれる。

遠くの湾曲した砂浜に見える、一切の汚れがない月白に輝く灯台の元へ向かう。しばらく歩くと、屹立するその灯台と白練色の砂浜をわずかに区切る、大きな岩に腰掛けた人影が映る。私がかつて何処かで交友を結んだ、愛する友人達の姿だ。

静かに談笑をしながら明鏡止水の大海を眺める仲間の元へゆく。

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