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超短編集

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#超短編小説

病院にて

もう二度と元に戻らない状態になってしまったことに絶望するが、同時にその苦しみにも安堵している。もうこれで本当に私は諦めることができるのだ。これから実ると信じていた様々な淡い希望が頭から離れていき、私はゆっくりと意識を失う。

目が覚めると、薄汚れた天井と私を覗き込む医師が視界に入る。不幸にも、仲間の懸命な処置で私は一命を取り留めてしまったのだ。またこれから起こるであろう数々の苦難を想像して、私は気

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自我を駅の便所に置いてきてしまったような気がする。

私は今、自分が何者なのか分からない。

私の中の私が何処かへ出掛けたまま行方がわからなくなり、取り残された私は、私が不在故にあらゆる判断がくだせなくなる。

身体の細胞の全てが、時間をかけて入れ替わる。精神もどこかで交換されたのか、自分が何者か完全に分からなくなった。