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#adtechtokyo 高広氏による「コンテクストプランニングによるマーケティング」概論まとめ

どうも、フクパンマンです。

ad:techTokyoの参加レポート第三弾です。スケダチ高広さんによる"context"という言葉を紐解きながら、その概念をマーケティングや広告、PRの中でどのように使うことができるのか?を明らかにするセッションです。

コミュニケーションプランニング、コンテクストプランニングについては高広さんが2012年にまとめた本があるとおり昔から存在していた概念です。私自身不勉強でお恥ずかしいですが今回のセッションでその重要性を認識しました。

今も昔も変わらない、むしろナラティブが必要になってきた今だからこそ重要なプランニング技法です。

最後に高広さんがお話しされていた『モノはそれ自体に価値があるという考え、顧客に理解させるという一方方向の考えに企業は陥りいりがち』という部分は、全マーケティングにかかわる人が改めて意識しないといけない問題かと思います。(既に意識されているかもしれませんが…)

第一弾、第二弾でまとめた話の上位概念とも取れる話です。ぜひご参考にしてください。どうぞ。

コンテクストとは?

(コメント→まずは最も重要なコンテクストの理解についてお話されました。ここだけでもすでに面白いです。)

context = con-text。
「con」は、共に・共有するという意味を示す時に使う接頭語。conとついている単語は共有するという意味。つまり、テキストの共有化と言い換えられる。コンテクストは、言葉や表現を定義づける「背景や状況」そのもの。

例えば「ママ」という言葉一つとっても、「母親に甘えるこども」「銀座のホステス」「マザコンの男性」など、だれがどこで使うか、コンテクストによって意味が変わる。逆に言うと、認識や背景が共有されていないとコミュニケーションが成立しない。コミュニケーションを整理させる共有情報がコンテクスト。

ただし、コンテクストは変化する。そして、コンテクストが変化すると、そこで埋め込まれているものの意味も変化する。同じ商品でも社会における必要とされるシーンが変わっている場合もある。例えば現代美術マルセル・デュシャンの「泉」ははじめは価値が認められていなかったが、時代が変わりコンテクストが変わって作品として認められた。これは、商品の解釈が変わるということ。どのように誰によって価値のあるものとして受け入れられるのかが大事。ロウソクのように、中身や機能を変えることなく灯り→おしゃれという感じで意味を変えることで売れることはある。

つまり「人は製品を買うのではなくその意味を買っている」。その意味や価値を規定するものがコンテクストといえる。

マーケティングにおけるコンテクストとは?

(コメント→コンテクストについて理解したところで、マーケティングにおけるコンテクストについて深堀します。)

マーケティングにおけるコンテクストとは、【企業、消費者、メディアなどのコミュニケーションに関わるステークホルダーの間で共有される、共有可能な背景・状況】といえる。

そこで、マーケティングにおいて「コンテクストを活用する」ということは、ブランド(商品・サービス)が埋め込まれるコンテクストや環境を考えること。

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言い換えると商品そのものが能力を一番発揮できるコンテクストはどこか?を考える必要がある。コンテクストに適切にブランドが埋め込まれれば消費者が意味や価値を感じやすくなる、もしくは大きく感じるようになり売れる。

コミュニケーションプランニングにはコンテクストプランニングが必須。ナラティブも結局コミュニケーションプランニングの一つであり、コンテクストプランニングがなくては物語を語れる状況は生まれない。

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いきなりコミュニケーションプランニングをしても、コンテクストが無いので伝わらない。(コンテクストがないとコミュニケーションができないから)

4つのコンテクスト(コンテクストの導き方)

(コメント→次に、具体的なコンテクストの探し方のフレームワークについてお話いただきました。コンテクストは、4つのコンテクストにわけるとわかりやすいという話をされました。)

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(1)顧客のコンテクスト:バイヤーが持っている人々の視点。日常生活、家族友人の交友関係。
(2)社会のコンテクスト:世の中一般にこうだと捉えられる視点。ニュースにどう書かれているのか、社会規範、常識、社会文脈。
(3)業界のコンテクスト:しきたり、ルール、ラインナップ、トレンドなどの業界での位置付けや視点。
(4)自社のコンテクスト:企業の歴史、ブランド資産などの視点。

この4つのコンテクスト(視点)を満たすとユニークになる。例えば「女性向けの部屋」というプランニングをしたとき、

(1)顧客のコンテクスト:洗面台・化粧台で化粧はしない
(2)社会のコンテクスト:男性向けの書斎、子供部屋はあるのに女性専用の部屋はない
(3)業界のコンテクスト:業界で女性向けの部屋は存在していない
(4)自社のコンテクスト:日本で初めて子供部屋を作った企業が女性で初めての女性部屋をつくる

という形でコンテクストを整理すると、商品の価値の整理やどんなアプローチしていけばいいかわかる。さらにわかりやすく言い換えると、

(1)顧客のコンテクスト:顧客に伝わりやすいメッセージ、ベネフィットの明確化
(2)社会のコンテクスト:広報視点でのストーリー
(3)業界のコンテクスト:業界内での位置づけ(競合差別性)
(4)自社のコンテクスト:流通向け、社内向けメッセージ

という形で活用できる。

(コメント→コンテクストはPRや広報は(2)(3)ばかりで考えがちという指摘がありました。確かにその通りだなと反省します。大事なのは(1)です。

また、コンテクストはすべてオリジナルで作らなければならないと思いがちなところがありますが、以下2パターンで探し出すことができると続けます。)

①コンテクストを解釈する、理解する(コンテクストアナリシス)
どのように語られる?どのようなジョブ?どのような意味?ということを考え直す、もしくは改めて考える。

②コンテクストを生み出す、紡ぎだす(コンテクスチュアライゼーション)
どのようなコンテクストを生み出すのか?どういう状況を生み出すのか?を新たに導き出す。

コンテクストは何も新しく生み出す必要はなく、既存の解釈と理解から紡ぎだすことが可能。むしろ②ばかり考えがちだがそれは難しい。4つのフレームワークに当てはめ、抜けもれなくコンテクストを紐づけることが重要。結果的に①②に分類される。

コンテクストプランニング→ユニーク性を導き出しコミュニケーションの質をあげる

(コメント→上記の4つのコンテクストというフレームワークを使って整理ができたら、ようやくコミュニケーションプランニング、製品開発のプランが建てられるようになると続けます。)

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顧客中心主義でも、差別化でもダメ。それでは結局すぐに真似される。ユニークネスによって競争を避ける、遅らせることをする。

コンテクストプランニングからコミュニケーションプランニングをする重要性を理解するため、「CTV」で考えてみよう。例えば以下のようなイメージ。

Context→電車で待つという状況
Target→電車を待つ人々
Value→待ち時間をつぶせる

この場合、雑誌、スマホゲーム、お菓子、これらが課題解決手段になる。コンテクスト視点じゃないと競合とはなりえないが、実際競合となっている。

このように、あるコンテクスト下においては、同一商品カテゴリーだけが競合ではなくなる。これをコンテクストプランニングでは探し出すことができる。これがユニーク性を導くということ。

ユニーク性があれば、コミュニケーションプランニングはより消費者に響くものになる。『商品そのものが能力を一番発揮できるコンテクストはどこか』が明確になるから。

価値はコンテクストの中で産まれる。思考をアップデートせよ

(コメント→最後に、コンテクストプランニングの重要性が改めて整理されました。一番大事な章です。)

消費者は提案に対し、自身で使い始めてようやく価値を感じる。ここを企業は、提案自体を価値と捉えてしまうところが間違っている。

経済活動をサービスとしてとらえる「サービス・ドミナント・ロジック」。モノを伴うサービスと、モノを伴わないサービスもあるが、どちらもサービスという考え。サービスは価値を感じるまでの一連のプロセス。

サービス・ドミナント・ロジックには以下三つに分類できる。

・モノとお金を交換する交換価値 Value-in-Exchange
・顧客が使うことによって生まれる使用価値 Value-in-Use
・周辺に存在するコンテクストによって生まれる文脈価値 Value-in-Context

サービスはつまりスキルの交換(インタラクション)。(※お互いが価値をどう感じ合うか)。だからこそ、使用価値だけではなく、文脈価値を考えることは非常に重要。同じ経済活動の中でのインタラクションがマーケティングと捉える。

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グッズ・ドミナント・ロジック(モノはそれ自体に価値があるという考え)に企業は陥りいりがち(顧客に理解させるという思考)。これは一方方向のマーケティングで、マーケティングの死と表現することもある。旧来のマーケティングから、マインドセットを変えていく必要がある。

コンテクストプランニング無くして、サービスは生まれない。コミュニケーションの根源。

コンテクストプランニング=今の時代に求められていること

私自身このセッションを聞いてようやくマーケティングのプランニングに必要な全体の整理ができた気がします。

コンテクストがないコミュニケーションなど、ただの一方方向の自己満足です。昔はよかったのかもしれませんが。

・コンテクストとは。
・マーケティングにおけるコンテクストとは。
・コンテクストの導き出し方。
・コンテクストプランニングからユニークネスなコミュニケーションプランニングへ。
・企業、マーケターとしてのスタンス。

これら全てが簡潔にまとめられたセッションでした。次世代コンテクストプランニングの本を買って改めて勉強しなおし、自分の業務に役立てたいと思います。

他のセッションレポートはこちらからどうぞ。

それでは、んちゃ。

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