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目利き力とは何か。

「目利き」という言葉を最近よく耳にする。

テレビを見ると、築地市場が長い歴史の幕を閉じ、魚の目利きをするプロたちがクローズアップされていた。

プロ野球のドラフト会議が行われた。最大の注目はドラフトで上位指名を受けるスター選手に集まるが、ドラフトを支えているのは目利きのプロであるスカウトだ。

わたしも、人と企業をマッチングする仕事を続けてきた。人の能力や志向性を見極めたり、企業の将来性や仕事の発展性を想像してきた。目利き力と呼ぶのはおこがましいが、目利きという仕事をしてきたのだと思う。

「目利き」とは一体何だろう?

辞書で調べるとこのように書いてあった。

“(器物・刀剣・書画などの)真偽・良否を見分けること。鑑定。それに巧みな人。”

本物かどうかを見分ける力というところだろうか。機能や質の見極め、芸術的なものに関しては鑑定という役割になるのだろう。

「選択の科学」という選択について書かれた名著がある。その本の原題は『The Art of Choosing』である。邦題では科学とあるが原題では芸術だと言っている。

AIやテクノロジーの発達によって、消費者側でも「目利き」がしやすくなってきている。クチコミは点数化され、自分と近い判断軸の人がどれを選ぶかも分かる。過去の選択データから可能性の高い候補のみを表示し、選択がしやすい環境を整えてくれる。

「目利き」という能力は代替されていくのだろうか。目利きのプロは不要になるのだろうか。

わたしなりに考えてみた。
目利きには「違うものを省く」ことと「その中で、よいものを選ぶ」ことがあると思う。
省くことはどんどん効率化され、消費者側でも行い、その精度は高まり続けると思う。情報過多、選択過多の現代において、選択しやすい状況を作り出してくれる。

一方で「その中で、よいものを選ぶ」ということについて考えたい。

「築地ワンダーランド」というドキュメンタリー映画の中で、目利きのプロである仲買人がこんなことを言っていた。

釣るプロ、運ぶプロ、選ぶプロがいて市場は成り立っていると。そして選ぶプロはその川上と川下を熟知する必要がある。どういう状態で魚が捕獲され、運ばれてきたか。どういう料理人にわたり、どういう料理となって消費者に届くか。

評価機能であり文化機能。商品に付加価値をつけているんだ。

選ぶことを突き詰めると、選ばれたこと自体が付加価値になるということか。

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スカウトはどうだろうか。

以前読んだ記事によると、プロ野球の腕利きスカウトは、投手を見る時、スピードガンで測れる球速よりも、球のキレに注目するそうだ。キレという感覚的なもの(回転数や軌道で近しいものは出るかもしれないが)を見極める。選択が芸術を含むという先程の解釈も頷ける表現だ。

また、野球センスの良し悪しはカラダの柔軟性が大切だという。あれこれ考えなくても、体が勝手に反応するような選手。ひじや手首を柔らかく使えている選手なのだという。

そういえば、カラダには人それぞれタイプがあり、自分に合った使い方をするだけでパフォーマンスがまるで違うらしい。この本を以前読んで目からウロコだったことを思い出した。

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目利き力。

それは、芸術的なチカラであり付加価値を与えられるチカラ。

選択肢を絞ってくれるテクノロジーと、そこから先のアートな感覚。その融合がこれからも必要とされ続ける「目利き力」なのだと思う。

#エッセイ #コラム #ビジネス #築地 #ドラフト #日常からの学び

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