2009 欧州研修(6)【ビジャレアルCF訪問(前編)】
スペインの強豪チームの1つでもあるビジャレアルCFの訪問レポートです!
Wikipediaによると、前回2部リーグ観戦したホームチームのCDカステリョンは同じカステリョン県に本拠地を置くクラブとして長い間、ライバル意識を抱いているらしいです。
また、2000年代以降はビジャレアルとバレンシアCFがバレンシア州内における最も競争力の高いクラブであることから、バレンシアもまたライバルで、彼らとの対戦は現地でデルビー・デ・ラ・コムニタ(Derby de la Comunitat)、日本では特にバレンシア州ダービー(←先日、レポートしました)と呼ばれています。
2009年に訪問した際に自分がメモをしたり撮影したもの、各クラブを訪問した際に担当者が更に詳しくレポートしたものを下記にまとめていきます。情報は2009年当時のものなので、11年経過した現在は変わっている部分もあれば、変わっていない部分もあると思います。
写真や動画を多く使用してしっかり記録として残したいので、読みづらくなるかもしれませんが、ご了承ください。
クラブ(トレーニング施設)訪問
ホテルからクラブ訪問へ向かう際に、観光用の貸切バスではなく、ビジャレアルの専用バスでホテルまでお迎えに来てくださいました!
施設に到着すると訪問2日前に激しいバレンシアダービーを戦ったトップチームの選手たちがトレーニングをしていました。
我々の研修の目的は、トップチームやアカデミー(下部組織)のゲーム・トレーニング内容とその環境についてではなく、クラブの歴史や文化、周辺環境などの調査が目的なので、トレーニングはゆっくり見学できませんでしたが、またの機会を楽しみにしておきましょう。
まず、会長さんのお話を聴かせて頂きました。内容に関しては最後にまとめます。
施設について
トレーニング施設「La Ciudad Deportiva」はオレンジ畑や民家が広がる地域に立地しています。
この写真の①~⑤まではフルコートの芝生ピッチ、⑥~⑧はフットサルコートより少し大きいコートです。
トップチームがトレーニングで使用する天然芝ピッチ以外に2面あるそうで、その内 1 面は約 3,000 人収容のスタンドが設置されており、主にBチームやユースが試合を行う際に使用します。
コチラは、スタンドのある②のコート。
クラブハウスは、1Fにトップチームのロッカールーム、監督室、トレーニングルーム等があり2Fにはカフェテリアとともに下部組織の子どもたちの寮が併設されていました。寮の一画にはコンピュータルームや学習ルームがあり、勉強もできるようになっていて、3Fは寮とプレイルーム(訪問時は臨時に記者会見場となっていた)からなっていました。
選手育成について
本トレーニング施設は現会長が就任した際、大掛かりな改修を行ったそうです。その資金は会長、クラブ両者の出資によって着手され、一番の目的は将来に繋がる選手育成を強化するためでした。
当時、クラブハウスに併設された寮に90名程度の育成組織の選手たちが生活しており、午前中は提携する公立学校での授業、午後はサッカーのトレーニングというサイクルでした。ビジャレアルではこれまで多くの選手を輩出しており、当時、1 部、2 部、2 部Bを合わせると約40名の下部組織出身選手がプレーしていました。育成に関してはサッカーだけでなく学力や人間性にも配慮したシステムが整備されています。
部屋には机、ベッド、棚、ロッカーしかないシンプルなつくりとなっており、サッカーに集中できる環境が整っています。さらに、勉強の成績が思わしくない子どもには学校の先生を招いての課外授業を実施しており、そのための学習ルームも備わっています。
数年前に見たのですが、ビジャレアルの下部組織の取り組みがネットで話題になっていたので、Twitterの引用動画を貼っておきます。こうした社会経験などが人間性を育むことにも繋がるんでしょうね。
このような育成システムで育てられた選手はトップチームに昇格したとしても期限付き移籍で放出されるケースがほとんどだそうです。その後、ビジャレアルに戻り、活躍する選手もいるが、完全移籍する選手も多くいます。そういった選手の移籍金もクラブにとっては重要な収入源として計画されています。収入の割合からすると約 9%(2008-09 シーズン)が選手の移籍に伴う収入だそうです。
トップチームの選手は練習前後に食事をするコトもあるそうです。
クラブスタッフや練習見学の一般来場者も食事が出来るようになっていました。
冒頭でも述べたように、育成・下部組織の取り組みについての研修がメインではなかったので、コーチ業が本業の私はもっともっと聴きたい・知りたいことはありましたが、その部分はまたの機会までのお楽しみです。
その他の活動
幼稚園児のクラスが遊ぶコートは壁で囲まれており、施設の見学中に小学生がぞろぞろやって来ました。
地域の小学生の社会見学で施設見学かな?と思いきや、実は、クラブが地域の小学校にもグラウンドを貸し出ししていて(クラブのスタッフは直接指導はしません)、この日は3校が体育の授業でやって来ていました。
最初はそれぞれで先生と一緒に運動をして、最後は違う小学校同士で試合をしていました。
ビジャレアルCFのトレーニング施設ではトップ選手のトレーニングと選手育成のほかにも役割を持っており、そのひとつが上記で紹介した小学校の授業への開放です。ここでは授業の一環としてサッカーのリーグを開催していて、当時は約150のチームが登録し、午前中の施設利用はこの事業が中心となっているそうです。クラブは場所を提供するだけでなく、コーチによる指導や、トレーニングウェアのプレゼントも行っており、将来のファンづくりの場としても活用しています。
子どもたちのほかにもクラブに登録すれば空いている時間帯に無料で施設を借りることができ、サッカーだけでなく、そこでできる様々なスポーツを利用者は楽しむことが可能だそうです。当時は約7,000人が会員登録しており、夜間は企業などが借りるケースが多いとのことです。
このような地域住民に対するサービスを充実させられる背景にはバレンシア州やカステリョン県、ビジャレアル村などの行政の絶大なる支援があり、これら行政からの助成金をつかって様々な事業を展開していると聴きました。
また、フンダシオン(財団)を設立してスポンサー等から寄付を募り、クラブの行っている公益的な活動の資金としており、この資金からは子どもたちの指導を行うコーチの給料や寮に暮らす子どもたちの食事代もまかなっているそうです。
そもそも、このフンダシオンはスポンサーからの要望にこたえる形で設立され、スペインではこのようなフンダシオンに寄付を行うと税制上の優遇が受けられるため、このような経緯があったそうです。
スタジアム
トレーニング施設の紹介でボリュームが多くなったので、スタジアムについては、また次回(後編)に詳しく紹介します。
Jun Fujii
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