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地域課題解決への挑戦 ~効率ではなく美学を求めて~

地域課題解決に”効率“を求めた初期

私水野元太は、社内短期異動制度「Jobチャレ!!」を活用し”半年限定で”富士通Japan徳島支社に勤めています。
入社時の配属はSEでした。しかし、出身地である鎌倉市、長野県開田高原での教育活動の経験を踏まえ、ビジネスとして地域課題解決を実践する方法を学びたいと考え異動しました。

期待に胸を膨らませていたのも束の間、いざ活動を開始すると私は”焦り”が生じました。
ビジネスプロデューサーの経験、ビジネスで地域課題解決を実践する経験、徳島の知り合い…。すべてが「ゼロ」の状態からスタートです。
かたや、半年という期間があるのも事実。学びたいことは吸収し、かつ自分なりの目標や成果は達成しなければなりません。

焦燥感にかられた私は、次第に”効率”を追い求めました。
まちや自治体が掲げる方針や施策のみを理解し、自分や自社で解決できることは何かを考える。限られた時間の中で、課題を”すぐに解決”することに注力し始めたのです。
一連の流れに違和感は覚えつつ、「こうするしかない」と自分に言い聞かせていました。

そんな形で過ごしていたある日のこと。神山町で出会った方がこんな言葉をおっしゃいました。
「地域に必要なのは、“美学”を持った人だよ。」
美学。地域と美学がどう結びつくか、すぐには言語化できなかった一方で、妙な納得感を抱いたのも事実でした。

地域課題解決に必要なのは”美学”である

“美学”を自分なりに言葉にしてみれば、地域課題解決に本当に必要なエッセンスが見えるかもしれない。
そう考えた私は、徳島での経験を踏まえ「地域に必要な“美学”」を解釈しました。

① 地域や人間の根底にある哲学を疑い、誰にとってのどんな問題か・ 課題かを整理する。(斬新さ・丁寧さ)
② 現場に赴き、地域に存在する潜在的な資産・あらゆる関係者が求めていることを理解した上で、革新的ながらも地に足の着いた解決策を考案する。(泥臭さ・堅実さ)
③ たとえ時間がかかっても、自分が信じる考えやアイディアを貫き通す。(強い信念)

“美学”の例として、上勝町の葉っぱビジネスが思い浮かびます。
町の主力産業だったみかんの木が寒波により全て枯れ、いかに産業を継続するか試行錯誤する中、株式会社いろどりの横石氏は「町の大半を占める高齢者・女性でも働ける仕事は何か」を考えました。
単純に「主力産業であるみかんの木が大幅に不足している」ことを問題と捉えず、「主力産業の持続は「“誰のどんな理想か”」を見つめ直したからこそ本質的な課題が浮き彫りになったと感じます。

その上で、仕事をどのように創出するか。
上勝町は山あいの地域で大規模な農業には不向きです。その中で、町内にありふれていた葉っぱに付加価値をつけることを試みました。町民からは
「こんなの売るのは恥さらしだ」
とも言われたそうです。それでも横石氏は諦めずに成功の道を探り、ビジネスを行うおばあちゃんが求めているものを20年かけて観察したといいます。

葉っぱビジネスをはじめ取り組みや人との出会いを振り返る中で、
地域の暗黙知や資産を理解しながらも当たり前を疑い、斬新かつ堅実なアイディアを考案すること、そしてそれを信じ切ることが、地域において必要なこと(=“美学”)だと気づいたのです。


(”美学”の大切さを教えてくださった徳島県神山町にて)

はじめは”泥臭く”あれ

同時に、私が自己中心的な理由で”効率”を追い求めていたと痛感しました。地域課題と向き合う以上、半年という任期や“知識・経験がゼロ”という前提条件など関係ない。地域は自分の都合に合わせ、自分のやりがいを追い求める場ではありません。
むしろ必要なことは”効率”とは真逆です。特に初めのうちは、泥臭く丁寧に現場と向き合い、哲学や現状を理解することが大切だと気づかれました。どんな条件を持つ人であろうと、どんな規模の企業であろうと、この過程は必要不可欠なのでしょう。

これらを整理できた時、私は“効率”を追い求めることをやめ、現場に流れる哲学や実情に向き合うことを厭わず行うようになりました。すると、本質的な課題が徐々に浮き彫りになってきたことを実感できたのです。
“半年”という期間のリミットはもう少し。いや、まだまだできることはたくさんあるはず。課題と向き合う中で自分なりの“美学“を携え解決に向かうべく、精進していきます。

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