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1月1日(月):書籍「疲労とはなにか」からの整理④

最近は12月に発売したばかりの書籍「疲労とはなにか(近藤一博著)」を取り上げながら、本書からの学びを自社の事業領域(フィットネスクラブ運営)に沿って整理を進めているところです。

前段としては「疲労感」と「疲労」の違いに触れ、疲労の程度は「HHV-6(ヒトヘルペスウイルス6)」によって測定できること、そのうえで疲労は「生理的疲労」と「病的疲労」の2種類に区分されることを記しました。

次いで一昨日は生理的疲労が体内の抹消の組織(臓器や筋肉)で炎症が生じた時に細胞から分泌される「炎症性サイトカイン」が、血液脳関門の隙間を通り抜けたり、神経を通ったりして脳内に入ることで疲労を感じ、この炎症性サイトカインは統合的ストレス応答(ISR)によって産生され、それを引き起こすのがeIF2αのリン酸化である点に触れました。

それを受けて昨日は生理的疲労を回復させるための観点で、リン酸化したeIF2αからリン酸を取って脱リン酸化していくことが疲労回復につながり、脱リン酸化を担うリン酸化eIF2α脱リン酸化酵素の産生を誘導するのが疲労であることから、軽い運動が疲労回復力を高める旨の説明をしたと思います。

そして大事になってくるのが疲労と疲労回復のバランスで、疲労回復力は「疲労回復指数=脱リン酸化の量(GADD34またはCReP)÷リン酸化の量(ATF3)」の式で表され、軽い運動は疲労感を減少させるのではなく、疲労回復力を高めることで生理的疲労そのものを減少させることに寄与している点が示唆されていました。

こうした軽い運動による疲労回復は本質的なアプローチですが、世間一般ではもっと安易な方法がとられることも多く、例えばエナジードリンクを飲んで済ませることなどはそのひとつでしょう。

本書ではそれらへの注意喚起もなされています。

エナジードリンクの効用がカフェインによる興奮作用と捉えている人も多いですが、疲労感の抑制にもっとも寄与しているのは原材料になっている様々な抗酸化成分による酸化ストレスの抑制だとされています。

酸化ストレスは生理的疲労の原因であるeIF2αのリン酸化を誘導する因子の1つであるため、エナジードリンクの抗酸化剤によって肝臓のeIF2αのリン酸化が抑制され、炎症性サイトカインの産生が低下し、その結果として疲労感を減少させることにはつながっているのだそうです。

ただ問題となるのはこの先で、肝臓のeIF2αのリン酸化は抑制されたものの、心臓や脳、筋肉といった身体の他の組織のeIF2αのリン酸化は抗酸化剤によってまったく抑制されないのだといいます。

その結果として抗酸化剤によって疲労感の原因になる肝臓で産生される炎症性サイトカインが減少し、脳は「疲れていない」と認識して身体を休ませるシグナルを出さなくなるため、無理に身体を酷使することにつながってeIF2αのリン酸化による組織の障害や突然死を招いてしまうリスクが生じる点が挙げられていました。

また肝臓以外の臓器でのeIF2αのリン酸化を誘導するものに小胞体ストレスがあり、小胞体ストレスは心不全に関係することが報告されていることから、エナジードリンクの過剰摂取が心臓の小胞体ストレスによる心不全を誘発する懸念にも触れており、過剰摂取への注意は必要になりそうです。

エナジードリンクは疲労そのものを軽減しているのではなく、あくまでも疲労感の認識を抑制しているに過ぎないとの理解をしつつ、常用や過剰摂取をすることがないように気をつけなければいけませんね。

ここ一番を乗り切るために単発的にエナジードリンクを飲むことは問題ないでしょうが、やはり疲れを感じたら入浴や睡眠といった十分な休息をとったり、昨日に触れたような軽い運動としての積極的休養を通じて疲労回復力を高めていくのが本質的な解決策だと思います。

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