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1月8日(月):人口減のなかでの新しい公共交通のカタチ「ノッカルあさひまち」

一昨日は昨年末に国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の地域別将来推計人口」をもとに、自身の居住地である神奈川県のことに触れました。

簡単に振り返ると神奈川県では2050年の人口が2020年比で7.7%減の852万4,000人と推計されており、政令指定都市である横浜市や川崎市の一部では人口増加する自治体があるものの、消滅可能性都市にもあげられていた三浦市や山北町、真鶴町では人口が半減する見通しになっています。

これは神奈川県だけに限った話ではないですが、急速に人口減が進む地域では交通インフラや住民向けの公共サービスの維持が難しくなっていくのは否めません。

そこに端を発して昨日は直近の2年ほどのの間に廃止されたバスの路線が全国でのべ8,600キロにも及び、鉄道でも赤字路線の存続可否の議論が進められるなど、地域の公共交通のことを取り上げながら、今年の4月から限定的に解禁されることになったライドシェアのことを記しました。

本日はそれに関連した地域のモビリティについての話をもう少しばかり。

昨年末の日経新聞で取り上げられていた面白い事例が富山県朝日町で展開されている新しい公共交通の形を模索した「ノッカルあさひまち」です。

こちらは自家用有償旅客運送の形式で、ご近所さんの自家用車でのお出かけに、ついでに「乗っかる」ことができる、助け合いの気持ちをカタチにしたサービスで朝日町、交通事業者、そして町民と町全体で協力して作りあげていく仕組みになっています。

昨日に取り上げたライドシェアとノッカルあさひまちの違いについて、前述した日経新聞の記事では以下のように分かりやすく説明がなされています。

「ライドシェアは(1)運営事業者がアプリで乗客と運転手を仲介(2)運転手は一般人(3)乗客と運転手が相互に評価(4)行き先や料金は乗車前に確定(5)料金は需給で変動――などと定義される。朝日町の「ノッカル」はLINEアプリを使い、タクシー会社が協力する。ライドシェアと(1)(2)(4)は同じだが、考え方は異なる。

ライドシェアはタクシー不足に応える利用者起点のサービス。ノッカルは公共交通の担い手確保が目的で、運転手の都合に合わせて運行する運転手起点のサービス――。朝日町の小谷野黎さんはこう説明する」(ここまで)

このノッカルあさひまちでは、料金がバスとタクシーの中間の1回600円に設定されており、行き先は町内に限定し、乗降場所も決まっているため運転手の負担を軽くすると同時にタクシーとのすみ分けを行っています。

こちらのサービスでは利用者にとっての利便性だけを考えるのではなく、運転を担うドライバーも同じ町民だから、運転手の負担も考慮して運転手の外出予定に合わせて時刻表を作り、そこに利用者が同乗する仕組みとして持続可能を担保しています。

誰かの負担が大きくなってしまえば長続きはしないので、ともに自分のできることを担う形で助け合う仕組みで成り立っており、社会的共通資本と位置づけているそうです。

なお社会的共通資本とは、かつて宇沢弘文が説いた概念で、豊かな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を安定的に維持する―このことを可能にする社会的装置を社会的共通資本と呼び、農業や医療、教育、そして今回のような交通インフラもそれにあたるものとされています。

ノッカルあさひまちがサービスを開始してから2年が経つなか、バス、タクシーの利用は減っていないということなので、既存の公共交通機関と上手くすみ分けをしながら共存し、地域住民の足を補完する存在になっているのがポイントです。

今年の4月に限定的に解禁されるライドシェアについては、タクシー会社が経営を圧迫される懸念から導入に反発してきた経緯もありますが、先のノッカルあさひまちのように地域にとっての最適解を見出していくことができれば、既存の交通サービスとあわせて地域のモビリティ維持に一役買うことはできるでしょう。

自治体や事業者任せだけになるのではなく、自治として住民もそこに参画をしていくことで、できることが格段に広がっていく面はあるので、今回のケースは人口減少時代の公共サービスの支え方の一例ではないかと思います。

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