5月20日(月):カスハラ対策、「ユーザー中心」から「人間中心」へのアップデートを
先日に自民党のプロジェクトチームが「カスタマーハラスメント(カスハラ)対策」の法整備について提言案をまとめたことから、この数日は関連の内容を記しています。
カスハラ対策はいち企業だけでは難しいので条例や法整備も含めた線引き、ユーザー側への抑止力は必要になってきます。
そして企業側もマニュアル整備や研修などを進めていくべきですが、昨日にも記したように一番のカスハラ対策は顧客との良好な関係をつくっていくことだと思っています。
大量生産・大量消費、効率化などによって売り手と買い手の関係が希薄になり、互いが顔の見える関係ではなくなってしまったことで、消費の現場がストレスの捌け口の対象になってしまう面はあるからです。
互いを知る関係のなかだと人は一般的に責任や配慮ある振る舞いをするもので、相手が見ず知らずの「他人」であるから平気で相手を侮辱したり、傷つけたりできてしまう面はあります。
だから顧客との関係性やサービスの現場を改めてデザインし直すことも大切だと思っています。
この点でいえばサービスデザインの原則はそこにつながるものがありますね。
参考までにサービスデザイン原則として挙げられているのは以下の要素です。
1、人間中心
サービスの影響を受けるすべての人のエクスペリエンスを考慮する。
2、共働的であること
サービスデザインのプロセスには多様な背景や役割を持つステークホルダーが積極的に関与しなければならない。
3、反復的であること
サービスデザインは、実装に向けた探索、改善、実験の反復型アプローチである。
4、連続的であること
サービスは相互に関連する行動の連続として可視化され、結合されなければならない。
5、リアルであること
現実にあるニーズを調査し、現実に根差したアイデアのプロトタイプをつくり、形のない価値は物理的またはデジタル的実体を持つものとしてその存在を明らかにする。
6、ホリスティックな視点
サービスはサービス全体、企業全体のすべてのステークホルダーのニーズに持続的に対応するものでなければならない。
なお前述したサービスデザイン原則の6つの要素は2017年にアップデートをされたものですが、それ以前の2010年時は以下の内容でした。
1、ユーザー中心
サービスは顧客(ユーザー)の立場から経験されるべきである。
2、共創
サービスデザインのプロセスには、すべてのステークホルダーに参加してもらおう。
3、インタラクションの連続性
相互に関係する複数のインタラクションをつなぎ合わせ、一続きの流れを形作らなければならない。
4、物的証拠
形がなく、手で触れることのできないサービスは、有形の物的要素を用いて可視化する必要がある。
5、ホリスティック(全体的)な視点
サービスを取り巻く環境全体に目を配ろう。
それぞれアップデートされたなかで今回のカスハラ対策ともっとも関係してくる部分でいえば、1つ目に挙げられている「ユーザー中心」から「人間中心」への変化でしょう。
「ユーザーの立場」から物事を考える従来の視点に対して、サービスの影響を受ける「すべての人のエクスペリエンス」を考慮する、となりました。
当然ながらここには提供者側の経験も含まれてくるわけで、それもあわせて人間中心に考えていくことの必要性を示唆したものです。
ユーザーにとって良いサービスの形であるのはもちろんですが、それとあわせてサービスを担う提供者側にとっても望ましい形や関係性をデザインしていくことが求められる時代だと思います。