見出し画像

手関節の痛みを考察してみた

クライアントの訴える症状、医師からの診断、文献的考察、画像から読み取れること。理学療法として考えるときに、情報を処理していく思考過程が読み取れる!…といいな~と思って書きました。

手の痛み

 以前の話。ゴルフをしている中学生が来ました。「手首がたびたび痛くなるんです。」なになに…今回は何をした??ゴルフの練習をしているんですが、特に変わったことをしたわけでもなく。痛くなると腕立てもできない。たしかに始めの問診のとき、腕立て姿勢をとっても痛いっていってた。背屈強制されるのが嫌みたい。
半年くらい前もラウンド中に痛くなって、キャディーさんにテーピングしてもらったら大丈夫だった。それからたびたび痛みが出ては引いて。今は痛い。
診断名は指伸筋の炎症。腱の炎症を起こすには、使い過ぎのオーバーユース。または使い方の悪いミスユース。だいたいどちらかで分けることができます。
オーバーユースであれば、使う量を減らしてみてはいかがでしょう。
ミスユースであれば、使い方を考えないとですね。
もし…構造的欠陥のために、そう使わざるを得ないのであれば、どうします。本人ではなんともしようがないのかもしれませんね。そこで、しっかり考えて理学療法を展開してみよう。

探ってみる(問診・触診・治療しながら)

圧痛を確認。指伸筋腱は触りやすい。表面にあるからね。確かに痛みがあるが、もっと「ズキっとする」んです。圧痛もはっきりしない程度。何より収縮時痛がない。ん~。手根骨を動かしてみる。近位列と遠位列を操作して、前額面でワイパーのように操作します。たまには一つ一つの手根骨を操作してみました。ふとしたときに、「痛っ!」となんとも再現性のない痛みが出現します。ほんとふとした時に。限定することはできなかったですね。でも、ズキっとするはたびたび再現できました。月状骨当たりかな…第3列には間違いなさそう。
「ズキっと3番目の指まで走るように痛い。」こうやって考察しながら動かすと、手関節の背屈は痛みなく可動域が拡大しました。何が変化したのか?腱炎で可動域制限するか?長期間経っているから、2次的拘縮を起こしていて、動かすことでその改善が見られたのか。一時的に改善するようです。触っていて気が付いたのですが、舟状骨の動きは左右差がはっきりあります。ここだけ拘縮が強いのか?だいたいゴルファーの左手は小指側の損傷が多いもの。TFCCは典型的。TFCC損傷は三角線維軟骨複合体損傷。小指側の手首の痛みで多いケガです。お父さんが少しゴルフをされるようで、
「親指側が硬くなっているんですね?何か心当たりでも…」
「握り方が悪いんですかね…」
一般的な競技特性からは逸脱した症状のようです。リストに頼りすぎなのか?手首を背屈方向にこねるようなしぐさをすると、「そんな風には使わないですよ」と本人。考えていることは、「腱の炎症だとしたら、なぜ起こったのか?」まさに炎症のみであれば、超音波治療や消炎鎮痛剤などで対応するか。なんでかな…もう一度レントゲンをみてみた。骨の辺縁をたどると…ズレて見えるやん!手根骨は、小さな靭帯によって相互関係を保っていると聞きます。

回内すると下橈尺関節の橈骨尺骨靭帯が緊張します。緊張しない。あるいは損傷してゆるんでいる人はTFCCにストレスがかかりますので、損傷しやすくなります。さらにここにも筋との共同作用があり、回外したときと回内したときに尺側手根伸筋腱の位置が変わります。

Sportsmedicine 2021 no.235 壇 順司 靭帯の役割を構造とともに理解する

やっぱり靭帯損傷があると2次的に軟骨が痛んでくることは、どの関節も同じなんでしょうね。また手関節は手根骨という小さな骨の集まりです。これまた小さな靭帯でうまく配列を保つような構造をしています。

出典 堀尾重治 骨・関節X線写真の撮り方と見かた

絵で示すと上図のようになります。例えば、脱臼すると配列が乱れるようなレントゲン画像になってしまう。図の説明でいくと、月状骨の脱臼では、列を逸脱した月状骨をみることができる。配列を守るように機能する小さな靭帯のおかげで整うことができるのかもしれませんね。この小さい手根骨が。話は少しずれますが、月状骨といえば、キーンベック病(月状骨軟化症)。こんなところで、医学的知識を使うんです。初期はレントゲンでは何にも異常がないので。一応頭に入れておいて治療しておかなければならないですね。「この部位の痛みならば、こんな病態を考えられる」そんな考察をするとリスクを回避することができます。いちおうキーンベック病の説明も。

キーンベック病。月状骨の骨壊死で、手根骨壊死のなかで最も頻度が高い。男性に女性の約2倍の頻度で発生し、20歳代~40歳代に多い。原因としては、骨壊死や骨折による血流障害や三角線維靭帯の付着部の反復性の機械的ストレスが考えられており、約78%の症例にはulnar minus variance が認められる。

ちょうどガングリオンもできたんです。初診のときはなにもなかったのですが、3回目のアプローチの時ですかね、ぷくっと腫れてきて、ちょうど参考にしたシェーマと同じ部分なんです。医師に押して潰してもらおうと思いましたが、潰れず。穿刺して抜いてもらいました。わずかですがゼリー状のものが引けました。

1週間後、痛みなくゴルフできている。手首を触るとやっぱり拘縮しています。ガングリオンが原因だったのか?初診の時はなかったが…だとしたらこの拘縮はなんなのか。なかなか真犯人を探すのに難渋します。もう一度レントゲンをみてみます。

画像のみかた

画像のみかたと書きましたが、これが正解ということではないです。医学的なみかたもあるでしょう。でもグラビアアイドルをみたときに、美しいですが、人それぞれ感じ方は違うはず。レントゲンをみて、理学療法を進めるための情報を得たいものですね。ではレントゲンをどうぞ。

どうですか何か見えますか?手関節を触っているときに、こんなとこどうなっているだろう。ここは動きにくいけど、関節はどうだろう。などなど、あり程度検討をつけておくことにしてます。どれどれ…見てみると。ん??

段差が大きいんです。見え方ですかね。撮影角度の問題か。
画像診断は、「写っているものをみる」客観性と「それらを解釈する」主観性があると思っていて、有頭骨の橈側骨縁から月状骨の骨縁のラインが痛みの出ている左手だけ不整に見えます。医学的に診断を下すのではないです。この段差だと関節は動きにくいだろうね。痛みが出ている手関節の方が。医学的にどうかはわかりません。診断をしようということではないので。ちょうど訴えのある3列目。もちろんガングリオンがあったのもこの辺り。大きく動くのかもしれませんね。不安定性があるのかもしれません。が、とにかくこの画像を見てどのようなアプローチをしようか。それが理学療法士としてのセンスなのかもしれません。

まとめ

動きにくいものを動かす場合、腱には負担かかるんじゃない?だから炎症を起こしたのか?繰り返す痛みはどうなの?やっぱりガングリオンが主犯なのか。ではこの段差は?この手根骨が不安定だとしたら、悪い位置にあるときは、ぎこちなく痛みを誘発するのか。動かすと痛みなく背屈できるのは、その位置を修正するためか?じゃあどうする?
医学的情報を聞いて、実際、クライアントの訴えを聞き、機能的な評価して、それに対してアプローチを行う。しっかり考えていく思考を育てたいですね。よくある話。治療の方法論を得て、それを臨床で当てはめてしまっていること。それでは、理学療法の考察するチカラがついてこないような気がします。
ところで、そのゴルフのコはどうなった?それは次回の講釈で…笑笑


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?