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コミュニティーを活用した非中央集権型のカスタマーサクセス

このnoteは連載モノで、これまでの5つのnoteの続編になります。これまでのサマリ ↓

顧客体験を磨くことでプロダクトの独自性・優位性は作れる
●養殖業で作りたい体験を届けきってDXを実現するためには、プロダクト内のUXに閉じずCXに考える範囲を広げるべき
●CXを支えるカスタマーサクセスはハイタッチ→ロータッチ・テックタッチの型化が基本的な攻め筋

カスタマーサクセス?LTV?はて…??という方は前回の第5弾のnoteを読んでいただけるとありがたいです!

第5弾のnoteでは、王道ルートを理解した上で、「何かカスタマーサクセスの新しい形を作れないか」という問いを書いただけで終わっていました。今回はその問いに対する現時点での僕の回答を書きます。結構妄想が入っているので、ある種の思考実験だと思っていただければm(_ _)m。では、本編へどうぞ!

コミュニティータッチによる脱中央集権化

僕が考えた方向性の結論は「カスタマーサクセスの非中央集権化」だ。もう少しわかりやすく言うと「生産者コミュニティーを作ること」が現時点の超粗々なサマリということになる。

これまでのカスタマーサクセスは基本的には「サービスの受け手」と「サービスの使い手」という1:1の関係性で成り立つということが前提になっていた。あらゆる顧客はサービス提供者からサポートを受ける「だけ」の存在だった。

でもよく考えてみれば、僕らのサポートチーム以外にもユーザをサポートできる人たちはいる。ベテランユーザや先進的な取り組みをしているユーザが他のユーザをサポートしたって別にいい。

言ってみればこれはuwotechという僕らのサービスの運用を「中央集権化」させないということだ。サービスとしては提供者と利用者の関係で、完全にweb3.0みたいな世界を目指すのは現実的ではない。でもサービスの運用やコミュニティーという意味では中央集権ではない形でサポートを考えることができる。

※web3.0って?
web1.0…個人が自由にホームページを作り情報発信ができる
web2.0…SNSなどで情報発信者と閲覧者が双方向的にやりとりできる
web3.0…ブロックチェーン技術を活用した非中央集権型または分散型のインターネット

ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチのようなタッチモデルとは違い、僕たちの完全なコントロール配下から外れる新しいタッチモデルがコミュニティーを活用すれば作れるんじゃないか。

コミュニティーを作るとどんなことができるのか。思いつくままに徒然に書いてみる。

6つのコミュニティータッチ施策

1.ユーザと一体となったサービス改善

ユーザがサービスを使ったときにふと思い浮かんだアイディアや要望を気軽に投稿してもらえるようにする。

コミュニティーにすると、利用者→サービス提供者という1方向だけ、かつ1:1の関係性が変わる。ひとつのアイディアに対して、他の生産者が様々な反応を重ねられる。開発者である僕たちもこの先作ろうとしている機能のアイディアを投げる。複数人で盛り上がる話題が出てくるかもしれないし、さらにセレンディピティ的な要素で新しいアイディアが出てくるかもしれない。

事前に生産者の人たちの反応がわかるので、開発側の自己満な思い込み機能で限られたリソースを無駄遣いするリスクは最小限にできる。

利用者と開発者の間にある分厚い壁を取り払う。サービスは「開発者だけで考えて改善するもの」という固定観念を壊す。もちろん利用者からは利用料をいただくことになるし、最終的な事業の意思決定は僕らがやる。だけど、どんなサービスにしていくかを僕らだけで決める必要はない。ゆるくユーザを開発チームとして巻き込む。一緒に創る。

いわばコミュニティーにおける投票行為のようなものをもって、開発方針を決める。アイディアをいただいた方は仕様検討の会議体にも入ってもらって「中の人」として開発に携わることができる。できるだけ利用者にもオープンな開発を志向する。

どの機能を作るべきか、新しく開発する機能がユーザに受け入れてもらえるのか。もう数十万使って調査して分析する必要はない。お金も時間もパワーもそんなところに使わなくて良い。

2.ユーザ間での疑問解消・相互支援

アイディア投稿が活発になってくると、そのうち僕らのサービスに精通した玄人が現れる。初心者ユーザはわからないことがたくさんあるので、そんなとき、この玄人たちが質問に回答してくれたり、おすすめの使い方を紹介してくれたりする空間を予め用意しておく。

この仕組みがうまく機能すれば、困ったときや迷ったときにユーザが一人で悶々としないで済む。僕らのサポートのリソースも限られているので、時には即レスできないときもある。そんなときもサポートチームからの連絡を首を長くして待ったり、待ちかねて電話を鳴らしまくったりしなくて済む(僕は電話は正直嫌い。できるだけ電話しないでほしい)

3.QAコンテンツのデータベース化

ベテランの人の発信内容をコンテンツとしてストックすれば、QA集のような形でデータベース化できるようになる。そうすれば、辞書的に検索するだけで最新かつ最良のコンテンツにアクセスできる。

意外な使い方、便利な使い方をまとめてくれるユーザもいるかもしれない。カスタマーサクセスの機能を開発者である僕らに閉じた形にするのではなく、ユーザも巻き込んだ形で再定義する。

4.表彰制度「uwotech award」を開催

先に紹介したアイディア募集やユーザ間のサポートは、施策単体だけだと成り立たない。ブーストさせるためのエンジンが足りない。その役割を担うのがこの「uwotech award」。

「uwotech award」は年間通じてサービスの成長や発展に貢献してくれたユーザに敬意を表して表彰する制度。ここで素晴らしいアイディアを出してくれたユーザや多くの初期ユーザを支えてくれたユーザに感謝の気持ちを伝える

ベンチマークにしている施策はsansanさんの施策。本格的なコンテストになっていて、受賞者のコンテンツも充実していて見ごたえがある。素敵。

ポイントはインセンティブに金銭を設定しないこと。これは教育業界に身を置くことで痛感したけど、望ましい行動を自発的にやっている(内発的動機がある)人にニンジンをぶら下げる(外発的動機付けを行う)のは最悪の愚策で、これをやると内発的動機が消失する。そして指示や報酬がないと動けなくなる。最悪すぎる。自己決定理論で証明済みで、undermining effectという名前までついている。

報酬は有能感を実感してもらうことだったり、自社の養殖業と僕らのサービスとの結節点・繋がりをより強く感じてもらうことだったりする。

sansanがこれだけリッチな受賞者インタビューページを作っているのも、受賞ロゴマークを渡したりしているのも、上記のような背景があるからだと思う。このサービスを使っていてよかった、その行動が正しかったということを再確認していただいて、自己肯定感を高めてもらうのが双方に健全だ。

5.無料ウェビナーの開催

uwotech awardで受賞したユーザを無料ウェビナーの講師(報酬あり)として特別招へいする。そして活用法や実績・成果などについて語ってもらったり、パネルディスカッションに参加してもらったりする。

受賞者が多くの利用者から称賛される場にすることで、よりサービスに愛着を感じてもらえるようにしたいというのが狙い。ウェビナーの参加者もロールモデルになる人のリアルな話が聞けるので、参考になったり勉強になったりする内容も多いはず。そういう意味では活用・定着を促す役割も果たすのがこのイベントになる。

6.ユーザー同士で知見をシェア

最後の6つ目はもはやサービスの利用者に閉じない話。

養殖業というのは都道府県知事から漁業権(区画漁業権)の免許を取得しないと営業できない。ただ、実際のところは、地元漁協等が免許された漁業権の一部の区画を借りるケースが多い。その場合生産者は組合管理漁業権の行使規則(組合員行使権)の下で養殖業を営むことになる。そのため、生産者は地域に閉じた漁協というコミュニティーが主な情報収集先となる。

他方で、日本は南北に長いため、水温がエリアによって違う。地形も違う。そのため地域によって飼える魚種が異なり、様々な魚種が養殖されている。養殖でなにかと話題のノルウェーはほぼすべてサーモンのみ。日本もノルウェーのように画一的にブリだけ、マダイだけとかであればシンプルだけど、そうはならない。魚種が違えばエサも違うし、飼育のコツや増肉係数も違う。同じエリアの隣りの生産者が同じ魚種を飼っているとは限らない

かつては同じ漁協内に同じ魚種を扱っていて、かつ成功している事業者もたくさんいたかもしれない。そういった状況であれば、知見の相互シェアもできたし、アップデートもできた。困ったときも相談できた。しかし、今は生産者の数が全国的に減少している。

同じ漁協内で頼れる人がいなければ、なかなか生産技術は発展しないし、エリア別にそれぞれ車輪を再発明しているような状態になってしまう。日本の養殖業全体を見たときの生産性はずっと低いままだ。

ここに風穴を開けるためには地域性やエリアといった紐づき(これはこれで漁業を健全に営む上でとても大切)とは別に、「魚種」をキーとした新しいコミュニティーが必要だ。

魚の体調がなんとなく悪いとき、原因不明のへい死がでているとき、エサ食いが悪いとき他の生産者はどんなことを考えているのか。病気の診断に迷ったとき、他の生産者だとどう診断するだろうか。人手不足をどうやって解消するか。新しい機材を買いたいとき、すでに購入した人たちから生の声が聴けたら…

そんな疑問を解消するための場所を、利用者にも非利用者にもオープンに開く。日本の養殖業全体が元気にならないと、養殖業に尖って起業した意味がない。だからサービスを使っていない人たちにもコミュニティーを通して役に立つ。

コミュニティーは匿名OKにしようと思っている。エサの情報や尾数の情報をどれくらい内部の機密情報として扱いたいかは生産者によって異なる。自分がどの漁協のどの生産者なのかを公開したくない人もいるので、公開したい範囲内で知見を共有してもらえればいい。

続編あります!

次のnoteではこのコミュニティーを自走させる仕掛けについて考えます。結構壮大なビッグピクチャーになってます笑。



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