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扶養の範囲で働くか、それを超えて働くなら年収いくらならお得なのか!?〜人生100年時代と私の場合〜【First Step トークショー#9 特別編リポート】Report by Mai Todagishi

2020年11月15日にオンライン開催された、First Stepのグッドモーニング企画。
17年間の専業主婦生活を終え、47歳で再就職にチャレンジした薄井シンシアさんが、今一番気になるゲストと繰り広げるトークショーの特別編です。
今回はシンシアさん同様、17年間の専業主婦期間を経て、パートから正社員へ。現在は社会保険労務士とキャリアコンサルタントとしてご活躍の永井さんから、これからの働き方への選択肢にも関わるテーマについて解説いただきました。

▼永井さんの主なキャリアは、以下となります

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今回のリポートでは、社労士でもある永井さんから、専門的な内容や資料も含めてとても充実の内容が伝えられたものを、ギュギュっとコンパクトに書き出しています。
専門的な内容は個々の違いも大きく、全てをお伝え出来ませんが、扶養の範囲で働くか?など悩んでいる方や現在パート勤務の方にも、今後を考えるヒントとしてシェアに役立てばと思いつつ、リポートしてみます。

●扶養範囲内に関係する4つの壁

扶養の範囲について考える時に、既にご存知の方も多い4つの壁があります。それが「年収103万円/106万円/130万円/150万円の壁」ですね。
少し前までは、106万と150万の壁は無かったので、一般的に多く耳にしてきたのは130万円の壁かと思います。
それぞれのポイントは、簡単に書き出すと以下とのことです。

◆103万円以上
所得税が発生する。加えて、夫の勤務先によっては家族手当の対象から外れる場合もある。

◆106万円以上
従業員数(501人以上)や勤務時間(週20時間以上)など、大企業によっては社会保険に加入するという場合が出てくる。

◆130万円以上
社会保険料を全く払わないか(0円)、払うかの収支の大きな分かれ目となるため、103万円の壁よりも大きな影響が出てきます。

◆150万円以上
夫の年収にも関連して控除される金額でもある、「配偶者特別控除」の減額が受けられる上限ラインとされています。

●個人や家庭ごとに違うものの…

先に触れました4つの壁についても、「個人や家庭・勤務先ごとの状況により異なる」というのが正しく、内容も複雑であることから、専門窓口や専門家に相談・シュミレーションしてもらうことが最善と言えそうです。

とは言え、家庭内の収支に影響する一般的な傾向を簡単に書き出すと、下記のようなポイントがあるとのことです。

◆社会保険に加入するメリットは?

・自己負担額が減る
国民年金や国民健康保険は全て自己負担によるものですが、社会保険料は事業主と個人が払うという観点から、自己負担額が減るという捉え方もできます。

・老後に受け取れる年金額が増える 
厚生年金が社会保険によって上乗せされるため、老後の生活の安心感は大きくなると言えそうです。加入月数も計算式にプラスに影響する点も理由の1つになります。その増加金額については、その為の掛け金を別の用途(資産運用や投資など)に充てて計画するという方もいるとのことで、この点については様々な価値観が存在しそうです。

・保険制度が手厚い 
代表的なものとしては、出産手当金や傷病手当金が挙げられました。傷病手当金は、最大1年半の期間で受けることが出来るという点も、意外と知られていないようです。

一方で、社会保険に加入するデメリットは「給与の手取り金額が減る」という点は、間違いない事実ではあります。

◆その上で、いくら稼げば良いのか?

・社会保険料だけを重視する場合
160万円以上の収入があれば、保険料を差し引いても一概に損とは言えない手取り金額になるとも言えるようです。

・配偶者特別控除も関連する場合
控除される金額の詳細が、夫の収入により条件が変わってくるものの、プラス20万円(年収180万円)ほどの収入があれば、損はないと言われるラインだそうです。

【参考記事ご紹介】=========
今回の企画の数日後に、日本経済新聞でタイムリーな参考記事が掲載されていました。年収を意識して勤務していても、時には繁忙期で一時的に年収が「壁」の金額を超えてしまいそう…という時もあるかもしれません。そのような時期に備えての豆知識として、参考の1つになればと思います。
▼年収の「壁」越え 社会保険、一時的なら扶養外れず:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66279180W0A111C2PPN000/
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これらを知った上で、次は「手取り(収入)が増えれば、それだけで良いのか?」という点は、よくよく考える必要がある、という話題に移っていきます。

当然ながら、収入が増える=就業時間も増える、というのが一般的かと思います。その場合、とても重要なのが、「仕事と家庭のバランス」です。
このバランスが崩れることは、家計的な影響のみに限らないことから、手取りが減るということが、絶対に損なのか?という点について、ご自身やご家庭の状況から検討することが大切だとされました。
さらに次の話題では、キャリアの観点からも扶養範囲を超えることの意味について深堀されていきました。

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●自分で考えていくためのキャリア理論

個人的には、この箇所が今回のトーク内容で最も大切なポイントだと感じています。
社労士でありつつ、キャリアコンサルタントでもあり、かつ専業主婦のご経験もある永井さんからの、以下のようなアドバイスや問いかけは、私たちが今後について考えて行く時に、必ず意識していきたいポイントだと感じます。

◆ライフ・キャリア・レインボーの7つの役割
アメリカの教育学者である、ドナルド・E・スーパー博士が提唱したキャリア理論では、
人は生まれてからの長い人生で、子ども・学生・市民・職業人・配偶者・家庭人など、様々な役割を担っている、というライフプランの捉え方があるそうです。言われてみると当たり前でありつつも、1つの役割に集中しがちであることに気付かされます。
◆人生は思い通りではない
その他にも、Planned Happenstanceというキャリア理論もあります。教育学・心理学教授であるクランボルツ教授によって提唱されたキャリア形成理論で、日本語では「計画的偶発性理論」「計画された偶然」などと訳され、好奇心・持続性・楽観性・柔軟性・冒険心の5つの行動指針が挙げられています。

この中の、冒険心について永井さんからは、ご自身の社労士としてのキャリア形成にあたってのエピソードも紹介されました。資格取得からのブランクが長かったこともあり、パート勤務を始めた当時は続くか自信がないことも職場に正直に伝えつつ、それでも資格保有者として求められていたご縁があり、今に至るマインドを支える一因になったそうです。ご自身の予期しなかった数々の出来事を振り返られたお話も、とても印象的でした。

そして、「私たちのライフプランへの考え方」についても、以下のような問いかけが紹介されました。

Q,これからどんな働き方をしたいですか?
家計の足しになればいい、自分の自由になるお金があればいい、自分の名前で仕事ができるようになりたい、など人それぞれの考え方があって当然で、外部の立場から正しいかどうかを決めるものではありません。それを検討するにあたって、目先の損得だけでなく、将来像も視野に入れた検討の必要性が触れられました。

Q,あなたにとって大切なものとは?
キャリア・アンカー(船の錨(いかり))のように、個人がキャリアを選択する際に、自分にとって最も大切で、これだけはどうしても犠牲にできないという価値観や欲求・動機や能力を指すそうです。

いずれも最近では、よく耳にする問いかけだからこそ、とても重要な問いであり、継続的に意識していくことで、答えや自分の変化も見えてくる気がします。

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●この日からのFirst Step

損か得かに限らず、将来を考えてより良い選択をしていきたいと思う方も多いのではないでしょうか?
今回のトークでは、働くことによる収入や支出は、個々人の生活にも密接に関わるからこそ、リアルなトークや名言がたくさん出てきました。

その中には、シンシアさんからの
「実際に60歳になり、手元に届く年金定期便を見て、改めて考えさせられる点が多かった」
という実体験エピソードも、今回の参加者だから聞けた特別な情報になったという声がありました。確かに、自分の親以外から聞きにくい話題の1つかと感じます。
・今後、自分に支給される年金の金額
・年金を65歳で受け取り始めるか、75歳で開始するかの違い
・贅沢をしない今の必要最低限の生活費

また、そのリアルな話を交えつつも、実際の自分に置き換えて考える為に、永井さんやシンシアさんからの言葉がヒントになりそうです。

働き続けられる自分でいる為のスキルを意識する(永井さん)
・「〇〇に詳しい人から聞いた話」やWeb情報の鵜呑みは危険(永井さん)
・有料でも信頼できる専門家から確かな情報を得る検討も(シンシアさん)
・老後に、時給1,000円の求人も可能な体力を維持しよう(シンシアさん)

例えば、年金については、長い期間で保険を収めていた方が、将来的に受け取れる金額は大きく、ゆとりには繋がるという考え方もあります。
では、「ブランク期間を持たずに、早く就職するべきなのか?」という参加者からの質問に対してシンシアさんからは
「自分が何を大切にするかによる。だから自分の価値観を分析することが重要」だとの言葉がありました。

収入と税金の関連性や、将来の支えとなる公的支援を見据えて、自分がどの壁と上手く付き合っていくか、今後も重要な視点になってきそうです。今回のトークでも紹介された、様々あるキャリア理論の掛け合わせからも、自分にピッタリ合う選択を重ねていくことが、もっとも「自分にとって大切にしたい瞬間を損しない」ことに繋がっていくのかもしれません。

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