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『すずめの戸締まり』は、「理由を聞かない人の助け」と「理由を聞きたがる人の妨げ」で進む


2023年1月1日(日)朝の6:00になりました。

おひさしぶりです。どうも、高倉大希です。




理由が人を動かします。

はじめる理由、やめる理由。
挑戦する理由、諦める理由。
運動する理由、勉強する理由。
生きる理由、死ぬ理由。

理由がないように見える「散歩」でさえ、健康のためだとか、リフレッシュのためだとか。何かと理由をつけたがります。

我々は、理由の種をまき、理由を育て、理由を食べながら生きています。


『すずめの戸締まり』©2022「すずめの戸締まり」製作委員会


先日、新海誠監督の最新作である『すずめの戸締まり』を観に行ってきました。

この作品でも「理由」が、物語の鍵を握っています。


『すずめの戸締まり』©2022「すずめの戸締まり」製作委員会


たとえばこの「海部千果」という人物は、主人公である「岩戸鈴芽」の言動に対して、深く理由を追求しません。

急いでいると知れば、バイクの後ろに乗せ
困っていると知れば、食事と寝床を提供します。

これらを「彼女の優しさ」として描くことで、視聴者への「理由の説明の重複」を省いています。

ちなみに本作品および過去の作品にも、同様の特徴をもった人物が登場します。

彼ら、彼女らは、理由を問わないという無償の優しさをもって、物語を前に進めます。


『すずめの戸締まり』©2022「すずめの戸締まり」製作委員会


一方で、主人公の叔母にあたる「岩戸環」は、とことん理由を聞きたがります。

どこに行ったの!?何をしているの!?
誰といるの!?いつ帰ってくるの!?

これらを「彼女の心配」として描くことで、言動に理由を求める人間の性に寄り添います。

ちなみにこちらも同じく、過去の作品にも、同様の特徴をもった人物が登場しています。

彼ら、彼女らは、理由を問いただすことをもって、物語に起伏を生み出します。


『すずめの戸締まり』©2022「すずめの戸締まり」製作委員会


「理由」が関与するのは、何も登場人物に限った話ではありません。

この作品の肝は、おそらくこのセリフです。


気まぐれは神の本質だからな。

宗像草太のセリフより


『君の名は。』で描かれた、隕石。
『天気の子』で描かれた、豪雨。
『すずめの戸締まり』で描かれた、地震。

「厄災」と呼ばれるこれらのできごとには、人類が認識しうる「理由」がありません。

理由がわからないものに対峙したとき、我々は突如にして無力になります。

だからこそ、物語をつくります。


想像を超えた大きな出来事が起きた時、人間は神話や説話や昔話など自分の手のひらに乗るサイズにまとめて物語の形にパッケージ化することで、認識可能な状態にして、起きたことの意味を考えるよすがにします。

『すずめの戸締まり』、新海誠監督ロングインタビューより


矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、

この物語には「理由のないものに、物語という理由を与える」という側面と

「理由のないものを、恐れずにそのままの形で受け止める」という側面の

両方が内包されているような気がします。


ここに来るまでの経緯なんて教えてどうする

BUMP OF CHICKEN「arrows」より


このnoteを読むことに、理由は問いません。

2023年も何卒よろしくお願い致します。





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