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日本人は英語が喋れない、という悲しい認識

「あなた、日本人なのに英語喋れるの?」

これは僕が海外へ行ったとき、よく耳にする言葉だ。英語は世界の共通言語なのだが、どうやら「日本人は英語が喋れない」も世界共通の認識らしい。僕たち日本人は世界から取り残されているのだろうか?

昔、僕はベトナムを一人旅した。子どものころ、ベトナム戦争の映画をよく見てたから、一度行ってみたかったのだ(「プラトゥーン」が印象的だった)。

ホー・チ・ミン滞在中のこと、メコン川付近をボートで川下りができるツアーがあった。ホテルのロビーで申し込もうとしたら「日本語ガイド」と「英語ガイド」の2種類があった。日本語の方が楽なんだけど、せっかく海外まで来て日本人と群れたくなかったので、英語でのガイドツアーに参加した。

受付の女の子は「日本人はあんまり英語、話せないのに、大丈夫?」と心配してくれた。僕は「多分・・・」と笑顔で返事した。

早朝、ホテルまで観光バスが迎えに来てくれた。僕が一番乗りだった。すると、ガイドのベトナム人男性が「Mr,Saito、これは英語でのツアーですが、大丈夫ですか?」と、間違えてないか心配そうに訊ねてきた。

「大丈夫ですよ。僕は若い時に短い間ですが、アメリカに留学していたので、大体のところはわかります」
「そうなんですね。いや〜日本人は英語喋れないから、英語ツアーへの参加は珍しいなあ、と思いまして」と彼は不思議そうな顔をしていた。彼にとって、英語でのツアーに参加する日本人はまれのようだ。

その後、バスはホー・チ・ミン市内のホテルを巡回し参加者をピックアップした。車中で、名前とどこの国から来たのかという、簡単な自己紹介があった。アメリカ人、ルーマニア人、サウジアラビア人、インドネシア人、中国人、韓国人となかなか多様性に満ちたメンツだった。日本人、お一人様は僕だけで、他はファミリーか2人組だった。

僕は最前列の席に座っていたので、ガイドと色々、話をした。お互い身の上話でバツイチであることがわかると、一気に彼への親近感が増した。こういう体験の辛さは、世界共通なんだろうなあ。

ツアーは川下り体験以外にも、色んな名所観光をしてくれたのでなかなか楽しかった。みんなでブラブラ歩いていると会話も増え、だんだん仲も良くなってくる。共通言語はもちろん英語だ。

昼食は何グループかに分かれて丸テーブルに着いた。僕はサウジアラビア・ファミリーとインドネシア・ファミリーと同席だった。サウジアラビアン父とインドネシアン父は、何や熱心に話し込んでいる。僕は子どもたちと仲良くなったので、お互いの国で何のアニメが流行っているのかを話していた。「Doraemon」は世界共通語だ。

すると、父親連合チームが「Mr,Saito、私たちはアジアの経済状況について話していたのだが、日本の景気はいかがですか?」といきなり質問してきた。

「知らんがな・・・」と経済オンチの僕はあたふたしたのだが、知っている知識をフル動員して「ええと・・・」と話してみた。

「日本では長らくデフレーションが続いており、物価はアメリカほど急激には上がっていません。よって所得も上がらないので、日本は90年代ほどの豊かさはもうありません。特に若者にしわ寄せがいってます」みたいなことを適当に話した。

連合チームは納得したみたいで、「あなたは日本人なのに英語が上手ですね」と褒めてくれた。いえいえ、どういたしまして。僕は熱帯のベトナムで冷たい汗をかいた。

夕方、また一件ずつホテルを周っての解散だった。僕の順番が一番先だった。バスを降りる時「ありがとう、楽しかったです」と言うと、車内の全員が「Mr、Saito, ありがとう。良き旅を!」と手を降ってくれた。道路からバスを見送るときも、みんなずっと手を振ってくれていた。

胸がとってもぽかぽか暖かった。今日一日、彼らと親密な時間を過ごせたんだと実感した。世界中に友達ができたような気すらした。つくづく、こっちのツアーを選んで良かったと、自分の選択を褒めてあげたくなった。

ホテルに入ると、ロビーで受付の女の子が「英語、大丈夫だった?」と訊いてくれた。僕はそろそろ、うんざりしながらも「うん、とっても楽しかったよ」と笑ってかえした。

日本人の英会話力が上がることを、切に願う。


追記:ホー・チ・ミンで僕のオススメのレストランはSecret Gardenです。路地裏の怪しげなビルの屋上にあります。美味しいベトナム料理を楽しめますよ!



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