■整理解雇の4要件
『整理解雇の4要件』とは、以下の4つを指している。
(1)人員削減の必要性
(2)解雇回避の努力義務の履行
⇒非正規雇用者の雇い止め、新規採用の雇い控え
⇒残業抑制、減給、休業、希望退職募集など
(3)被解雇者選定の合理性
(4)解雇手続きの妥当性
⇒労働組合や労働者への説明や協議
この概念は、いつ、どのような経緯でできたのか。
■日本食塩事件の判例
1975年4月25日。
最高裁第二小法廷が、「日本食塩事件」について、以下の判決文を出した。
これが、後の「労働基準法第18条の2」の原型となった。(後述)
■大村野上事件の判例
1975年12月24日。
長崎地方裁判所大村支部が、「大村野上事件」の判決について、『整理解雇4要件』を示した。
この時の判例が『整理解雇4要件』を定式化した最初の判例とされている。
■東洋酸素事件
1979年10月29日。
東京高等裁判所が、「東洋酸素事件」の判決について、『整理解雇4要件』を示した。
この時の判例が『整理解雇4要件』として引用される事が多い。
それ以来、解雇絡みの裁判は、この判例が判断基準となり、整理解雇(リストラ)をするには4要件を全て満たす必要があり、1つでも欠けた場合の解雇は無効とする判断を下されるようになった。
但し、近年はそこそこ緩和されているようで、4要件ではなく"4要素"と表現される事もある。
また、訴訟リスクが少なく、経営体力がない中小零細企業ほど厳格に使われず、やむなく解雇という事もあるようだ。
■労働基準法と労働契約法
◎2003年3月7日
「労働基準法の一部を改正する法律案」を提出。
◎2003年6月5日
衆議院本会議で可決。
◎2003年6月27日 <小泉内閣>
参議院本会議で可決成立。(閣法156-77)
◎2004年3月1日
「労働基準法の一部を改正する法律案」施行。
「労働基準法」第18条の2に、解雇に関する条文を追加。
最終的には、「日本食塩事件」における最高裁の判例文の一部をほぼ採用する形となり、法律によって解雇の権利濫用を防止できるようになった。
◎2007年9月10日 <安倍内閣>
「労働契約法案」を提出。
◎2007年11月8日
衆議院本会議で可決。
◎2007年11月28日
参議院本会議で可決成立。(閣法166-80) <福田内閣>
◎2008年3月1日
「労働契約法」施行。
これによって、従来の「労働基準法第18条の2」は、「労働契約法第16条」に"移動"となった。内容は一字一句変わらず。
◇裁判所の判例によってできた『整理解雇の4要件』
◇法律(労働基準法→労働契約法)による『解雇規制』
これらが、立場が弱いとされる労働者を守ってきたと言われているが、果たして本当にそうなのだろうか?
次回へ続く。