中央銀行の金融政策

■金融政策とは?

中央銀行がマネタリーベース(通貨流通量)を調節して、経済の循環を調整する政策。

(1)市場の通貨流通量が不足
→通貨価値が上がる
→物価が下がる(デフレ)

(2)市場の通貨流通量が過剰
→通貨価値が下がる
→物価が上がる(インフレ)


主な手法としては「政策金利操作」「公開市場操作」「量的緩和と質的緩和」「支払準備率操作」がある。


■政策金利操作

◎コスト効果
貸出金利が変わる直接的効果

(1)政策金利を下げる(金融緩和)
・銀行の貸出金利が下がる
 ⇒企業や個人がお金を借りやすくなる
・銀行の貸出の増加(信用創造の額の増加)
 ⇒マネーストックの増加

・景気の拡大・投資の増加
・物価に押し上げ圧力

(2)政策金利を上げる(金融引締)
・銀行の貸出金利が上がる
 ⇒企業や個人がお金を借りにくくなる
・銀行の貸出の減少(信用創造の額の減少)
 ⇒マネーストックの減少

・景気の抑制・投資の減少
・物価に押し下げ圧力


◎アナウンスメント効果
公定歩合の変更を宣言する間接的効果


☆預金金利と信用乗数(貨幣乗数)との関係

信用乗数=マネーストック÷マネタリーベース
マネーストック=信用乗数×マネタリーベース

信用乗数とは、マネタリーベース(中央銀行が市場に供給する資金量)とマネーストック(経済全体の通貨供給量)との関係によって成り立つ。

(1)預金金利を下げる
預金で保有する人が減少
預金に対する現金の比率が上昇
 ⇒信用乗数が低下する

(2)預金金利を上げる
預金で保有する人が増加
預金に対する現金の比率が低下
 ⇒信用乗数が上昇する

信用乗数が一定に保たれる事で、マネタリーベースを元に、マネーストックをコントロールできる事になる。


■公開市場操作

(1)資金供給オペレーション(買いオペ)
・国債を買入(中央銀行の資産増加)
・代金は日銀当座預金に振り込み(中央銀行の負債増加)
 ⇒マネタリーベースの増加

・銀行の貸出金利が下がる
 ⇒企業や個人がお金を借りやすくなる
・銀行の貸出の増加(信用創造の額の増加)
 ⇒マネーストックの増加

・景気の拡大・投資の増加
・物価に押し上げ圧力

(2)資金吸収オペレーション(売りオペ)
・国債を売却(中央銀行の資産減少)
・代金は日銀当座預金から引き落し(中央銀行の負債減少)
 ⇒マネタリーベースの減少

・銀行の貸出金利が上がる
 ⇒企業や個人がお金を借りにくくなる
・銀行の貸出の減少(信用創造の額の減少)
 ⇒マネーストックの減少

・景気の抑制・投資の減少
・物価に押し下げ圧力


■量的緩和と質的緩和

◎量的緩和
マネタリーベースの増加。
(日本銀行券発行高+貨幣流通量+日銀当座預金)


◎質的緩和
長期国債、ETF、J-REIT等の買い入れ。
 ETF…上場投資信託
 REIT…不動産投資信託証券


■支払準備率操作

(1)支払準備率を下げる
銀行の資金が増加する
市場の資金供給量(マネーストック)の増加
 ⇒信用乗数の上昇
銀行の貸出金利が下がる
企業や個人がお金を借りやすくなる
 ⇒銀行の貸出の増加

(2)支払準備率を上げる
銀行の資金が減少する
市場の資金供給量(マネーストック)の減少
 ⇒信用乗数の低下
銀行の貸出金利が上がる
企業や個人がお金を借りにくくなる
 ⇒銀行の貸出の減少

但し、現在はこの操作は利用されていないようです。


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