株主の配当圧力

企業活動において、利益剰余金(内部留保)の推移は非常に重要な要素の一つであるが、それよりも更に見逃してはならないのが、出資してくれた株主に支払う「株主配当金」である。

2021年度……63兆0071億円(うち、配当金29兆8649億円・構成比47.4%)
2020年度……38兆5357億円(うち、配当金26兆2437億円・構成比68.1%)
2019年度……44兆9630億円(うち、配当金24兆3951億円・構成比54.3%)
2018年度……62兆0300億円(うち、配当金26兆2068億円・構成比42.2%)
2017年度……61兆4707億円(うち、配当金23兆3182億円・構成比37.9%)
2016年度……49兆7465億円(うち、配当金20兆0802億円・構成比40.4%)


2000年頃までは、当期純利益の伸縮に関わらず、配当金はほぼ一定であったが、
2002年以降は、当期純利益の伸びに比例して、配当金も上がるようになってきた。

これは一体どういう事なのか。


■株主の配当圧力

日本取引所グループによると、東証プライムにおける海外投資家の株式保有比率は、株数・金額ともに売買合計で65%以上である。これだけ多くの外資が日本の取引所に入り込んでいる。


配当金が上昇してきた理由の一つとして、海外投資家からの配当圧力が挙げられる。

海外投資家(委託者)は、多くの上場企業の大株主一覧によく名を連ねている「日本マスタートラスト信託銀行」や「日本カストディ銀行」といった"カストディアン"(受託者)に資産管理を委託し、株式投資(資産運用)をし、日本企業に配当圧力をかけている。

企業は、株主からの出資によって成り立っていることもあり、何らかの形で株主に対してどうしても"忖度"せざるを得ず、また、企業としても買収防衛対策も講じなければならない。

企業や従業員を生かさず殺さずの分量で搾取し、最大限の配当圧力をかけてくるのが海外投資家のやり方だ。事実上、議決権を行使する存在に思われても不思議ではなかろう。


■働く従業員の給料がなかなか上がらない原因

こうした配当圧力が、働く従業員の給料がなかなか上がらない原因の一つにもなっている。

なぜなら、配当金に多く回そうと思ったら、その原資である当期純利益を多く確保しなければならず、「販売費及び一般管理費」(販管費)の給料手当や賞与がその犠牲となるからだ。

「そのせいで思うように給料が伸びないのでは?」という発想になってもいいと思うのだが、金融リテラシーの低い日本人にはピンと来ないのかもしれない。


■世界で生産される全ての商品やサービスの価値よりも何倍も大きい金融経済

以前のnoteにも記したように、今や金融市場は、世界で生産される全てのモノやサービスの付加価値より何倍も大きくなっているという現実がある。

「金融」こそが世界の経済を動かし支配していると言っても過言ではなく、海外にいる"物言う株主"が配当圧力を強め、利益を最大化しようしていても何ら不思議ではない。外資比率が高いというのはそういう事。

共産党ら野党があれだけ「内部留保に課税しろ!」などと言っているが、そんな事をすればますます配当圧力は強くなるばかりだろう。



<参考>
※証券経済学会年報
https://www.sess.jp/publish/
・大株主としての「信託口」
https://www.sess.jp/publish/annual/pdf/an51/an04.pdf


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