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【農林水産省・水産庁】第4回資源管理方針に関する検討会(ステークホルダー会合)(スルメイカ全系群) 概要

【農林水産省・水産庁】第4回資源管理方針に関する検討会(ステークホルダー会合)(スルメイカ全系群) 概要(本文2,297文字)
 
農林水産省・水産庁は、令和6年8月6日に第4回資源管理方針に関する検討会(ステークホルダー会合)(スルメイカ全系群)を開催し、水産資源としてのスルメイカについて管理方針、状況他について検討を行いました。
 
<議事>
1. 現行の資源管理方針について
2. 資源の状況について
3. 今後SH(ステークホルダー)会合で検討すべき事項について
4. 今後のスケジュールについて
5. まとめ
 
<用語の解説>
ステークホルダー向けの本検討会の議事内で使用されている用語のうち、特に重要なものを登場順にピックアップします。
■資源管理の目標: 令和3年度資源評価結果を踏まえて目標管理基準値等の資源管理目標を設定
■MSY: 最大維持可能漁獲量または最大持続生産量、生物資源を減らすことなく得られる最大限の漁獲量、Maximum Sustainable Yield
■TRP: 目標管理基準値、MSYを達成するために維持・回復させるべき目標となる親魚量、Target Reference Point
■LRP: 限界管理基準値、下回ってはいけない資源水準の値、MSYの60%の漁獲量から得られる親魚量、Limit Reference Point
■禁漁水準値: MSYの10%の漁獲量から得られる親魚量
■漁獲シナリオ: 資源水準の値に応じた漁獲圧力(Fmsy)を決定する
ア. 親魚量が限界管理基準値以上にある場合には、MSYを達成する水準に係数βを乗じた漁獲圧力とする
イ. 親魚量が限界管理基準値を下回るが、禁漁水準以上ある場合には、親魚量の値に応じて更に削減した漁獲圧力とする
ウ. 親魚量が禁漁水準を下回る場合には、漁獲圧力をゼロとする(実際の管理においては、目的採捕の禁止)
■β: 資源回復のために用いられる係数、資源が低水準(乱獲状態)ほど値の小さいβを適用する
■ABC: TACを決定するために用いられる生物学的許容漁獲量、Allowable Biological Catch
■TAC: 漁獲可能量、Total Allowable Catch
■EEZ: 排他的経済水域、Exclusive Economic Zone
■NPFC: 北太平洋漁業委員会、North Pacific Fisheries Commission
■SBmsy: 期待される漁獲量がMSYとなる親魚量
■Fmsy:  MSYを実現する漁獲圧
 
<概要>
1. 現行の資源管理方針について
1-1. 資源管理の目標
1-1-1. 秋季発生系群
・ MSY: 273千トン、329千トン、TRP: 329千トン、LRP: 189千トン、禁漁水準値: 30千トン
1-1-2. 冬季発生系群
・ MSY: 149千トン、TRP: 234千トン、LRP: 132千トン、禁漁水準値: 14千トン
1-2. 漁獲可能量(TAC)の算定方法
・ TACは、我が国のABCを超えない量とする
・ 日本のABCは、水域全体のABCから、外国による漁獲に係るものを除いた値とする
・ ABCは、韓国、ロシア、中国(太平洋側)の漁獲データも使用して算出していることから、日本のABCはスルメイカ総漁獲量に占める我が国の割合の最大値(6割;2007年実績)とする
・ 中国(日本海側)の漁獲については違法な操業によるものであることから、TACの算定に算入せず、仮定値を使用する
・ スルメイカ秋季発生系群と冬季発生系群は、産卵場のほとんどが重複しており、両系群の分布域及び分布時期も広く重複することから、資源評価は発生系群ごとに実施するが、漁獲可能量は両資源のABCの合計値から、外国による漁獲に係るものを除いた値として一体管理する
・ 具体的には、令和4年(2022年)から令和6年(2024年)までは 、次のAおよびBに掲げる値の合計値に0.6 を乗じた値とする
A. するめいか秋季発生系群については、令和3年(2021年)の資源評価において示される令和4年(2022年)の資源量に、MSYを達成する水準にβ=0.40を乗じた漁獲圧力(0.40Fmsy)を乗じた値し、127千トン
B. するめいか冬季発生系群については、令和3年(2021年)の資源評価において示される令和4年(2022年)の資源量に、MSYを達成する水準にβ=0.45を乗じた漁獲圧力(0.45Fmsy)を乗じた値とし、5千トン
・ この管理方策によれば、10年後(2031年)に親魚量がTRPを上回る確率は、するめいか秋季発生系群は74%、また同冬季発生系群は60%になると算出される
・ したがって、日本のABC(秋季ABCと冬季ABCの合計値の6割)は79.2千トンとなる
・ なお、スルメイカは単年魚であり資源自体が毎年変動することから、SH会合で提示された「漁獲圧を一定とするシナリオ」、「獲り残しの割合を一定とするシナリオ」、「漁獲量を一定とするシナリオ」のうち、水産庁は管理を安定させる観点から「三年間漁獲量を一定とするシナリオ」を採用している
1-3. IQ管理の導入
・ 令和5管理年度から改正漁業法に基づくIQ管理に移行
1-4. 令和6管理年度の管理措置
・ 現行のTAC算定方法を踏襲し、当初配分の対象とする数量は29,000トン、残りの50,200トンは国の留保とする
・ 国の留保は、漁獲対象となる資源が急に増える可能性があること等を踏まえ追加配分を行う
2. 資源の状況について
スルメイカ秋季発生系群と冬季発生系群の資源の状況は下表のとおり;
 
表: スルメイカ秋季発生系群と冬季発生系群の資源の状況(検討会配布資料をもとに筆者が作成)

3. 今後ステークホルダー会合で検討すべき事項について
「資源管理の目標について」ならびに「漁獲シナリオについて」の2点、および関連するその他の事項
4. 今後のスケジュールについて
・ 令和6年10月に第5回SH会合を開催し、最新の資源評価結果等を踏まえ資源管理の目標と漁獲シナリオの検討の方向性について議論
・ 令和6年12月17日から開催予定のNPFC科学委員会第9回年次会合の結果報告を受け、同年12月下旬に第6回SH会合を開催し、令和6年度資源評価結果について、資源管理の目標(案)および漁獲シナリオ(案)の提示を含む説明、資源管理目標、および漁獲シナリオ等について議論する予定
 
<配布資料>
資料1:議事次第
https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/kanri/attach/pdf/231027_8-1.pdf
資料2:出席者リスト
https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/kanri/attach/pdf/231027_8-8.pdf
資料3:現行の資源管理方針について
https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/kanri/attach/pdf/231027_8-9.pdf
資料4-1:資源の状況について(スルメイカ冬季発生系群)
https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/kanri/attach/pdf/231027_8-3.pdf
資料4-2:資源の状況について(スルメイカ秋季発生系群)
https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/kanri/attach/pdf/231027_8-4.pdf
資料5:今後SH会合で検討すべき事項について
https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/kanri/attach/pdf/231027_8-5.pdf
資料6:今後のスケジュールについて
https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/kanri/attach/pdf/231027_8-6.pdf
※議事録は後日公表予定
https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/kanri/231027_8.html
 
 
 
<一次情報>
第4回資源管理方針に関する検討会(ステークホルダー会合)(スルメイカ全系群)
https://www.maff.go.jp/j/pr/event/kaigi.release.html#0806
 
<参考情報>
【国立研究開発法人水産研究・教育機構】
資源評価・資源管理の用語
http://abchan.fra.go.jp/yougo/yougo.html
用語集
https://www.fra.affrc.go.jp/shigen_hyoka/SCmeeting/2019-1/glossary20190610.pdf
【一般社団法人漁業情報サービスセンター】資源評価票ダイジェスト版 用語集
https://www.jafic.or.jp/tac/abc/pub104-2t.pdf
 
<関連情報>
資源管理方針に関する検討会(ステークホルダー会合)

1. サバ類
https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/kanri/231027_3.html
2. マアジ・マイワシ
https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/kanri/231027_10.html
3. スケトウダラ
https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/kanri/231027.html
4. ズワイガニ
https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/kanri/231027_9.html
5. スルメイカ
https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/kanri/231027_8.html
6. カタクチイワシ・ウルメイワシ
https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/kanri/231027_7.html
7. マダラ
https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/kanri/231027_6.html
8. マダイ
https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/kanri/231027_5.html
9. ブリ
https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/kanri/231027_4.html
 

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