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令和5年度食品安全オンラインセミナー「有機フッ素化合物(PFAS)の食品健康影響評価書(案)」

令和5年度食品安全オンラインセミナー「有機フッ素化合物(PFAS)の食品健康影響評価書(案)」(本文1,562文字)

 
<追記>
令和6年6月25日開催の第944回食品安全委員会においてPFASの評価書がとりまとめられました。またPFASワーキンググループ座長の姫野誠一郎へのインタビュー記事、Q&Aが更新されています。
「有機フッ素化合物(PFAS)」の評価に関する情報https://www.fsc.go.jp/osirase/pfas_health_assessment.html


内閣府食品安全委員会がPFAS評価書(案)の概要を解説した、令和6年2月22日開催のオンラインセミナーの講演部分が配信されています。
評価書(案)に基づき、ヒトが食品を介して摂取したPFASの影響、現時点で得られている科学的知見から言えること、そしてさまざまな試験や調査研究のデータをどのように考慮したのか、などについて50分ほどで解説しています。
 
<有機フッ素化合物(PFAS)とは>
「PFAS」とは「パーフルオロアルキル化合物、ポリフルオロアルキル化合物及びこれらの塩類」あるいは「パー及びポリフルオロアルキル物質」の略称で、代表的なものとしてはPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)などがあります。これらの物質を一括して「有機フッ素化合物」、または英語表記の頭文字から「PFAS(Per- and Polyfluoroalkyl substances)」と呼んでいます。
「PFAS」は、炭素に結合している水素原子がフッ素原子に置換された有機化合物で、通常自然には生成せず工業的に製造された物質です。撥水・撥油性などに優れ、様々な用途で使用されてきましたが、近年は難分解性、高蓄積性、および人体への長期毒性などが問題視されています。すでにPFOS、PFOA、およびPFHxSは化審法に基づく第一種特定化学物質に指定され、製造・輸入が原則禁止されています。水道水質においてもPFASの暫定目標値が設定されています。
 
<有機フッ素化合物(PFAS)の食品健康影響評価書(案)の解説概要>
以下は解説の概要です。詳細な内容は動画をご確認ください。
1 評価について
1-1 評価対象と目的
対象物質はPFOS、PFOA、PFHxSであり、評価目的は、これらの物質が人体に与える健康影響を明らかにし、必要に応じてリスク管理方策を検討することです。
1-2 評価方法
動物実験、疫学研究などの科学的知見に基づき、ハザードの特定、リスクの評価、リスク管理方策の検討を行いました。
1-3 評価結果
1-3-1 肝臓への影響: PFOS、PFOA、PFHxSは、肝機能に影響を与える可能性があります。
1-3-2 脂質代謝への影響: コレステロール値の上昇など、脂質代謝に悪影響を与える可能性があります。
1-3-3 免疫機能への影響: 免疫機能を低下させる可能性があります。
1-3-4 生殖機能への影響: 生殖機能に悪影響を与える可能性があります。
1-3-5 発がん性: PFOSとPFOAは、発がん性がある可能性があります。
1-4 今後の課題
1-4-1 動物実験と疫学研究の更なる整合性の検討
1-4-2 低用量暴露の影響の評価
1-4-3 個体差の影響の評価
1-5 結論
PFOS、PFOA、PFHxSは人体に様々な健康影響を与える可能性があり、更なる研究とリスク管理方策の検討が必要であることが示唆されました。
 
2 PFOS・PFOAの健康影響に関するリスクアセスメントの詳細について
2-1 疫学研究
PFOS・PFOAの健康影響に関する疫学研究では、様々な結果が報告されていますが、現時点では確実な結論を出すことは難しい状況です。
2-2 動物実験
動物実験では、PFOS・PFOAが生殖発生に影響を与えることが示唆されています。
2-3 TDIの設定
動物実験結果に基づき、PFOSについてTDI(一日許容摂取量)を暫定的に設定しました。
2-4 現時点での暴露量と健康リスク
2-4-1 食事からの摂取が最も多い: PFOS・PFOAは、主に食事を通じて人体に取り込まれます。
2-4-2 水道水からの摂取: 水道水におけるPFOS・PFOA濃度が懸念されていますが、地域によって濃度が大きく異なります。
2-4-3 TDIと比較して低い暴露量: 現時点におけるPFOS・PFOAの暴露量は、TDIと比較して低いと考えられます。
2-4-4 過剰な懸念による食生活の変化は避ける: 不安から極端な食生活の変化を行うことは、栄養学的な問題を引き起こす可能性があります。
2-5 今後の課題
2-5-1 情報不足の解消
2-5-2 高暴露個人の把握
2-5-3 暴露経路の推定
2-5-4 リスク管理の推進
2-5-5 リスクコミュニケーション
2-6 結論
PFOS・PFOAの健康影響に関する研究は初期段階であり、更なる研究と情報収集、暴露量把握、リスク管理、リスクコミュニケーションの強化が重要です。
 
 
<一次情報(動画)>
令和5年度 食品安全・オンラインセミナー「有機フッ素化合物(PFAS)の食品健康影響評価書(案)」
https://www.youtube.com/watch?v=zwktwnGHRQQ 


<関連資料>
PFASの食品健康影響評価書(案)
https://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20240206fsc&fileId=100
「有機フッ素化合物(PFAS)」評価書(案)に関するQ&A(第3版:令和6年2月13日更新)
https://www.fsc.go.jp/foodsafetyinfo_map/pfas_faq.html
 
<関連動画>
食品安全委員会は、「FSCJアーカイブス」として食の安全安心に関する30~60分ほどの解説動画を公開しています。
FSCJアーカイブス
https://www.youtube.com/playlist?list=PLlxlcYeJg_L_HMZeFQRn7iAlo31R3Y5bZ
(0204/06/25現在公開されている動画)
注:*1と*2はそれぞれ同名のタイトルですが内容は異なります。
01 食べ物の基礎知識~食品の安全と消費者の信頼をつなぐもの~
02 食品のリスクマネジメント@キッチン
03 相手を知ってやっつけよう~主な細菌性食中毒の特徴と対策~
04 誰もが食べている化学物質〜食品の加工貯蔵中の化学変化の安全性〜
05 冷蔵庫に入れれば大丈夫?~食品の保存を理解する~
06 カフェインは危ない?~コーヒーを科学する~
07 動物の健康はヒトの健康~動物用医薬品を知る~
08 食べたものはどこにいく?過剰摂取のリスク〜脂質の例〜
09 食品に生える「かび」の基礎知識と「かび毒」のリスク評価〔令和4年度食品安全モニターセミナーより〕
10(*1) 令和4年度 食品安全セミナー「健康食品による健康被害を防ぐために」情報提供編
11(*2) 令和4年度 食品安全セミナー「健康食品による健康被害を防ぐために」質疑応答編
12(*1) 令和4年度 食品安全セミナー「健康食品による健康被害を防ぐために」情報提供編
13(*2) 令和4年度 食品安全セミナー「健康食品による健康被害を防ぐために」質疑応答編
14 令和5年度 第2回報道関係者との意見交換会「農薬の再評価に係る食品健康影響評価」について〜試験データを私たちはどう判断するのか〜見逃し配信
15 令和5年度 食品安全・オンラインセミナー「有機フッ素化合物(PFAS)の食品健康影響評価書(案)」
16 令和5年度 食品安全セミナー「農薬の再評価に係る食品健康影響評価」について〜試験データを私たちはどう判断するのか〜
 

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