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ETHステーキングの新展開:Shapellaアップグレード後の数字が語る未来

こんにちは、Fintertechの斎藤です。

今回は、Ethereumで現在注目されているETHステーキングについて、その盛り上がりの状況と今後注視すべき事項について何回かに分けて解説していきます。

第1回は、Shapellaアップグレードが完了してからの4カ月間におけるETHステーキング関連の状況や、ETHステーキングを理解する上で重要な要素であるActivation Queueの見通しをいくつかの数字とともにみていきます。

「ETHのステーキングについては知っている」「けどここまでの内容は追い切れていなかった」というような方向けの情報を盛り込んでいますので、ぜひ最後まで読んでいただければと思います。

ETHステーキングについての説明は以前の記事(リンク)をご参照ください。

Shapellaアップグレードの完了によるETHステーキングの盛り上がり

2023年4月に、Ethereumの大型アップグレードであるShapellaが無事完了しました。Shapellaアップグレードは、EthereumネットワークへステーキングしていたETHを引出すための処理が実装されるということで、アップグレードが成功するかどうか、世界中から熱い視線を浴びた一大イベントでした。

ETHステーキングには、そのShapellaアップグレードにより無事にETHの引出しが確認できたことを皮切りに、世界中から大量のETHが殺到しました。以下は記事執筆時点においてEthereumへステーキングされたETH数量の日次推移を示した図になります。

引用:https://beaconcha.in/charts/deposits

ステーキングされたETH数量は、Shapellaアップグレード(日本時間2023年4月13日 午前7時半頃に完了)以降、一定以上の数量が常にステーキングされていることがわかります。記事執筆時点では、バリデータノードの有効化待ちのものも合わせて26,196,796ETH(約6兆5千億円)です。この数字は、ETH総供給量の22.03%を占めます。

引用:https://dune.com/hildobby/eth2-staking

Active Validator数は、Shapellaアップグレード以降、Ethereumネットワークからの退出予約をしていたバリデータノードの処理がはけた2023年5月9日ごろから右肩あがりで増加し続けています。

引用:https://beaconcha.in/charts/validators

このようにいくつかの数字やグラフを見てもわかる通り、ETHステーキングはShapellaアップグレードで引出しができるようになったことを機に非常に盛り上がりを見せました。

そしてこれらの盛り上がりに伴い、Activation Queueもかなりの日数になりました。

ETHステーキングの増加に伴うActivation Queueの延伸現象

Activation Queue(アクティベーションキュー)とは、Ethereumネットワークにステーキングする(正確には32ETHをDepositする)処理の実行後、その処理に紐づくバリデータノードがネットワークで有効化されリワードを獲得し始めるまでにかかる待ち行列のことです。以下のように待機日数で表されることが多いです。

引用:https://www.blockdaemon.com/shapella

上記の図は2023年8月30日時点のものですが、32ETHのDeposit後、有効化待ちのバリデータノードが55,001台いるということと、今Depositを行ったら22日と5時間超後に有効化されるということを示しています。22日間、けっこう長く感じますよね。しかしこのActivation Queueによる待機日数が、2023年6月にかなり延伸する事態が発生しました。日数としては、最長で45日を超えるタイミングもありました。32ETHをステーキングしたら1.5カ月はネットワークからETHの引出しができず、かといってリワードも生まないでただコントラクトにロックされるわけです。以下の青線はActivation Queueの待機日数の日次推移です。

引用:https://www.validatorqueue.com/

6月に入ってから待機日数が40日超の日々が1カ月続きました。記事を執筆している現在はかなり落ち着いてきましたが、ステーキングに注目が集まり、キューが非常に混雑していたことが見て取れます。

Activation Queueも、正常に戻りつつある

Activation Queueは、一度にネットワークに入る新しいバリデータの数を制限するために設けられたEthereumネットワーク自体の仕様です。記事執筆時点では一日に2,475台のバリデータノードが有効化可能です。そしてこの一日に有効化可能なバリデータノードの数量は、Active Validatorの数量によってかわります。

https://github.com/ethereum/consensus-specs/blob/dev/specs/phase0/beacon-chain.md を元にFintertech作成

記事執筆時点では有効なバリデータ数が761,036台ですが、Activation Queueには5万以上の待ち行列ができているため、しばらくの間は一日に有効化可能なバリデータ数の最大値分が有効化される日々が続きます。そのことを前提とすると、多少の誤差はありますが、一日に有効化可能なバリデータ数は2023年9月9日ごろに2.700台、2023年10月2日ごろに2,925台に増えることが想定されます。そうすると、Activation Queue待ちによる待機日数の減少速度も早まり、正常に戻っていくことが推察されます。

ここまでのまとめ

Shapellaアップグレードの完了によるETHステーキングの盛り上がりの状況と、それに伴うActivation Queueの延伸現象について確認したうえで、今後はEthereum自体の仕様によってActivation Queueによる待機日数も正常化に向かうという内容を解説し、現在のETHステーキングの様子を概観していきました。次回はETHステーキングの盛り上がりの理由についてより深掘りする内容を書く予定ですので、引き続きよろしくお願いいたします。

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