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次の大型イベント間近!ETH保有者が把握しておくべきEthereumステーキングのメリット・デメリット

こんにちは、Fintertechの斎藤です。
2022年10月にFintertechに入社し、現在は暗号資産・Web3関連の事業開発やシステム企画を担当しています。Fintertech入社前は、大和総研で新技術の調査・検証などに従事していました。

担当しているサービスは、デジタルアセット担保ローンです。よろしければサービスサイトをご覧ください。

突然ですが、ETHをお持ちのみなさん、ステーキングについての情報収集はできておりますでしょうか?

この記事では、Ethereumで現在可能となっているETHステーキングについて基本的な内容に加え、2023年春に控えている次の大型アップグレードに関する情報も交えながら解説していきます。

2023/8/10更新
Fintertechでは、ETHステーキングを活用したサービス「デジタルアセットステーク(消費貸借)」の提供を開始いたしました!お客様が保有するETHを貸し出すことにより、ETH建ての貸借料を受け取ることができる貸暗号資産サービスです。Fintertechはお客様より借り入れたETHでステーキングを行うことで、暗号資産を保有するお客様に持続的な収益機会を提供してまいります!

デジタルアセットステーク(消費貸借)のサービスサイトは以下になります。


1.The MergeによるPoS移行と、ステーキングへの注目のあつまり

2022年9月に、Ethereumの大型アップグレードである「The Merge」が無事完了しました。The Mergeは、Ethereumのコンセンサス方式がProof of Work(PoW)からProof of Stake(PoS)に変更になるということで、アップグレードが成功するかどうか、世界中から熱い視線を浴びた一大イベントでした。

PoSは、一定の難易度の計算を行うマイニングによって報酬を競うPoWと違い、ネットワークに預け入れる暗号資産の量に応じて得られる報酬が決まるようになっています。つまり、PoWのように大きな計算量が必要にならないことから電力消費量も少なく、環境負荷が少ない仕組みといえます。

そのPoS方式において暗号資産を預け入れることをステーキングと呼びますが、Ethereumが2022年9月よりPoWとPoSの並行稼働を終えPoSに一本化されたことから、現在ETHのステーキングに注目が集まっています。

2.ETHステーキングとは

ETHステーキングとは、ETHをEthereumそのものが提供するコントラクトアカウント(スマートコントラクト)に預け入れる行為を指します。Ethereumでは32ETH単位で預け入れする仕様となっており、32ETHでひとつのバリデータノードを立ち上げることができます。

バリデータノードとは、Ethereumのブロックの投票や提案を行うことができるノードのことで、ブロックの投票や提案作業を行う対価として、報酬のETHを獲得することができます。なお、バリデータノードがブロックの投票作業を怠ったり不正な行為をすると、預け入れたETHが一部没収(スラッシング)されるしくみが導入されており、それによりチェーンの健全性が保たれるようになっています。

ETHステーキングの概要図

ETHステーキングに参加しETHを獲得するにはいくつかのやり方があり、そのなかから自分にあった方法を選ぶことになります。ここでは以下の3つの方法を紹介します。

ソロステーキング

バリデータノードを自前で立ち上げてETHステーキングに参加する方法です。バリデータノードのセットアップに必要なクライアントソフトウェアを用いてバリデータ専用の鍵を生成する作業や、32ETHを預け入れるコントラクトへのトランザクション実行など、調べながらやらなければいけない手間があります。一方で、インフラ構築やサーバメンテナンスの知識があり、32ETHが手元にある場合は、サードパーティリスクなくステーキングに参加することができます。

業者へバリデータ運用を委託

バリデータノードの構築や運用をステーキング専門業者に委託してステーキングに参加する方法です。専門的な技術ノウハウが求められるバリデータ構築・運用という面倒な作業が不要になるため、手軽にETHステーキングに参加することができます。ただし、トラストポイントが増えることになるため、多額のETHをステーキングしたい場合は業者選定を慎重に行う必要があります。

ステーキングプールを利用

32ETH以下の数量をステーキング専用プールに預け入れて32ETHが集まってからステーキングに参加する方法です。プール機能はEthereumのプロトコルではサポートされていないため、専門業者が提供するステーキングプールを利用することになります。保有するETHが32の倍数ではないので端数をどうするか悩むという方にも使い勝手のよい選択肢です。プールは32ETHのマッチングをスマートコントラクトで行うオンチェーン方式と、スマートコントラクトを使用しないオフチェーン方式があります。オンチェーン方式で有名なサービスとしてはLIDORocket Poolがあります。

3.ETHステーキングのメリット・デメリット

ETHステーキングへの参加に限らず、何事もメリット・デメリットの整理は重要です。ここでは、これからETHステーキングに参加しようかどうか検討する方をサポートできるよう、ETHステーキングのメリット・デメリットをあげていきたいと思います。

メリット①:Ethereumそのものから報酬が得られる

ETHをステーキングすることで、Ethereum自体が新規発行するETHを報酬として受け取ることができます。報酬にはいくつかの種類があり、報酬発生頻度や1度に受け取れる額がそれぞれ異なります。以下では主要な3つの報酬を紹介します。(※ なお、以下の頻度・報酬額は2023年2月時点のノード数を基に算出しているため、今後かわる可能性があります。)

Attestation Reward(アテステーションリワード)
バリデータノードがブロックの投票を行うことで得られる報酬です。約6.4分ごとに超少額ですが受け取ることができ、積みあげたら1日あたり約0.003ETH、1年で約1ETHになります。

Proposer Reward(プロポーザーリワード)
バリデータノードがブロックの提案を行うことで得られる報酬です。ブロックの提案者に選ばれる確率は現時点で約2カ月に1回ですが、そのかわりある程度まとまった額のETHを受け取ることができます。

Priority Fee(プライオリティフィー)
The Merge以前にブロック生成を担うマイナーに対して支払われていたチップです。PoS移行により、プライオリティフィーを受け取る主体はバリデータノードにかわりました。こちらもProposer Rewardと同様に約2カ月に1回の頻度である程度まとまった額を受け取ることができます。

メリット②:Ethereumネットワークの維持に貢献できる

実感はしづらいですが、ネットワークに参加するバリデータノードの数が多ければ多いほど、ネットワークの攻撃耐性は高まります。つまり、ETHステーキングに参加するということがネットワークの持続性向上に繋がっているということになります。

メリット③:ETHを引き出すための秘密鍵は自身で管理可能

預け入れた32ETHやEthereum自体から受け取った報酬を引き出す先のアドレスは、自身で管理する任意のものを選択可能です。バリデータノードを立ち上げる際には、バリデータノード専用の鍵を生成しオンライン接続する必要がありますが、その鍵自体はETH(預け入れた32ETHや報酬として得たETH)を移動させる権限を持ちません。つまり、バリデータノードの運用者とETHの管理者を分離することができるということです。

続いてデメリットについても見ていきます。

デメリット①:現時点では預け入れたETHと一部報酬を引き出せない

コントラクトに預け入れたETHおよび上記メリット①で紹介したAttestation RewardとProposer Rewardは、現時点ではコントラクトにロックされたまま、引き出すことができない仕様になっています。バリデータノードを新規で立ち上げるタイミングで、引き出し専用のアドレスを設定するのですが、そこにETHを引き出す機能がEthereum自体にそもそも実装されておりません。ステーキングしたETHを引き出す機能は、The Mergeの次の大型アップグレードである「上海/カペラアップグレード」で実装される予定となっています。なお、Priority Feeはロックされず即時で受け取ることが可能です。

デメリット②:32ETH単位でしか預け入れできない

こちらはソロステーキングと一部のステーキング専門業者を利用する場合に限りますが、32ETH単位でしかステーキングに参加できないという制約は地味に痛いです。たとえば、ステーキングの報酬として得たETHはすぐに使う目的がなければステーキングに回したいところです。しかしソロステーキングであれば32ETHが集まるのを待ってからでないと次のバリデータノードを立ち上げることができませんので、32ETH集まるまでの期間は報酬獲得機会損失となってしまいます。

デメリット③:スラッシング(罰則)を受けることがある

バリデータノードは、常時オンラインに接続しておきブロックの投票・提案作業をし続けなければなりません。もしノードがオフラインになりネットワークに再接続するタイミングでデータの不整合等により不正な投票・提案をしてしまうと、スラッシングされてしまいます。スラッシングとは、二重投票など特定の条件の挙動をしたバリデータノードに対し課される罰則のことで、スラッシングされると預け入れた32ETHから一定数が減額されます。スラッシングを受けないためにはバリデータノードがオフラインにならないよう常時モニタリングする必要があるなど、運用の手間がかかります。

4.上海/カペラアップグレードによる引出し処理の解放

ここまでポストMergeにおけるETHステーキングについて説明してきましたが、ここからは本記事タイトルにもある、今年の春に控えた次の大型アップグレードである「上海/カペラアップグレード」について解説していきます。

上海/カペラアップグレードとは、The Mergeの次に実施が予定されているEthereumのハードフォークを伴うアップグレードイベントの名前です。「上海アップグレード」とまとめて呼ばれることも多いですが、厳密にはEthereumの実行レイヤーのアップグレードが上海(Shanghai)、コンセンサスレイヤーのアップグレードがカペラ(Capella)というように区別されています。また、Shanghai+Capellaで「Shapella」と短縮して使ったりもされます。

上海/カペラアップグレードでは、ステーキングしたETHおよび一部ロックされていた報酬を引き出す機能が実装される予定です。つまり、上記デメリット①で説明した問題が解消され、自身が管理するウォレットにETHを引き出すことが可能になるということです。これによりETH保有者がETHステーキングに参加するハードルはかなり下がることになるため、アップグレードがいつ行われるかに大きな注目が集まっています。

上海/カペラアップグレード後の概要図

5.FintertechではETHステーキングを組み込んだサービスを検討中

Fintertechでは以前よりETHステーキングの動向に注目しており、上海/カペラアップグレードの実施後、ETHステーキングを組み込んだサービスを提供することを検討しています。また、Fintertechがすでに提供しているデジタルアセット担保ローンでは、担保通貨としてETHも扱っています。検討中のサービスでは、このローンサービスと組み合わせて、担保としてお預かりするETHをステーキングすることが可能となるサービスを検討しています。また、32ETH以下の数量でもステーキングが可能となるような設計も検討しております。(2023/8/10、サービスをローンチしました!サービスサイトはこちら

ちなみにデジタルアセット担保ローンでは、BTCやETHを担保に法人・個人問わず日本円をお借り入れ可能であることに加え、不動産購入用やNOT A HOTEL NFT購入用など、目的別のプランも揃えていますので、ご興味ある方は是非サービスサイトをからお問い合わせください。

最後に

以上、ETH保有者が把握しておくべきETHステーキングに関する基本情報やメリデメに加え、2023年春に控えている上海/カペラアップグレードについて解説してきました。2022年はWeb3やNFTというワードで盛り上がった年でしたが、2023年はステーキングが業界を賑わすワードになるのではと思っているので、よければ💗お願いします!