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アンデルセンの目でみてみよう。-第2夕講

昔々のデンマークに
ある一人の童話作家がそこに存在しました。


日本の多くの方がきっと
1度は触れたことがあるに違いありません。

その名は
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
といいます。

アンデルセンの目で見てみよう。


彼は1800年代の中頃、
物心両面において
貧しい農村社会であったデンマークを
しっかりと見つめていた人です。


彼はただ見つめただけではなく
童話にして、

その世の有り様、在り方を
現実社会に訴え、
多くの人に深い感銘を与えた
のでした。

彼の作品に宿る思いが、
のちに、
デンマークを住みよい国に導き、
デンマーク国民の心を豊かに育ててくれた。

そう、私たちは思うに至っています。

「いじめ」については「みにくいアヒルの子」

「貧困と幸せ」については「マッチ売りの少女」

「自己責任」については「赤いくつ」

「福祉・おもいやり」は「ナイチンゲール」

「自己決定」「人魚姫」

「政治」「裸の王様」などなどです。

アンデルセンの作品にヒントを得つつ、

私たちの社会を
「当事者」の目線から、

対話の形で
眺め、見てみたいと思います。

第1夕講はこちらからご覧ください
https://note.com/finolykke/n/n69c2ec468207


第2夕講 ゆるやかに始まる学校教育②


翌日の夕暮れ時のこと。

デンマークの北フュン島に住む
Chibaさんのところに、

お父さん、お母さんと
一人の6歳の男の子
「はるとくん」がまた訪ねてきました。

この間まで日本で暮らしていたはるとくん。

デンマークに海外転勤で引っ越してきた
お父さん、お母さんとともに、
これから、心機一転、デンマークの学校に
通うことになっています。

日本の勉強とデンマークの勉強の違いを知りたい、お父さん。

日本の小学校とデンマークの小学校の生活の違いを知りたい、お母さん。

今ある環境がなんだかよくわからない、
はるとくん。


3人は、
日本人で、デンマークに長く住み、
両国の良さも課題も沢山経験してきた
Chibaさんに、
今日もあれこれ話を聴こうとやってきたのです。

Chibaさんは今日も、ゆったり、
回転椅子に座っています。

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Chiba:さて、今日は、どんな話をしましょうか?

はると:来週からいく、小学校について
知りたいなぁ。僕は0年生になるらしいから。


Chiba:そうだね!
実は、君の担任になる0年生の先生は、
日本で言うところの、勉強、
国語や算数を教えてくれる先生ではないんだよ。

時間、月日、季節、自然、学校(家)までの道、
みんなのルール、礼儀作法等を
おしえてくれる先生なんだよ。

はると:へええ~!
そんな先生が担任の先生なの?
じゃあ、勉強は誰が教えてくれるの?

Chiba:読んだり、書いたり、
は1年生になってからでも十分でしょ。
学びたかったら教えてくれるよ。

お父さん:えっ?小学校入学前に名前が書けたり、
簡単な算数ができなくてもついていけるんですか?
日本じゃそれは難しいですよ!

Chiba:お父さん、お母さん、
今まで遊び中心だった幼稚園・保育園にいた子が
小学校に行って、急に
「きちんと座りなさい、
 静かにしなさい、
 言うことをよく聞きなさい」
って、言われたら混乱が起きるのは
想像に難くないでしょう?

子犬や子猫がじゃれて遊ぶように子どもだって
遊び盛りのとしころなんだから、
なるべく自然に遊ばせるのが
良い子に育つんですよ。

0年生でも少しは読み書きを
教えてくれますから、ご心配なさらず。
発音もしっかりやりますから。

お母さん:確かに、急に小学生になる
わけじゃないですものね。

お父さん:うーん、僕は、勉強が遅れるのでは
ないかと心配です。

Chiba:どんな点がご心配なのですか?

文字が読めないこと?
数字がわからないこと?

この時期にもっと大切なのは
「お友達を作れるか」
「ルールが守れるか」
「長い小学校生活を楽しんでスタートできるか」

です。


0年生で読み書きを教えてくれる先生は、
教育大学を出た人ではなく、

子どもの自然な成長発達を見つめながら、
礼儀作法などのしつけ等も教える、
国立の社会生活指導教員養成大学を出た
先生が対応してくれます。

プロフェッショナルですよ。
きっと日本は担任の先生が
同時に担うのだと思いますが、
デンマークはその道のプロが、直接教授するのです。

はるとくん:
その先生が最初の最初の方の勉強の仕方
を教えてくれるってこと?

Chiba:その先生は「ペダゴー」っていう、
社会や、生活について教えるのが得意な先生だよ。

きみに必要な読み書きも教えてくれるよ。
さあ~、明日から、安心して行ってきなさい。

楽しいよ!


お母さん:本当に、いい先生に当たると
いいんですけれど・・・


Chiba:そう言う心配もありますね。

良い先生、悪い先生、という定義も
いろいろありますが、
私は経験上で自信をもって言えることは、
デンマークに悪い先生はいないと言うことです。
(例外はどこにでもあるのは仕方ないですね)


デンマークの小学校の優秀な先生はね、
子どもの成績を良くするよりも、
学級内でいじめを出さない、
学校嫌いな子どもを出さないようにするのが
いい先生と言われているんですよ。

学校は楽しいところでなければいけないのです!


はると:うーん、じゃあ、言葉もわからないし
日本語とデンマーク語、字が違うから
いきたくなかったけど・・・

ちょっと、まだドキドキするし、

気持ちがビビリだけど。 

行ってみてすぐ帰ってこようかな。

Chiba:はるとくん、それではこれから
学校の様子を毎日私に話に来てくださいね!

はると:えっ?!僕がchibaさんとお話毎日するの?
多分学校で疲れてるし、
宿題やテストが沢山あるからできないと思うよ!

Chiba:大丈夫ですよ!
絶対そんなことにならないから(笑)
私を信じて、学校へ行ってらっしゃい。
そして、明日も会いましょう!


(第3夕講に続く)

【編集後記:つれづれなるままに】
Sue:幼稚園・保育園を卒園したら、いきなり小学生になりますが、心も体もすぐに小学生になるわけじゃないですよね。そう言う意味では0年生という取り組みがいかに大事か、またペダゴーがいかに機能しているかをよく考えさせられました。

Chiba:デンマークでは塾も予備校もありません。高校や大学進学に当たり入試がないから当然ですが、子どもたちが試験勉強というものをしているところを見たことがありません。私自身、昔、徹夜で試験勉強をした覚えがりますので、デンマークの子どもたちが試験勉強をしないということを全く不思議に思って思ってます。高校、大学共にそれぞれの学校で授業に付いていけるものしか入学が許可されない制度のためかもしれませんね。
それでもPisaの国際比較では猛勉強している日本が5~6番で、してないデンマークが15~20番くらいだから、大したもんではないかと思う次第です。

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