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フィンランド人とワークショップの企画 @Espoo Museum of Modern Art 【後半:当日編】

前回紹介した【前半:準備編】に続き、今回は当日どのようなプログラムを行ったかを紹介したいと思います。https://note.com/finlandryugakuki/n/nab78e195e5dc

ワークショップはフィンランドの学校が休みの10月中旬の4日間で行いました。
コロナ禍にも関わらず、定員を上回る参加者数でした。
それぞれの日の担当者を2人決め、その2人がワークショップの進行を行っていきます。全体のプログラムの流れは、美術作品を鑑賞しながら、質問をしたり、作品のそばでアクティビティーを行い、最後に作品を作ってもらう体験型ワークショップです。
私はフィンランド語をあまり話せない英語を話す参加者の担当をしました。1日1組くらい該当するグループがいました。ただ、私よりもフィンランド語を話せる子供が多く逆に教えてもらったりしていました。さらにスウェーデン語、フランス語を操る子もいて、私も頑張らないと!と思う毎日でした。

■参加者
平均25名/日
7~10歳の子供とその親

■プログラム内容 (2時間/回)

1日目 Shapes of the stories

この日はオリジナルの物語を作り、そこに登場キャラクターを粘土で形作りました。

まず始めに、様々な形のアート作品を、どうしてそのような形をしているのか考えながら鑑賞します。
鑑賞パートでは、ベルリンを拠点に活躍しているコンテポラリーアーティストのAlicja Kwadeの作品でTrans-For-Menという作品を案内しました。8つの様々な形の石が一列に並べられているこの作品は人と自然の関係を表現しています。3面を人工的にカットされた石が徐々に自然の石のような歪な形に変わっていき、またそれが最後は綺麗な丸の形で終わっています。この形の変化を見ていると、自然物と人工物の境目がわからなくなります。どうやって石が形を変えていくのか、子供たちに問いかけながらワークショップを進めていきました。

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その後Michael Schilkin feat. Lotta Mattilaセラミックアーティストと空間デザイナーのコラボした展示場に行き、セラミックでできた動物たちを見ます。どうして動物たちそれぞれ体の形が違うのかを観察して、そこから物語を考えます。物語に登場するキャラクターをカラフルな粘土で形作ります。まだ文字を書けない子は親が子供から物語をきき、文字にしていきます。

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その物語と作ったキャラクターを自分だけの展示会をテーマに、窓際に並べ、最後にその物語をみんなの前で読み上げました。

発表の時には、文字を読めない妹が発表したがっているのを見たお姉ちゃんが、妹のために物語を読み上げてあげていました。30分予定していた粘土の製作時間は長くて飽きてしまうかと思いましたが、みんな夢中になって作品を作っていて時間が足りないくらいでした。楽しそうな孫を見たおばあちゃんはどこで粘土を変えるのか聞いてきたり。
最後は作った粘土の作品を家に持ち帰って、引き続きいろんな物語を作って遊ぶことができます。


2日目 A place of my  own      

この日は身の回りの建物やいろんなものをフレームを通してみてもらい、自分の世界を2Dと3Dで作りました。
まず美術館(EMMA)の構造や、柱などを観察し、
Elmgreen & Dragsetの展示を見て、パイプの中に何かいるかな、などと想像を膨らませながら作品を見ていきました。

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その後、広い窓際に移動し、これまでみた作品を参考に自分の好きな場所を作ります。
まずは2Dのパート、窓につけることのできるカラーセロファンを使って窓を彩ります。

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その後3Dパートでは糸、厚紙、アルミホイルなどを使って自分の世界を作っていきます。

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今回は作品は回収しました。作った作品を回収しているところを子供に見られてしまい、夢を壊してしまった気持ちになり、あとでメンバーと反省をしていました。そして、何か持ち帰れるものがある方が満足度は高いね、とワークショップ後の振り返りで話をしていました。

3日目 Blend into the environment
この日はどうやったら周りに溶け込めるかをテーマに、色で遊びました。

動物がどのような色をしていて、なぜその色をしているのか (Michael Schilkin feat. Lotta Mattila)の展示から学びます。
そして場所を移し、紙袋でお面を作ります。

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Tagtool(https://www.omai.at/tagtool/)というアプリ、プロジェクター、スクリーンを使い、親や兄弟を様々な色に染めていきます。
1人ではできないので、親子や兄弟同士交代でそれぞれを染めあって楽しんでいました。4つのプログラムの中で一番親子が一緒に楽んでもらえたプログラムでした。

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4日目 Fantastic shadow

影は黒くて怖いものという印象がありますが、この日は影をカラフルにして遊ぶという内容でした。

最初に作品と同じポーズを取って、自分で影を作ってみます。

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その後、光を発している作品の前でペンライトを使って動物の置物で影を作ります。

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場所を移し、影から動物を形どり、それをくしにつけ、パペットを作ります。

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それを持って、大きなスクリーンに行きカラーパネルにペンライトで光を当て、カラフルな影で遊びました。子供たちは自分の影やパペットを器用に使い、さらにカラーパネルを重ねていろんな色の影を作っていました。
スマホのライト、紙、割り箸、カラーセロファンがあれば、家でも簡単にできます。お家にいる時間が増えていると思うので、お子さんがいる方はぜひ試してみてください。

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■コロナ禍でのワークショップ
最初はワークショップ用の部屋でやる予定でした。ただ参加者同士の距離が保てないので、展示スペース全体でワークショップを行うことにしました。EMMAの施設がとても広かったこともあり、定員25名いっぱいになっても距離を保ってワークショップを行うことができました。また消毒を徹底して、道具も家族以外とは共有しないようにし、感染者を出すことなく終えることができました。

■参加者からの感想
・長い時間子供達と家にいることが多く、煮詰まっていたから、外に出てこのイベントに参加でき、子供がとても楽しんでいてよかった。(2日間参加)
・家で楽しむヒントをもらえてとてもよかった。
・大人も楽しめた(アート教育者であるお母さんのコメント。4日間連続で来てくれ、インスタにもたくさん写真をあげてくれました) ・・・など。

■ワークショップを行った発見
子供向けのワークショップを行った、一番の発見は色があると子供が喜ぶことでした。そして、子供が楽しいと大人も楽しいということ。
実際7~10歳が対象でしたが、3歳の子もいて作品に触れないかとても心配でした。ただ、あれをしてはだめと注意するより、最初に美術館で何をしたらいけないか、子供達に問いかけて自分で考えてもらったおかげで全く問題なかったです。ワークショップの進行を考えている時、何かを指示するのではなく、子供自身に考えさせる、子供を尊重するという、スタンスを強く感じました。
美術館で準備をしている時に保育園の子供たちが開館前の時間に美術館ガイドをキュレーターからしてもらっていました。地面に座りながら、説明を聞いたりしていて、こんなにも小さな頃から気軽にアート作品に触れることができるのはとても素敵だなと感じました。
今回の担当者は地元の幼稚園の先生に対し、アート教育の方法について講演をして回ったりしているみたいです。こういったことから、フィンランドではアート教育が盛んなことに気付きました。

■参加してよかったこと
・学部以外のフィンランド人との繋がり
NoVAの学部以外でのコネクションができたことが何よりも大きな収穫です。
たった1ヶ月とは言え、ミーティングを何度も重ね、一緒に4日間のプログラムを行ったので絆が強くなりました。また、準備編でも紹介しましたが、多様なバックグランドを持っているメンバーと企画することで、様々な人を気遣うポイントを学ぶことができました。
・EMMAとの繋がり
EMMAの担当者を知ったことで、そこから何かプロジェクトがあったときはつなげてもらえる可能性があります。
・ご褒美♡
最後にEMMAの担当者から、ミュージアムカフェのケーキとカフェ、手紙、チョコ、EMMAオリジナルの手帳、鉛筆、無料入場券をもらいました。その心遣いは本当に嬉しく努力が報われました。

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■全体の感想
どのようにアーティストと美術館がアートワークショップを企画していくのか体感でき本当に参加できてよかったです。授業との両立が大変でしたが、教授は理解してくれていて、授業は録音してくれました。オンライン授業でよかったと思った瞬間でもあります。
普段の生活では英語のみで困ることがないので、フィンランド語を話す緊急性を感じる機会がなかったです。ただ、当たり前ですが、フィンランドに溶け込むためにはフィンランド語が必要だと痛感しました。
何よりもよかったのは、コロナ禍のため、多くの授業やイベントがオンラインの中、フィンランドでしかできない体験ができたことです。オンラインばかりだと、なぜフィンランドにきたのか意味を見出すのが難しかったと思いますが、こちらにきてすぐにこの企画に参加できて、コロナ禍でもこちらに来た意味があると感じることができたのはこの企画のおかげでもあります。

EMMA ワークショップのサイト:https://emmamuseum.fi/en/event/art-break/

*トップ写真:EMMA撮影、文中写真は注釈があるもの以外は自分で撮影。

*フィンランドでは子供の写真を許可なく撮ってはいけないので、ワークショップ中の写真は本人と親御さんに許可を撮って撮影しました。

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