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コンサータ錠18mg日記         6月22日②

1日目。

子どもが学校に行って、ひとりになってからコンサータ錠18mgを飲んだと思う。思うと書いたのは、詳細をもうわすれている。
絶対朝に飲んでください。夜飲むと眠れなくなると聞いていた。
「何と」飲んだのかがわからない。
机にはコーヒーに豆乳、МCTオイル、某離島の砂糖を入れたの、そこに更にゼラチンを入れて飲んだことを思いだせたのは
今眼前にあるマグカップの底がつや消しマットになっているので、あゼラチン。とまずゼラチンを思いだして、そこから芋ずる式にコーヒー?豆乳?МCT?あの砂糖?と頭が、ゼラチンを契機にさかのぼっていくからであるが、その飲料までは かろうじて思いだせたものの、今朝飲んだであろうこの飲料を コンサータ錠18mg飲みこむときに合わせたのなら、それはまあまあまちがってんで。と思う。
水。まあ水を合わせておくのがいいと思う。
けど。思いだせない。
まあ何にせよコンサータ錠18mgを朝8時かおそくても8時半までには飲んだ。それからそれまで、いやこのところはいつだって朝は眠くてしかたがなくて頭が明晰っす。という感じになったことがない。
そのような脳。そのような脳から繰り広げられる、いや、そのような脳から繰り広げられる眼前しか知らないこのところの生活であったのだけれど、それから何をしていたか、きっとなにかをしていたら友だちから電話がかかってきた。
友だちとそこから、わたしが本日からコンサータ錠18mgを飲みだしていることを話そうとしたら、話そうとする前に友だちが昨日からコンサータを飲んでるんだよねと言ったから何かすごい偶然なことだとおどろきつつ会話は続いていたのでその流れに乗ってわたしたちは話しつづけた。
なんなかなんなかなんでそんなに話すことがあるのかはわからないけれど、
話はあっちこっちに飛びながら。けどまあ会話が通じると思える数少ない人だと思うその友だちと話しつづけながら、友だちが長いことごめんね。と電話を切るとき言って、そこに表示されていた通話時間が3時間も超えていたのにはおどろいたけれど、その3時間28分くらいのあいだ、会話の集中が全然切れなくて、これをもう少しわかりやすくいうと3時間28分くらいがワンセンテンスみたいだった。

それから、会話をしている間、わたしはソファーに座って、
そこから見える向こう側、テレビとかたんすとかがある、そちらがわの見えかた、視覚がいつもの見えかたと全然ちがっていることに、会話に夢中になりながらもどこかで気がついていた。ぎょっとするほど視覚がはっきりしているのだった。まるで別の部屋のように見えるのだった。
ああそれから会話の内容もちがった。ひとつの会話を聞いているとき、その聞いている内容と結びつく別のイメージが浮かぶ。そうして合間に別のイメージをぶつけてみる。そうすると、友だちが、それってどういう意味。と聞くので、こういう意味と返答する、そうしてそのすりあわせをする。イメージのほうが広がって、広がりすぎてしまって、その広がりすぎたことを友だちが指摘する。会話のしっぽをつかまえて、そのしっぽについていくようにして話す。主体(わたし)がどう思っているか、ということから いつもは一歩も動くことができないけど、今日は主体のほうは一旦置いておいてと、瞬時に思って、またその事を、いちいち会話の途中で説明しようとも思わない。
即興演奏。むかしピアノと、クラリネットだったか音楽をしてる友だちと会ったら、その友だちは、動きもおしゃべりの音も、じゃあ、今からそこ行ってみようと立ちあがるのも、すべてが即興演奏だと思ったことがあったけど今日の会話は即興演奏のようだった。
話しながら、頭の中であっちにこっちに動く考えの、そのひとつひとつの動き、その動きかた、その全てにキレがあった。
というか、キレという言葉をおそらく生まれてはじめて使った。それくらい自分とは対極の性質のものだった。

わたしの脳はコンサータ錠18mgを飲んで数時間後には
本人がはっきり自覚できるくらい別の脳になっている。
この数か月わたしをおおっていたものは 今現在どこかに行っている。

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