記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

『奇面館の殺人』読みました

 どうにか〈館〉シリーズ最新作まで追いつきました。以下は未読の人にはわけが分からないけれど読み終えた人にだけわかる、ネタバレだけどネタバレにならない各作品のギリギリの一言感想(というか悲鳴)です。
既読の方にニヤニヤして頂ければ幸い。
十角館:……えっ?アッッ!?(例の1行)
水車館:とりあえず児相ー!
迷路館:血ぃー!
人形館:そもそもかよ!
時計館:時空が歪んでるよー!
黒猫館:地球がひっくり返ったよー!
暗黒館:全部乗せ!エピソードゼロー!
びっくり館:人形ーー!
奇面館:みんなかい!!

 毎回上記のように(内心で)叫びながら読んできた〈館〉シリーズ。ちなみに未読の人代表うちの夫に見てもらいましたが、さっぱりわけが分からないと太鼓判を貰いました。ミステリは謎解きしながら読むのがセオリーだとわかってはいるのですが、本シリーズは予想の斜め上を遥かに超えたところからパンチが飛んでくるので、なんというか謎解き自体が野暮な気がしてとにかく楽しんで読むようにしています。

※この先は未読の人にはネタバレがあります。トリック等には原則触れませんがオススメは決して致しません。

 いやもう怖かった。〈館〉シリーズってなんかこう、シンプルなミステリじゃなくてそれこそ怪奇幻想小説的な側面があるじゃないですか。私の気のせいですか?で、その最強格が暗黒館ですけど。(あっそんな事言いだしたら江戸川乱歩はどうなるんだとかそもそもシンプルなミステリって何だとかいう議論はガタガタ震えて泣き出してしまいますのでどうぞご容赦ください。蒙昧な若輩者なので……。ちなみにアガサ・クリスティが念頭にあります。)個人的な話ですが、なぜかこのシリーズは夜中に読み終えることが多く、そして寝室に戻るまでにいつもより多めに電灯をつけてしまうんです。なんか……普段以上に闇に怯えてしまいます。人の心の暗部を描いてるとかそういうことじゃなくて、なんというか、恐怖を感じる精神の根幹を裏側からざりざりと爪の先で撫でられている気がします。それをミステリの華麗な(先生曰く無邪気な)「遊び」による驚きで中和してもらってるような感じがします。
 とにかく今回は仮面が怖かった。エピローグでようやく言及されましたけど、あんな仮面拷問ですよ。おじさまたちみんなよく耐えたよ。個人的に閉所恐怖症のきらいがあるのですが、閉所を最小単位にしたらあの仮面なんだろうなと。もう読んでて息苦しくてですね。早く仮面外してやってくれ、彼らのためと言うより私のために!!!私が拷問受けてる気分でした。ちなみに『恐怖の正体』(春日武彦著)という本で閉所恐怖には「取り返しのつかなさ」が関わっているといった話があり、個人的にはかなり腑に落ちました。(今改めて本書を紐解くと「『後悔先に立たず』と総括するしかないような種類の絶望――それに対する忌避感が病的に顕現したもの」とありました。ずいぶん乱暴に理解してたな私。)その「閉所」に入ってしまうことで閉じ込められて戻ってこれないのではないかという恐怖。ついさっきまで私は自由であったはずなのに、という悔恨ともどかしさ―要は絶望―を感じるのが恐ろしい。この文章書いててもう動悸がしてきた。なんというか、あったはずの選択肢を失ってしまう恐怖は強くあります。全頭マスク、それも鍵があるというその事実だけでかなり嫌な予感はしましたよ。仮面がついただけでできるはずのあらゆる自由がごっそり奪われるのは……想像しただけで泣き叫びますよ。しかも今回は自ら選んだんじゃありませんからね。意識を取り戻したときには容易に取り返しのつかない事態に陥っていたわけで、それはもう絶望なんですよ。

 話は変わりますが私、自慢ではありませんが、ミステリのフックになるところにはそれなりに鼻がきくのです。きくだけで真相に辿り着くことはあまりないのですが。(『アクロイド殺し』は初見であれっ?と思えました。あれっ?と思っただけでそのまま読み進めるあんぽんたんとも言います。)で、今回あれっ?と思った部分に全部言及されて全部真相と違ったんで椅子からずり落ちそうになりました。くそぅこちらをミスリードするのはお手のものってわけか。そりゃそうだ。ていうか間取り図にもちゃーんと仕掛けはありましたね。あれっ?って思ったままページめくっちゃいましたけどね。他にもあれー?おかしいぞー?と思ったところは何もかもエピローグで整理してもらっていて。綾辻先生、サービス精神豊富というか丁寧なお仕事というか。エピローグ読んでてどんどん怖くなってきたんですよね!なんでかな!先生お仕事が丁寧すぎますよ!失禁してしまいますグスングスン

 あと、真犯人としては犯人の父親ですよねぇ。虐待だよやべえやつだよ。中村青司もなんてことすんだよ。まさか我が子に使うとは思わなかったか暗黒館での経験が彼の精神の何処かを狂わせたのか。まぁ、後者ですかね。
ちなみに未読の人代表うちの夫に中村青司が立てた館で色々事件が起こると話したところ、そいつを捕まえろ!と言われ、いやぁ作中では原則故人なんだよって伝えたらあぁ……ってなってた。ちなみに私も同意見ではあるよ……はは。

 Twitterから綾辻先生が失踪しそうになられながら最終作、双子館に挑まれているご様子がうかがえます。ぷいぷいを愛でながら最後の〈館〉シリーズの落成を楽しみにお待ち申し上げようと思ってます。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?