淡く、赤く


目の前に広がる部屋の天井が妙な色をしている
あの頃は真っ白だったはずの天井が今やなんともいえない色になっている事に時の流れを感じた
これは一体何色なのだろう
君にとって僕と過ごした時も何色だったのだろう
僕にとっては間違いなく「恋」だったから赤色とでも言おうか
無理をしてやけに苦しい
まだまだ生な僕に赤色はあまりに鮮明過ぎる
歩きながら密かに君の横顔を見つめていた僕の頬や耳の色が正にそれだったし、視線の先のもう一つの頬もまた同じ色をしていたから
赤色や青色の様な色鉛筆に並ぶ色はあまりに鋭く蘇るから
できることなら空色やスモーキー色なんて容易に想像のつかない曖昧な色として頭の片隅に記憶しておきたい
本当なら思い出せば胸が締め付けられるようなあんな瞬間も愛おしくて頭が痛くなるようなどんな瞬間も淡く美しい瞬間としてひとまとめにしておきたい
5時を知らせる鐘の音が蘇らせる
僕の淡い記憶の中の彼女がまた遠くを見つめている
その頬は赤かった
彼女の目先にはいつも白い歩道橋
僕も目をやる
どうにも虚しくなる自分がいた
その内彼女は駅の方に行ってしまう
いつもこうだった
意識が部屋の天井に戻る
なんとも言いようがなく濁っていた
白色ではない
何色というのか
あの頃の僕も今の僕も同じ色をしているんだ
何故か鮮明を拒む
布の隙間から漏れる夕陽が眩しい








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?