ハルノ

書き書きしてます

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最近の記事

ここで息をする

最小限またはそれ以下の物しか無いこの部屋では音そのものを感じられる。 生きている実感の大抵をここで得ている。 部屋を出れば数え切れない程の音があるはずが不思議とそれでは生きている実感が得られない。 おかしな話だ。 生きているというより、埋もれている。 何事も多ければ良いってもんじゃない。 私もこの部屋の中で気付けば大人になったんだな。 鍵を閉める音。コンロの火を点ける音。文庫本のページをめくる音。布団が擦れる音。歯を磨く音。深く漏れる息の音。ランプのスイッチを消す音。 この生

    • 掴んで、話す

      締めっぽく、湿っぽくいくのはよして それならいっそハイになって、灰になりたい

      • そのまま瞑っていて

        一緒になりたいと思うのが夜ならば良い 感情も距離も全てを一斉にさらってくれる夜の闇が好きだ 現実離れした黒と無の世界にどことなく安心できる 眠っていた太陽が顔を出し世を照らし出すその瞬間が来ないという事は、時間軸は途切れてしまうのか いつからか太陽が顔を出してから顔を沈めるまでが一日だと定義した世の中だって例え夜が来なかろうと時間が止まる事はないのだろうと思う 夜を朝を迎える過程としてただ捉えているような事ならそれは私の言う夜ではない 闇夜を想うだけで心身が無力になり今頃遠く

        • 淡く、赤く

          目の前に広がる部屋の天井が妙な色をしている あの頃は真っ白だったはずの天井が今やなんともいえない色になっている事に時の流れを感じた これは一体何色なのだろう 君にとって僕と過ごした時も何色だったのだろう 僕にとっては間違いなく「恋」だったから赤色とでも言おうか 無理をしてやけに苦しい まだまだ生な僕に赤色はあまりに鮮明過ぎる 歩きながら密かに君の横顔を見つめていた僕の頬や耳の色が正にそれだったし、視線の先のもう一つの頬もまた同じ色をしていたから 赤色や青色の様な色鉛筆に並ぶ色

          いつかの太陽みたいに

          色々な感情に振り回されてしまって心から笑えないひとりぼっちの僕の側で、いつも飛んで跳ねて楽しそうに大笑いして僕を笑かせようとする君が羨ましかった いつの日かどこから現れたのかも分からないオレンジ色の顔した君が僕のただ1人の友達だった どっから来たのか、何者なのか、人間なのか、なんで顔をオレンジ色に塗っているのか 全然分からなかった いつも大笑いしているせいで全然読めなかった けど心地よかった 君が漂っているせいで毎日時間も忘れるほど気分は最高だった 思いっきり心

          いつかの太陽みたいに

          嫌いじゃないわ

          助長の雨が嫌いだ。 涙する程に勢いを増すその雨の粒は確かに大きくなっていく。 やがて大きくなった無数の粒がぶつかり合って真っ白な壁を作り私を囲んでみせた。 その壁はまるで外の音を遮り泣きじゃくる私を守った。 なんて余計なことをしてくれるなと思った。 いっそ全て雨に洗い流されたいと思っていたのに。 全て失ってまた孤独に浸ろうと思っていたのに。 ふっと、久しぶりに微かに笑えていた。

          嫌いじゃないわ

          拍子抜け

          美味しそうにご飯を頬張るその膨れた顔 ビールをくいっと傾けた時の逞しい腕 目を無くして笑う愛らしい表情 何を話したって返ってくる優しい頷き お店の店員さんに必ず目を見て会釈する律儀さ 困った時に無意識にくしゃくしゃにされるその髪の毛 ... これはふと聞かれて私が出した回答のごく一部 ひと通り言い終えて、さぞ喜んでいるだろう彼に今度は私が問いかける ずっと変わらない事だよ 君が君で居てくれてるからね。 安心さ。

          近況3

          恋愛小説をいくつか買っては読んでいる。 恋に焦がれているとかではない。 12月に観たマツクランジャタイという公演に魅せられて、それからというもの「恋」という一つのテーマが頭を離れない。 こんなに美しいものなのかと衝撃を受けたし、「恋」への概念も変わったし、自分も美しい「恋」を描いたモノを創りたいと思った。 正直なところ、こんなに何か一つの記憶を引きずったことがないというくらいに引きずっている。 木綿のハンカチーフを聴けば蘇るし、街中で赤いもの目にしたって蘇ってきて勝

          2018年2月5日

          「この間してくれた、あの話してよ。」 「あの話?」 「そう、あの面白い話。」 「ああ、いいよ。そんなに面白かった?」 「うん、そんなに面白かった。」 「あはは。そうかい。」 「はっはっはっ」 「なんなんだよそれ、何回聞いても面白いな。」 「もっかいしてやっても良いんだよ?」 「うん、してよ。」 「良いよ。」 「はっはっはっはっ」 「俺、こんな面白い話初めて聞いたかも。」 「嘘だな。何回聞いてんだよ。」 「やっぱりさ、人から聞いた話が一番面白いからさ

          2018年2月5日

          白いライブハウス

          13日土曜日 開演15分前、久しぶりのえんそくを観に柏にあるライブハウスに向かう道のりは途中、雪道に変わった。 吐く息が白くてメガネが真っ白になって視界は悪い、寒い。 これから熱いライブだと言うのに、こんなに雪を浴びたら身体がおかしくなるわと笑っているうちにライブハウスの明かりに着いた。 暖かい。 会場はパンパン。満員御礼だった。 なんとかスペースを見つける。 ふと我にかえると、少し濡れた洋服が直に感じられて寒い。 早く出て来て欲しい。 開演して、大好きな人達を久しぶり

          白いライブハウス

          僕は青色だった

          あの子はいつもの曲がり角から微笑んでみせた。 彼女の首元できらりと光る水滴が僕を泳がせる。 彼女はこちらへ全速力でやってくる。 僕の水滴がおでこから頬をつたって首元へ流れる。 夏がとうとうやってきたのだ。 どんどんと大きくなる彼女に僕の心臓はどんどんうるさくなった。 心臓の音が鼓膜を突き破りそうになった瞬間、誰かを呼ぶ声がして、彼女は通り過ぎていった。 美しかった。 しばらく立ち尽くしていると、視線の先には透明の彼女がいた。 僕は思いっきり反対方向に階段を駆け降りた。

          僕は青色だった

          星空でビックバン

          夜空に光る星と隣の君。 それ以外ないこの空間は特別だ。 どこまでも広がるこの夜の闇にいっそこのまま呑み込まれてしまえば僕と君は決して離れない永遠の存在になれるんだ。 君の真っ白な手を握ってあの一番大きな星まで飛んでいけたらどんなに素敵だろう。 なんてロマンチックなことばっか考えている自分に一人勝手に恥ずかしくなった僕は思わず隣の君に助けを求める。 「どう? プラネタリウム」 彼女とニ人で過ごす三回目の場所はプラネタリウムと決めていた。 今日の第一声は大事に大事に発したか

          星空でビックバン

          2018年2月4日

          ほぼ毎日と言って良いほど家にやってくるあいつは、今日も律儀に今から行っていいかと電話を入れてきた。 その電話の音に目を覚ますやいなや、やってきた。 「随分とうるさいね」 「どうぞ」 「お前なんなのこの匂い」 「昨日届いたキムチの匂いでしょ」 「なんでキムチなの」 「大好きなんだよ、何よりもキムチがあれば良いから」 昨晩届いた5キログラムのキムチの匂いが十分すぎるくらいに充満した6畳一間で今日も妙な会話が繰り広げられる。 時計は昼の2時を指していた。 はーっと息を

          2018年2月4日

          髪の毛

          願いや欲望は、過度に自分の身を削れば、少しは大抵手に入れられる。 でも、それは見えない真の自分自身を傷つけている事でもある。 それで手に入れたものは見えない自分が身の傷を知らぬ間に拭ってくれた、見えない自分が受けた傷の代償かもしれない。 もしも伸びていく髪の毛が身の傷で、髪の毛を切ることで自分を癒せて欲しいものが手に入るなら、そんな楽なことはないのに。 願ったものは現実に形となって現れる。 そのかけらを手にして嬉しくなって、また同じ事を繰り返す。 何か一つのことを頑張り

          紙一重

          荒削りで汚れていてどうしようもなく不器用である様は時に美しい。 精巧で清らかでどこまでも器用である様はもはや何も感じない。 醜と美は紙一重 その限界までいくと、その反対も同時にみえるようになるのが仕組みなのか。

          真っ赤な恋をした

          真っ赤なドレス、真っ赤な口紅、金髪ショートに真っ白な肌、右手には煙草。 スタンドマイクに一人立ち、木綿のハンカチーフを歌う彼女の名は、アカネ。 先日行われたマツクランジャタイという公演に行ってきた。 凄く凄くあまりに凄く素晴らしい公演で、一回限りである事が勿体無いと寂しくなるほどだった。 今まで音楽だったりお笑いだったり演劇だったり様々な公演に行ってきた中で、ここまで心に深く刻まれた公演は他になかったと思う。 それほどに感銘を受けたのは、国崎さん演じるアカネに出会ったから

          真っ赤な恋をした