ロックダウン入門


「ロックダウン」と「二重絡み」


 「ロックダウン」と言えば、コロナパンデミックのおかげで「都市封鎖」の方がすっかり有名になってしまったが、本稿で対象にするのは柔術の技術の話である。

 「ロックダウン(LOCKDOWN)」という言葉を文字通り訳せば、「閂をかける」「錠を下ろす」と言った意味になるが、柔道で「二重絡み」と呼ばれる技術が形の上ではこれに近い。
 増田俊也さんの『七帝柔道記』を読むと、寝技乱取りの描写の場面でたびたび二重絡みについての言及がある(注1)。

注1)柔道技術としての二重絡みを紹介した動画を探して見たが、残念ながら見つけられなかった。下記リンクにも掲載されていない所を見ると、基本技術として紹介するまでもない、という事なのだろうか?

 『七帝柔道記』を読むと、二重絡みは、下になった側(=ボトム)が、トップが足を捌いて抑え込みに来るのを防ぐために、もっぱら「防御的な」技術として用いられているようである。
 だが、柔術で用いられるロックダウンは、足の組み方こそ二重絡みと同じであるが10th Planet 柔術のエディ・ブラボーが開発した技術として、より「攻撃的」に用いられる。
 まずは、ロックダウン(ないし二重絡み)の足の組み方から見てみよう。

 ロックダウンは、この動画に即して説明すると、ボトムが外足(左足)をトップの右足に対して上から引っ掛ける。
 次に、外足の甲を内足(右足)のふくらはぎに当て、さらに、内足の甲をトップの(右)足首にフックさせている。
 最後に、内足ではなく、「外足」を下に伸ばす事でロックダウンが完成する。

 トップの片足に対して、ボトムが両足を絡めている形から二重絡みという名前が付いた、あるいは、トップから見れば片足に絡みついたボトムの両足を外すのが非常に困難である状態を比喩的に「ロックダウン」と称しているものと思われる。

ロックダウンからの基本的な展開


 ロックダウンそのものは、上の動画でも言及されているように、一般にはエディ・ブラボーの開発した技術として知られている。

 その基本的な流れをまとめると、次のようになる。

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